『iPhone 13』シリーズで最も進化したのは、カメラだ。特に動画撮影は前モデルとの違いが大きい。新たに搭載した「シネマティックモード」で、ボケ味を生かした雰囲気ある動画を撮れる。Proモデルが搭載する3倍望遠やマクロ撮影も注目の進化点だ。これらの新機能を実際にチェックしてみよう。
デザインは前モデルを踏襲した『iPhone 13』シリーズだが、中身は大きく変わった。中でもカメラは、性能が向上したハードウェアと、処理能力を生かしたソフトウェアを融合して生み出された新機能が目白押しだ。
最も注目したいのが、動画撮影時に背景をボカせる「シネマティックモード」。カメラの視差や、機械学習による被写体分析を使って、動画撮影時に奥行きを認識。それをふまえて、前景や背景をボカすことができる。いわば〝ポートレートモードの動画版〟だ。
静止画撮影では、リアルタイムに被写体を分析しながら写真の雰囲気を変える「フォトグラフスタイル」に対応。4機種ともハードウェアはセンサーシフト式の手ブレ補正を搭載するほか、センサーサイズも大型化して暗所に強くなった。それに加えて『13 Pro』『13 Pro Max』はマクロ撮影に対応し、望遠が3倍に! 撮影の幅が大きく広がっている。
携帯ジャーナリスト
石野純也さん
出版社で多くの携帯電話雑誌を刊行後、ジャーナリストとして独立。現在はWeb媒体を中心に、雑誌、テレビといった幅広いメディアで活躍中。関わってきた著書も多数。
ピントが自動調整されたドラマティックな映像が撮れる!
【シネマティックモード】
【新機能解説】
一部にピントを合わせて、前景や背景をボカせる新モード。『iPhone』のカメラは絞りを調整できず、ビデオカメラのような光学的なボケは作れないが、マルチカメラの視差と被写体を分析する機械学習できれいにボカせる。処理能力が高い『iPhone 13』だからこそできる機能だ。ピントや被写界深度は後から調整もできる。
〈Review Comment〉ボケ味を生かした動画が本格的で編集も簡単!
スマホの動画はボケがない平坦な映像になりがちだ。一方「シネマティックモード」で撮った動画は立体感が豊か。ピントを合わせることで視線誘導もでき、凝った動画を撮ってみたいと感じた。ピントやボケを後から編集できるのも『iPhone』ならでは。その場では、撮ることに専念できるのがうれしい。
満足度 ★★★★★
センサーがオートで作動して撮影中のブレを強力に抑える!
【センサーシフト式手ブレ補正】
【新機能解説】
センサーを動かし、手ブレの揺れを吸収するセンサーシフト式の手ブレ補正に、4機種とも対応した。特に暗所では手ブレしにくくなる。初対応ではないが『iPhone 12』の時は『Pro Max』限定の機能だった。
〈Review Comment〉暗所で手ブレしにくく動画撮影にも効果的!
同機能の効果は、特に撮影した動画を見て実感。光の少ない場所で撮影する際は今までと異なり、『iPhone』を数秒間固定しなければならない「ナイトモード」に移行することが少なく、より気軽に撮れる。センサーシフト式の手ブレ補正が搭載された恩恵だ。
満足度 ★★★★☆
被写体にしっかり近寄り細部をハッキリと記録!
【最大2cmのマクロ撮影】
【新機能解説】
『13 Pro』『13 Pro Max』に搭載された超広角カメラは、マクロ撮影用カメラにもなる。モードの切り替えは不要で、被写体に近づいていくだけでOK。2cm程度まで寄って撮影でき、ディテールが鮮明だ。
〈Review Comment〉使い方は簡単でディテールの撮影に役立つ
撮りたい被写体に近寄るだけで自動的にマクロ撮影に切り替わる仕組み。切り替えを意識せず、簡単に使える。物や草花のディテールを撮る際に便利。フリマアプリの出品時などにも活躍しそうだ。ただし、フレーミングが急に変わってしまう点には慣れが必要。
満足度 ★★★★☆
遠くの被写体までしっかりとカバー!
【望遠3倍ズーム】
【新機能解説】
『12 Pro』は2倍、『12 Pro Max』は2.5倍の望遠だったが『13 Pro』『13 Pro Max』は2機種とも3倍望遠に進化。今までよりも被写体にズームしやすい。デジタルズーム利用時には最大15倍まで拡大可能だ。
〈Review Comment〉ポートレート撮影がしやすい倍率に。活躍の機会が増えそう!
35mm判換算時の焦点距離は77mm。拡大率がこれまでの『iPhone』より高いのはもちろん、よりポートレートの撮影がしやすくなった。少し離れた場所からのバストアップが撮りやすい。また、デジタルズームを組み合わせても6倍までは実用的な写真に仕上がる。
満足度 ★★★★★
『iPhone 13』シリーズ4機種のカメラ性能を比較
『13』『13 mini』と『13 Pro』『13 Pro Max』で性能が異なる。前者は超広角と広角の2眼仕様。後者は3倍望遠に対応。広角のセンサーサイズが大きく、超広角でのマクロ撮影も可能だ。
基本性能の進化もチェック!
なめらかに映し出す120Hz対応ディスプレイ
『13 Pro』『13 Pro Max』のディスプレイはリフレッシュレートが10~120Hzに可変。動きが多い映像はなめらかに見える一方、静止画を見ている時は画面の書き換え頻度が落ち、その分、バッテリーの消費が少なくなる。映像のなめらかさと省電力を両立させた、実用的な新技術だ。
処理能力に優れた最新A15チップ&GPU
チップセットはアップルが独自設計した「A15 Bionic」。主にグラフィックスを処理するGPUや、機械学習の処理を司る「Neural Engine」の性能が大きく向上した。「シネマティックモード」を実現できたのも、こうした処理能力があってこそだ。グラフィカルなゲームもサクサク動く。
取材・文・作例撮影/石野純也
※本記事内に記載されている価格などの情報は2021年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。