扶養控除を受ける手続き
扶養控除を受けるためにはどうしたらよいのか、手続きの方法を紹介します。
初めて手続きするときは、何かと戸惑うものです。事前に手続きの方法をきちんと確認しておけば、期限ギリギリになって焦ることもないでしょう。
会社員は年末調整で申告書を提出
会社員の場合は、会社の担当部署が税金の手続きをしてくれるため、基本的に自分で手続きをする必要はありません。
ただし、扶養控除に関しては、各家庭により状況が異なるため、申告する必要があります。具体的には、会社が『年末調整』を行うときに、申告書に記載して提出する形になります。
毎年12月ごろになると、会社側から『扶養控除等(異動)申告書』が配られるので、自分の家庭の状況に合わせて必要箇所に正しく記入し提出しましょう。
なお、二つ以上の会社から給料を受け取っている人など、年末調整の対象者でないケースもあります。この場合は、自分で確定申告をする必要があります。
会社側が手続きを行ってくれると勘違いして、確定申告の期限を過ぎてしまわないように気を付けましょう。
参考:[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
提出後に修正が発生した場合
年末調整後に申告書の内容に間違いがあったことに気付いたときは、正しく修正する必要があります。翌年の1月31日までであれば、会社側で年末調整のやり直しが可能なので、担当者に速やかに伝えましょう。
期限を過ぎてしまった場合や、「会社に迷惑をかけたくない」という人は、自分で『確定申告』をして修正することも可能です。
「年末調整と確定申告は、全く異なるものでは?」と思っている人もいることでしょう。会社が行うのが『年末調整』で、個人が行うのが『確定申告』という呼び名の違いはありますが、税務署への申告という点に変わりはありません。
参考:No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき|国税庁
個人事業主は確定申告で提出
個人事業主や年末調整の対象者ではない人は、1月1日~12月31日までの収入と税金を計算した『確定申告』を提出する必要があります。
翌年の2月16日~3月15日までに、確定申告書を税務署に提出する必要があるため、期限を過ぎないように気を付けましょう。
申告書の記載は特に難しいものではありません。まず、第二表の『扶養控除欄』に親族の名前・続柄・生年月日など必要事項を記載しましょう。次に、第一表の『所得から差し引かれる金額』の『扶養控除欄』に控除額を記載します。
実際に記入する前に、国税庁のホームページで記載の仕方や手続きなどを確認すると安心でしょう。
参考:申告と納税|国税庁
扶養控除の対象外となるケース
状況によっては、扶養控除の対象外になる場合もあります。どのようなケースが当てはまるのか確認しましょう。
「青色事業専従者」または「事業専従者控除の対象」
『青色事業専従者』は、納税者から『青色事業専従者給与』として収入を得られる代わりに、扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除が受けられません。
事業や不動産で収入を得ている人は、『青色申告』と呼ばれる確定申告をします。『青色事業専従者』は、青色申告を行う納税者と生活を一にする配偶者や15歳以上の親族で、6カ月を超えて事業に従事している人が該当します。
なお、仕事の内容については、特に定められていません。スキルを必要とするものでなくても、電話対応や後片付けなどの掃除といった雑用だとしても、事業に従事しているとみなされます。
参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
合計所得や年収が基準以上
合計所得や年収が扶養控除で定められた基準を超えている場合も、扶養控除の対象外になります。
2020年以降の合計所得の基準は『48万円以下』です。それまでは38万円以下だったので、10万円増えたことになります。
しかし、同時に給与所得控除額が65万円から55万円になり、10万円引き下げられています。2019年までは、65万円と扶養控除の要件である所得の38万円を足した103万円以下である必要がありました。
2020年以降は、給与所得控除が55万円で、扶養控除の要件である所得の48万円を合わせた103万円以下である必要があります。つまり、改正前と改正後で合計額に変わりはないのが現状です。
参考:各種控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正(令和2年分以降)|国税庁
扶養家族が減ると手取りは減少する
子育てが一段落して専業主婦だった人が、再びフルタイムで働き始めたり、子どもが社会人になったり、ライフスタイルが変わることは珍しくありません。
あらかじめ知っておきたいことの一つが『扶養家族が減ると手取りが減少する』ということです。
これは、扶養控除という制度が、扶養家族がいる納税者の税金の負担が減らすことを目的とした制度であることが大きな理由になります。扶養家族がいなくなれば、税金が上がり、給与自体は変わっていなくても手取りが減ってしまうのです。
扶養家族がパートやアルバイトをしている場合は、控除の条件や年収を意識して働くことが大切です。職場が管理してくれるところもあるかもしれませんが、基本的には自己管理になります。
繁忙期などに上司に頼まれるままシフトを入れて、気付いたら控除の範囲を超えていたということも珍しくないため、注意しましょう。