テレワーク化、おうち時間増しにより、家族同居による悩みやニーズが増している。テレワークがはかどり、さらに家族との団らんも実現する理想のおうちを作るには、どんな工夫をすればいいか。
テレワーク環境づくりやリビングをはじめ、家族円満になるおうち作りのポイントを探るべく、今回は、整理収納アドバイザーで、「片付けパパ®」「片付け部長®」として活動する大村信夫さんにアドバイスをしてもらった。ぜひヒントにしてみよう。
テレワークに集中できるようにする部屋づくりのポイント
例えば、こんな4人家族が一緒に暮らしているとする。会社員でテレワーク中のパパと、専業主婦のママ、そして子どもは幼稚園児と小学生の4人家族。
パパは日中、テレワークで在宅勤務体制を取っており、朝は子どもたちを送り出した後、日中はママと一緒に家にいる。そして午後は子どもたちが帰ってくるので、4人が家に一緒に過ごす時間となる。
よくあるテレワーク環境の悩みとして、子どもがいると、仕事中に話しかけられたり、生活音がしたりして、仕事に集中できないというものがある。
そこで、テレワークに集中できるようにするための部屋作りのポイントを、自身も3児のパパである大村氏に聞いた。
【取材協力】
大村信夫氏
「片付けパパ®」代表。整理収納アドバイザー1級、共働きで3児のパパ。モノを整理することで心も整理され、日常生活や人間関係など人生全体に好循環が生まれることを伝えるべく、家電メーカーに勤務しながらパラレルキャリア(複業)として講演やワークショップを開催。一般社団法人パラレルキャリアマネジメント協会の事務局長・理事としても活動し、パラレルキャリアの普及に注力している。著書に「片付けパパの最強メソッド ドラッカーから読み解く片付けの本質」(インプレス/ICE)がある。
▼大村信夫公式ホームページ
https://omuranobuo.net
●リビングから離れた部屋を確保
「テレワークをする部屋は、可能な限りリビングから離れた部屋を確保してください。例えば昼間は、基本使わないような夫婦の寝室なども活用しましょう。ただし、パソコンなどを置くための机と椅子は用意することをおすすめします」
●部屋の中で間仕切りをする
「さらに可能であれば、部屋の中でも家具やカーテンなどで間仕切りをして独立した仕事スペースを作ることが大切です。仕事のスペースは1畳あれば充分です」
●机や机周りは余裕のある配置に
「1畳で良いとはいえ、机や机の周りなどは余裕のある配置をしてください。仕事中に書類やドリンクを置いたりするためです。あまりスペースがないと、かえってストレスとなります」
●生活音を遮断する
「耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンで生活音を遮断することもおすすめです。耳栓はメールやチャットの着信音にも気づかなくなってしまう可能性もあるので、パソコンとノイズキャンセリングヘッドホンをつなぐのがおすすめです。そのままビデオ会議などでも使えますので、耳から外す手間などもありません」
●ネット回線に配慮する
「インターネット回線を滞りなく用意することは非常に重要です。ビデオ会議などでも、みなさん経験あると思いますが、やはりネットワークの状況が悪いと、相手にも気を使わせてしまいますし、印象は良くありませんよね。例えば、Wi-Fiルーターの位置を変えてアンテナがよく立つようにすることや、無線では安定しない場合はLANケーブルでつないで、よりよいネット環境にすることも考えましょう」
家族がくつろげるリビングの作り方
最近は、家族が一緒にリビングで過ごす時間が増えている。ぜひ一家団らんのために、リビングはよりくつろげるようにしたいものだ。
快適でくつろげるリビングにするにはどうすればいいか。大村氏は、次のようにアドバイスする。
●モノをなるべく減らす
「まずモノが多いと、視覚に入ってくる情報が多くなります。人間の脳は、雑多な中から必要な情報を得るために脳内処理をしていますが、モノが多いとその処理に能力を使ってしまい疲労を起こしてしまいます。例えば、みなさんのパソコンのデスクトップもたくさんアイコンが並んでいると、それだけで疲れてしまいませんか? ですので、なるべくモノは減らすことが大切です」
●私物はなるべく置かない
「とくにリビングは、私物はなるべく置かないようにしましょう。収納スペースもモノをつめこまず、8割程度にします。食事が腹八分目というのと一緒で、収納も余裕を持たせてください」
●リビングに一つモノを持ち込んだら、一つモノを手放す
「リビングに一つモノを持ち込んだら、一つモノを手放すことを意識してください。そうしないとモノが増え続けてしまいます」
●定位置を決める・出したらすぐに元に戻す
「リモコン、雑誌などの定位置を決める、モノを出したらすぐに元に戻すということも習慣化しましょう」
また、大村氏は次のことも勧める。
