高齢化社会を幸せに過ごすための教科書「[新版]老人の取扱説明書」著者に聞く老人の本音
最近、うちの親がすぐにキレる。自分が勘違いしていたのに、それを認めず、「お前がいけない」と怒っていて、困っていた。そんな時、助けてくれそうな一冊を見つけた。「[新版]老人の取扱説明書」」(平松類著、SBクリエイティブ、定価990円)だ。
自分も親も老いからは逃れられない。ならば、老化についてきちんと学び、できるだけ穏やかに過ごしたい。今回、改めて著者の平松類先生に教えていただきます。先生、よろしくお願いします!
高齢になると体がどう変化するのかを知る
――うちの親がキレてばかりいて、どうしたのかと思っていたら、それこそが老化の正体だと知って、驚きました。「60代なんて、まだまだ若い」と思っていたからです。
誰もが平等に歳をとっていく中で、この本は老化についてきちんと解説してくれました。高齢者はもちろんですが、特に我々世代(30代ビジネスマン)こそ読むべき本だと思います。先生がこの本で特に私たち世代に、一番読んで欲しい点はどこですか?
平松先生 五感など高齢になると身体がどう変化するかという事実です。高齢になるとすべてが衰えると思われがちですがそうでもない。わかりやすい例が老眼。年を取って物が見えなくなる。といっても遠くは普通にみえます。近くだけが見にくいのです。
老眼なら皆さん知っていますが目や耳や記憶・触覚すべて全部が衰えるのではないのです。
その変化の仕方を知ればどう話せばいいか、プレゼン資料はどう作ればいいかわかります。ただキレているのではない、記憶や知覚の問題だったという事も知ることができます。
頑固爺にならないための処方箋
――なるほど!先生の文章を読むと、年を取るのも悪くない気がしてきました。でも、自分は親や社長みたいな「頑固爺」になりたくないのです。どうしたらよいでしょうか?
平松先生 そもそも「自分は若い」と思ってしまうバイアスを知っておく事です。
40歳を超えると実年齢より20%若いと感じるようになるという研究があります。70歳でも56歳程度と感じてしまいます。となると自分は若くて柔軟だとついつい思い込んでしまいがちです。また高齢になるほど有能感が高くなってしまいます。その事実を知っておくだけでつい頑固になりがちなのを避けることができます。
――老化を知ると、親の責任ではないことがとてもよく理解できて、優しく接することができるような気がしました。この本は、大げさでなく、高齢化の日本を救う本になると思います。この本が広く読まれると、老化の正体が広く知られて、日本が変わりますね。
平松先生 私も含めて人間はついつい自分の視点でモノを見てしまいます。だからちからっている、実家の親をみると「家が汚い」と感じ、「掃除しないなんて怠けている」思ってしまう。はたまたなんでも高齢になって起きる問題は「認知症のせい」と決めつけてしまう。
けれどもそんなことありません。親は白内障があって意外と汚れが見えていないという事があります。白内障の手術後「家がこんなに汚いなんて気づかなかった」という人は多いです。この見え方を知っているだけで喧嘩にならないですし、平和に過ごせるようになると信じています。
高齢化社会を上手に乗り切るポイント
――最後に@ダイム読者に先生からコメントをお願いします!
平松先生 相手の気持ちを知ることは難しいけれども相手の体の変化なら知ることがある程度できます。
家族・職場・趣味の場など高齢化社会の中で高齢者と付き合わない事は不可能な現在、知る事で他の人より一歩リードしてビジネスや普段の生活に役立てていただければと思います。
――ありがとうございました!
老化による体の変化から、老人特有の行動や思考を分析したこの本を読んで、少しだけ親に優しく接することができるかもしれないと感じた。声を低く、目を見つめてしっかり伝えることで、親子のコミュニケーション断絶を防ごうと思う。
著者:平松 類(ひらまつ・るい)
医師/医学博士
愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。
現在、昭和大学兼任講師、二本松眼科病院副院長。
YouTubeチャンネル「眼科医平松類チャンネル」にて毎日情報発信をおこなう。のべ10万人以上の老人と接してきており、老人が多い眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。
専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。
NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、フジテレビ『バイキング』、
テレビ朝日『林修の今でしょ! 講座』、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう一直線』、
『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』、『週刊現代』、
『文藝春秋』、『女性セブン』などでコメント・出演・執筆等を行う。
(文/柿川鮎子)