ツイートをきっかけに「ミロ」が売れすぎて休売に!
「ミロ」といえば、『強い子のミロ』のキャッチフレーズでおなじみの麦芽飲料。1973年に発売されて以来、40年以上にわたり販売されており、「子供の頃、よく飲んでいた」と、なつかしく思い出す人も多いだろう。そのミロが昨年夏以降、2度にわたって休売になるほど爆売れしていることをご存じだろうか。きっかけは2020年7月に、ある女性が以下のツイートをしたこと(現在は削除)
「貧血の皆さまー。ミロ飲んでみてくださいー! 鉄分が平均の1/7しかないと指摘された私でも、ミロ飲んだら平均値になりましたー!」
このツイートが貧血に悩む女性たちに刺さりバズった結果、女性がミロに殺到。ミロを飲んで貧血対策をする「ミロ活」という言葉も生まれ、ツイートがバズった2020年7月にはミロの売上がいきなり約2倍に。2020年9月末にはネスレ日本が「安定した供給の継続が困難になったため」休売を発表。急ピッチで増産して11月中旬に販売を開始できたが、前年比数量ベース約7倍の注文が続き供給計画をはるかに上回ったため、12月9日に再び休売を発表。2021年3月1日から販売を再開した。
「子供のいない購買者」が、「子供のいる家庭の購買者」を逆転
2021年3月からの販売再開からは安定供給できており、2021年3月以降のミロの売上は、2019年同期比の約3.5倍を記録している。
もうひとつの大きな変化は、前は「子供のいる家庭」が購入層の中心だったが、現在では「子供のいない人」の購買数が増えたこと。直近では全体の比率で「子供のいる家庭」を上回っている。つまり、購買層の逆転現象が起こっているのだ(下のグラフ参照)。
▲「ミロ活」の広がりにより、大人の飲用が拡大 ※資料提供:ネスレ日本株式会社
実は深刻な、女性の「鉄欠乏」問題
こうした動きの背景には、女性にとって深刻な「鉄欠乏」問題がある。
体重60キロの成人の場合、体内には約1kgのカルシウムがある。それに対し鉄は3~4g。その少なさにびっくりするが、鉄は量が少なくても「酸素を運ぶ」という非常に大切な働きをしている。この鉄が底をつくと、カラダに十分に酸素が運ばれにくくなり、ボーッとしたり、何をするにも面倒くさいと感じたりするなど、さまざまな悪影響が起こる可能性がある。心当たりがある人も多いかもしれない。
それを防ぐために、女性は1日に10.5mg、男性は7.5mgの鉄分の摂取が推奨されている(※)。女性のほうの推奨量が多いのは、月経のある女性の場合、1回の月経で約17mgもの鉄分が失われているためだ。※「日本人の食事摂取基準(2020年版)18~49歳」女性(月経あり)、男性)
ところが女性は、20~50歳代のすべての年代で、1日の目安に対して約4mg、摂取量が不足している可能性が高いのだという(下のグラフ参照)。4mgというと少ないように思えるが、そもそもの摂取推奨量が10.5mgなのだから、ほとんどの人がせいぜい半分しか満たしていないことになる。
▲「あなたのための『鉄』サポートブック」(女子栄養大学 栄養生理学研究室 上西一弘教授監修)より転載
ちなみに体内の鉄の約70%は、カラダ全体に酸素を運ぶ“働く鉄”(機能鉄)で、残り30%がいざという時のために“蓄えられている鉄”(貯蔵鉄)。鉄の摂取が減ると、蓄えられている貯蔵鉄が使われるが、そうなるますます機能鉄が減少してしまう。貯金が底をつくと、財布の中身が乏しくなるのと同じ現象だ。
鉄欠乏性貧血を防ぐための方法とは?