「一日の就寝のタイミングで、5分でも良いのでリセットタイムを設けることもおすすめです。『なぜかいつも片付いていない』と思っているかもしれませんが、それにも、何かしら理由があるはずです。リセットタイムには、それをどう改善するかを考える機会にもなります。
そして、リビングに一番持ち込んではいけないのは『仕事』です。家族団らんの場にパソコンを広げてメールを打ったりするのは避けるべきですし、仕事の愚痴なども、家族には言わないように心がけたいですね」
家族が円満になるおうち作りの手順
家族が円満になるおうち作りを始めるときに、何から始めればいいか。また、その手順を大村氏に解説してもらった。
1.理想のおうちの情景をイメージする
「まずは家族みんなで、理想のおうちの情景を想像してください。こんなリビングで、こんな部屋で、こんな家族団らんの時間を過ごしたいというのをイメージするのです。これが結構重要です。このイメージを実現化できるように心がけることが、理想のおうちへの第一歩です」
2.モノを整理する
「そして次は、モノの整理になるわけですが、1年以内に使ったか使わないかで分け、1年以内に使ったものだけを収納するようにしましょう。もちろん、思い出の品など、例外はあります。
やってはいけないのが、仕分けをせずにいきなり収納用品を購入すること。これだと、収納用品というモノが増えて、部屋の中のモノを横から横に移動してきれいに整列させるだけになります」
3.モノを置く場所も家族みんなで決める
「モノを置く場所は、パパやママが一方的に決めるのではなく、お子さんと一緒に決めるようにしてください」
また、大村氏は次のことも勧める。
「例えば、リビングを片付けるなら、『片付け』というよりも『引越』だと考えてみましょう。より良い家族と過ごすための『未来への引越』だと思って、一旦リビングの中のモノをリビング以外の部屋に出してみる。その際、大掃除もかねてワックスがけなども一気にやってしまいましょう。
これらがなかなかうまくいかない場合は、整理収納アドバイザーを頼っても良いでしょう。第三者的視点で適切なアドバイスをしてくれます」
リビングの「無駄なもの、必要なもの」を見極める判断方法
リビングの整理整頓をするときには、家族みんなで必要なものと不要なものを判断する必要がある。どうすればうまく見極められるだろうか。
「リビングにあるものを、まずはすべて出してみてください。そして、先にも述べた通り、1年以内に使ったか使っていないかという客観的基準で判断して、1年以内に使っていなかったものは手放してください。そして迷ったものは『保留箱』を作って、リビングにおいておきます。意外と邪魔だなという家族の印象が付くのも狙いです。その保留箱には期限、例えば3ヵ月などを決めて、期限が来ても一度も使わなかったモノは手放すというルールにします」
「再入手可能なものは思い切って手放してしまいましょう。あとは、例えばお子さんが『いらない!』と言ったものは、潔く手放しましょう。そこでママが『このおもちゃは高かった』とか、『お義母さんからもらったものだから』という大人の観点が入ると、お子さんの選択基準がわからなくなってしまいます。モノを手放すということは、執着を手放すことだと思ってください」
収納スペースが少ないときの対処方法
また「収納スペースが少ない」という従来からの悩みが、おうち時間が増したことにより、顕在化してきたという悩みもよく聞かれる。
自宅全体の収納スペースが少ないときには、どんな対処法があるだろうか?
●まずはモノを整理して減らすところから
「まず初めに『収納スペースが少ない』と捉えるのではなく、モノを整理するところから始めましょう。収納スペースが少ないから、タンスや収納ケースを買う、引っ越すというのは、『着ている服が小さくなって着られなくなったから、もっと大きい服を買う』と同じ発想です。そうではなくて、まずはダイエットから、つまり、おうちの中のモノを整理するところから始めてみてください。整理の仕方は、リビングのところでお話したのと同じように行って見てください。例えば一年やってみて、そのためにどのくらいの費用や労力を使ったかについて費用対効果を考えてみてください。意外と使わないモノも多いはずです」
●それでも収納スペースが足りないなら外部保管を
「それでも、どうしても収納スペースがない場合は、外部に保管するのをおすすめします。例えば我が家では、冬物のコートや布団は、年に一度、保管付のクリーニングサービスに出します。春から秋にかけて冬物は必要ないのですから、その分の収納は減らせるわけです。
それ以外にも、レンタルスペースに置く、ご実家などにスペースがある場合は、そこに場所を確保するなどの方法もあります」
家族で一緒に過ごすおうち時間が以前よりも増え、テレワークも続いている現状、週末には家族そろって理想のおうちの情景をイメージしたり、話し合ったり、整理をしてみたりするのもいいのではないだろうか。
取材・文/石原亜香利