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なぜ若者たちがハマるのか?「東京喫茶店研究所」所長に聞く純喫茶ブームの楽しみ方

2021.10.23

近年、若者たちの間で昭和レトロな雰囲気が楽しめると〝純喫茶〟がブームになっている。特に、SNSの影響により20〜30代の女性客が増加しているという。若者たちにとっては、純喫茶のクラシカルな内装や、クリームソーダやナポリタンといった昔ながらの定番メニューが、真新しく映るようだ。

なぜ、そこまで純喫茶が若者たちを惹きつけるのだろうか。今回、これまで全国2,000軒以上の喫茶店を巡った経験を持つ、「東京喫茶店研究所」二代目所長の難波里奈さんにブームの背景と純喫茶の魅力についてお話を伺った。

PROFILE
難波里奈さん
初代所長・沼田元氣氏(芸術家)から受け継ぎ、「東京喫茶店研究所」二代目所長に就任。大好きな純喫茶を広め、親しんでもらうために日々活動している。日中は会社員として働きつつ、仕事帰りや休日に訪れた喫茶店は2,000軒以上。

純喫茶は〝個性〟を楽しむ場所

——はじめに、難波さんが純喫茶に興味を持ったきっかけについて教えてください。

難波:もともと、昭和の時代に一般家庭などで使われていた雑貨や家具が好きで、それらを集めるのが趣味でした。しかし、集めすぎて物があふれてしまったときに、自分の部屋に収集しなくても、純喫茶に行けば’〝活きた昭和〟’を感じられることに気付いたんです。それからは頻繁に喫茶店に通うようになりました。

いわゆる純喫茶には、当時の流行や店主のこだわりをもとに建てられたお店が多く、内装がとにかくゴージャスで、興味深いのです。そんな空間でコーヒーを飲める時間は至福の時。当初は、内装を純粋に楽しんでいたのですが、徐々にメニューや店主の人柄、店を始めたきっかけなど、〝お店の個性〟にも興味が湧いてきました。

——「東京喫茶店研究所」二代目所長を譲り受けたきっかけと、具体的な活動内容を教えてください。

難波:初代所長は、鎌倉で「木形子可(コケーシカ)」という、こけしとマトリョーシカの専門店を経営されている沼田元氣さんというアーティストの方でした。沼田さんが書いた純喫茶の本を持っていて、ずっとファンだったのですが、ご縁があって私が初めて出版する書籍のデザインを沼田さんが担当してくださったんです。そのことがきっかけで、二代目所長を譲り受けることになりました。

肩書として「東京喫茶店研究所二代目所長」を名乗っているのですが、研究所がどこかにあるわけではなく、活動場所は私のTwitterやInstagramなどのSNS上です。行ったお店の情報を発信して、「#純喫茶コレクション」というタグでたくさんの方に見ていただいています。また、皆さんが呟かれるお店を楽しませてもらってもいます。

日々情報を発信する中で「自分だけの秘密」にしておきたいときもありますが(笑)、たくさんの方が足を運んでくれたほうが、お店の方も嬉しいでしょうし、長く続いてほしいという願いも込めて、すべて発信することにしています。

1950年に開店した老舗、名曲・珈琲新宿らんぶる。200席ほどの地下フロアには、新宿とは思えない別世界が広がっている。

スマホ、SNSの発展が喫茶店の敷居を下げた

——今、純喫茶に真新しさを感じる若者が増えているようですが、難波さんご自身も何か変化を感じている部分はありますか?

難波:私が喫茶店に行き始めた頃は、店内に若い女性はほとんどいませんでした。お店としても「若い女性が入ってくることはない」という認識がありましたから「道に迷ったの?」「勧誘?」などと言われることも多かったですね(笑)。現在は以前からのお客さんのほかに、若い女性が多い印象です。

私自身この10年間、本の出版やメディアでの発信活動を地道に行ってきて、徐々に若い女性が反応を示してくれるようになってきたことを嬉しく感じています。

——やはりSNSやスマホの発展は純喫茶ブームに影響しているのでしょうか?

難波:そうですね、スマートフォンとSNSの普及は大きいと思います。可愛いと思ったものや美味しいものに出会ったら、それを発信して他の人に見てもらいたいですよね。その投稿を見た人が興味を持ってお店を訪れ、写真を撮る。それをSNSで発信して、さらに広まっていくという流れだと思います。

難波さんが一番訪れているという純喫茶、コーヒー専門店エース(神田)。兄弟でお店を経営しており、母親が作ってくれた「のり弁」をヒントに考案した「のりトースト」は必食だ。

私もそうだったのですが、「純喫茶って中の様子が分からなくて入りづらい」と思う方が多かったと思います。以前はカメラを持っていなければ写真を撮ることもできないし、良いお店だったとしてもその情報を発信する手段が少なかったので。

今では、スマートフォンを使って気軽にお店の情報を伝えることができますから、雰囲気はもちろん、メニューの詳細まで事前に知ることができます。あらかじめ情報を得ている安心感が、訪れる敷居を下げて、若い人たちも気軽に行けるようになったんだと思います。

純喫茶をさらに楽しむ秘訣

——純喫茶でのおすすめの過ごし方があれば教えてください。

難波:はじめはSNSから得た情報を頼りにするのも良いのですが、自分の目で好きなものを探していく過程にも楽しさがあると思います。SNSで一つのメニューが注目されると、どうしてもそのメニューだけを頼みがちです。でも、その人気メニューを楽しんだ後は、他のメニューも注文してみてほしいですね。他の人があまり頼んでいないものを頼んでみると、実はそのメニューのほうが自分にとっては素敵だったりすることもありますよ。

名曲・珈琲新宿らんぶるの裏メニュー「ミルクセーキ」

お店ごとの〝違い〟を探してみるのもおすすめです。例えば、コーヒーカップやシュガーポットの種類、椅子の形だけを各店で見比べてみるとか、定点観測のように一つのものに注目してみると、色々な気付きがあります。そこから「なぜ?」という疑問が生まれて、お店の人と話すきっかけにもなりますし。お店の人と話していると、「創業時から何十年も同じ椅子を使い続けている」など、さらに面白いお話が聞けることもあります。そういった新しい発見を重ねていくと、ますます喫茶店の魅力を感じられるはずです。

——今後も喫茶店文化を残すために、若い方たちに伝えたいことはありますか?

難波:まずは、SNSから事前に情報を得てからでもいいので「入りづらいな」と思わず、気になったお店に足を運んでみてほしいです。いっときのブームではなく、自分の生活の一部になったなら嬉しいですね。人気のメニューを一度食べに行って終わりというよりも、お店ごと愛する人が増えてくれたらいいなと思っています。純喫茶は、年齢や性別関係なく誰もが集える場所で、高級レストランよりも敷居が低く通いやすい、日常の中に組み込める癒しの場所ですから。

——ブームで終わらず、文化として定着してくれたらいいですね、本日はありがとうございました。

喫茶店に若い女性客が増えているだけでなく、昭和レトロのデザインを取り入れたグラス、ナポリタンなどの喫茶店モチーフを取り入れたレターセット・カプセルトイなどの関連グッズも売れ行きが好調だという。また、若い世代がお店を引き継いだり、異業種から敢えて純喫茶に参入したりといった動きもある。今後も喫茶店に関連するトレンドに注目していきたい。

取材・文/久我裕紀

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