鉄不足を解消するためには「鉄」の多い食品を摂る必要があるが、鉄分は吸収率が低いため、摂るのが難しい。比較的手軽なのが、野菜ジュースや豆乳など鉄を含む飲料から摂る方法。その場合は飲み物の選択も重要で、例えばミロなどの鉄を強化した栄養機能食品から摂るのが効率的だというデータがある(下のグラフ参照)。
▲「ミロ」1杯分 (「ミロ」15g+牛乳150ml)、3.2mgの鉄分が摂れるため、1日の不足分4mgを効率的に補給できる 「あなたのための『鉄』サポートブック」(女子栄養大学 栄養生理学研究室 上西一弘教授監修)より転載
また鉄分の吸収を助けるたんぱく質やビタミンC、さらに血液を作る手助けをするビタミンB6やビタミンB12、葉酸なども摂る必要がある。つまり、鉄分が不足しないようにするためには結局、「いろいろなものを食べてバランスよく栄養を摂取する」のが近道であり、唯一の方法なのだ。
とはいえ、栄養素の中でも特に摂るのが難しい鉄を、飲み物で摂ることができるのはありがたい。貧血女子がミロに殺到した気持ちもわかる。
女子栄養大学の学生による「ミロ 鉄分お助け隊」が出動
ネスレ日本には以前から、「鉄分補給のために、子供といっしょにミロを飲んでいます」という母親の声が届いていた。そこで、「親子でいっしょにミロを飲もう」「親子で健康習慣」というコミュニケーション活動を行っていたという。
「ミロ活」で女性を中心に鉄摂取必要性の意識が高まっていることを受け、ネスレ日本では「砂糖の摂取量が気になる」という人のための、使用する砂糖の一部を食物繊維に置き換えて甘さ控えめに仕上げた「ネスレ ミロ オトナの甘さ」を2021年10月18日に新発売。鉄、カルシウム、ビタミンなどをバランスよく含むこれまでのミロと食物繊維という特長を併せ持つ、まさに”大人向けのミロ”となっている。
▲「ネスレ ミロ オトナの甘さ」(200g)希望小売価格 税込み410 円
また10月25日からキッチンカーを活用した期間限定イベント「ミロ 鉄分お助け隊」を都内の有楽町と渋谷で開催。
イベントでは、女子栄養大学の学生が、味の相性や栄養を考えて考案したスペシャルメニューを提供したほか、同大学の学生がスタッフとなってドリンクを提供し、希望者には「鉄摂取の啓発リーフレット」の配布や、個別に栄養アドバイスをするなどの活動を行った。ネスレ日本では、「ミロの新しい楽しみ方を知っていただくことで、毎日の生活習慣に取り入れていただけるようにしたい」と語る。
▲女子栄養大学の学生で結成された「ミロ 鉄分お助け隊」
▲「ミロ 鉄分お助け隊」の都内でのイベントは終了しているが、11月には広島に出動する予定があるとのこと
▲女子栄養大学の学生が考案した「ネスレ ミロ オトナの甘さ」を使用した特別アレンジメニュー2種
「平均値の1/7以下」からの改善は、可能?
じつは、話題のツイートを見てからずっと気になっていたことが2点あった。それは
「鉄分が平均値の1/7以下になるなんてことが、実際にあり得るのだろうか?」
「そんな重大な事態が、ミロを飲んで平均値になることはあるのか?」
ということ。
その2点を、2021年10月25日に行われた「『ミロ 鉄分お助け隊』メディアお披露目会」に登壇した女子栄養大学の上西一弘教授に、ズバリ聞いてみた。上西教授は「個人のツイートなので、どの指標をさしているのかはよくわからないが」と前置きしながら、以下のように語った。
最もよく検査に使われる項目は、血液中の「ヘモグロビン(赤血球に含まれる赤色素たんぱく質)値」を調べる検査だが、そのヘモグロビン値が1/7以下になるということはありえないので、たぶんこの検査ではないと思われる。ということは「貯蔵鉄」の量を調べる「血清フェリチン値」の検査ではないかと考えられる。貯蔵鉄が1/7以下になることはあり得るし、そこまで減ると前述のとおり、機能鉄の値もそれにつられて下がってしまうという。
「ミロはあくまでも食品のひとつであり、単体で鉄不足を解消できるわけではない」という前提はあるが、ミロを飲んで鉄分やカルシウム、ビタミンを補いつつバランスのいい食生活を心がければ、こういう可能性もあり得るという話だった。
その“コロナ疲れ”、もしかしたら鉄不足かも?
上西教授が繰り返し強調していたのは、「鉄不足は自覚症状があらわれにくく、かなり進行してもわかりにくい」ということ。下のチェックシートは、鉄不足の可能性が高い人の傾向をあらわすリストだが、「ついつい楽ちんなことに頼ってしまう」というのは、階段ではなくエレベーターやエスカレーターを使いがちな自分にもあてはまるし、「やる気が出ない」「なんとなくカラダが重い」「面倒くさいと感じることが多い」「1回の目覚ましでスッキリ起きられない」という項目も、心あたりがあるような…。
「やる気が出ないのは長引くコロナ禍のせい」と思っている人も、一度、自分の鉄量をチェックしてみる必要があるかもしれない。
▲「あなたのための『鉄』サポートブック」(女子栄養大学 栄養生理学研究室 上西一弘教授監修)より転載
文・桑原恵美子
◎関連サイト
「ミロ」ブランドサイト https://nestle.jp/brand/milo/