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覚えておきたい所得税の負担を軽減する「扶養控除」の条件と控除額

2021.11.12

所得税の負担を軽減する方法の一つに『扶養控除』があります。扶養控除がどのようなものなのか、対象となる条件や種類、金額など知っておきたい基本的な情報をまとめました。手続きの方法や対象外になるケースについても紹介します。

扶養控除の基本

まず、『扶養』とはどのようなものなのか言葉の定義を確認しましょう。扶養になるメリットや混同されがちな『配偶者控除』との違いについても紹介します。

扶養とは

民法では、夫婦や親と未成年の子どもなどの一定の親族関係にある者は、相互に扶養義務があると定めています。辞書に記載されている『扶養』の定義は、『自力で生活を維持できない者を経済的に援助すること』です。

家庭にたとえると、外で仕事をし収入を得ている一家の大黒柱である夫がいて、家事と育児をこなしている収入のない妻がいて、学生の子どもがいるという状況が該当します。

夫から見て妻と子どもは『扶養親族』に当たり、妻と子どもから見れば『夫(父親)の扶養に入っている』ことになります。

もし、妻や子どもが働き始めて収入が一定額を超えると扶養の対象外になり、『扶養から外れる』といった使われ方をされることが多いでしょう。

「配偶者控除」と「扶養控除」の違い

どちらも複数ある所得控除のうちの一つで、『納税者の経済的負担を軽減することが目的の制度』です。いずれの場合も納税者と生計をともにしていることが条件ですが、違いもあります。

『配偶者控除』の場合は、法律上の配偶者であることが必須条件で、特に年齢制限は設けられていません。

一方、『扶養控除』は、配偶者以外の親族が対象という違いがあります。配偶者を除く6親等内の血族および3親等内の姻族が該当します。

血族は、納税者の親族のことで、姻族は配偶者側の親族のことです。かなり広範囲の親族が対象になり、兄の扶養に入ったり祖母を扶養に入れたりと自由が利きます。また、16歳以上という年齢制限が設けられているのも異なる点です。

参考:国税庁|No.1191 配偶者控除
参考:国税庁|No.1180 扶養控除

扶養に入るメリット

扶養に入ることは、納税者の経済的負担を軽減するだけでなく、さまざまなメリットがあります。

日本国内に居住している20~60歳未満の人は、国民年金の被保険者に該当しますが、扶養されている場合は対象外になるのが大きなメリットでしょう。

年金保険料の負担なしで国民年金に加入できるだけでなく、この期間も納付期間に含まれるため、満額の給付を受け取れます。

健康保険にも加入でき、医療費の一部を負担するだけで、納税者と同様の医療を受けることができるのもメリットです。

また、子どもを持つことを考えている夫婦にとっては、出産一時金が受け取れるのも大きな魅力といえるでしょう。

扶養控除は2種類ある

(出典) photo-ac.com

同じものだと思われがちですが、『扶養控除』には『税制上』と『社会保険上』の二つの異なる制度があります。それぞれについて、どのようなものなのか具体的に紹介します。

税制上の扶養控除

税制上の扶養とは、納税者の『所得税』や『住民税』が軽減される制度です。

年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の場合などに該当します。

『扶養控除』だけでなく、『配偶者控除』や『配偶者特別控除』も税制上の制度です。扶養されている人の年収や納税者の年収が要件を超えた場合は、対象外になります。

社会保険の扶養控除

社会保険上の扶養控除とは、保険料を支払わずに『健康保険』や『厚生年金保険』に加入できる制度です。

子どもの頃に保険料を支払わずに医療を受けられていたのは、『被扶養者』であったためです。自分で働くようになり扶養を外れると、保険料を支払う必要があります。

厚生年金保険に関しても、無料になります。本来、全国民が納める必要がある国民年金を支払わずに済むというメリットは大きいでしょう。

扶養親族の要件

(出典) photo-ac.com

扶養に入るためには条件があり、誰でも対象になるわけではありません。どのような条件があるのか見ていきましょう。

納税者本人と生計を一にしている親族

扶養は、納税者と生計を一にしている親族のみが対象です。『生計を一にする』というのは、必ずしも同居を指すものではありません。実際には同居していなくても対象になる場合もあります。

例えば、仕事や学校の都合で別居している場合でも、常に生活費や学費などを送っているようなケースであれば、対象として認められるケースが多いでしょう。地方で暮らしている両親に毎月生活費を仕送りしている場合も含まれます。

逆に、両親と同居していても互いに独立した生活をしていることが明らかな場合は、対象外になることもあるでしょう。

参考:国税庁|No. 1191 扶養控除

判断基準はその年の12月31日

扶養親族に該当するのは、配偶者以外の6親等内の血族と3親等内の姻族です。ただし、扶養親族であれば誰でも対象になるというわけではありません。

該当するのは、判断基準となる『12月31日に年齢が16歳以上である者』だけです。

親族でなくても、都道府県から養育を依頼された子どもや市町村から養護を依頼された老人も含まれます。

なお、16歳未満の子どもについては、法の改正で『児童手当』の対象とされたことから除外されています。16歳未満の子どもについては、申告書の『住民税に関する事項』に記載しましょう。

参考:手順6 住民税に関する事項を記入する|国税庁

扶養控除の金額はいくら?

(出典) photo-ac.com

気になる扶養控除の金額を紹介します。近年、金額の見直しがされたことを知らない人は、きちんと確認しておくことが大切です。知っておきたい大切なポイントについても紹介します。

扶養控除は4種類

扶養控除は4種類あり、それぞれ所得税の控除額が異なります。16歳以上19歳未満、および23歳以上70歳未満の『一般扶養親族』は、『38万円』です。

19歳以上23歳未満の場合は、『特定扶養親族』に該当し、25万プラスされ『63万円』になります。

70歳以上が対象の『老人扶養親族』の場合は、通常の控除金額に10万円プラスされた『48万円』です。また、納税者または配偶者と直系尊属の場合や同居している場合は、通常の金額に20万円プラスされた『58万円』になります。

住所は違っても、同じマンションに住んでいて日頃ほとんどの時間を一緒に過ごしているような場合は、同居とみなされます。

また、病気で長期入院をしており納税者と別居しているような状況でも、同居に該当することもあるようです。

扶養控除を受けられるのは1人だけ

法律上、扶養控除を受けられるのは1人のみという決まりがあります。

例えば、自分と兄が田舎で暮らす両親に毎月、生活費を送っているとします。たとえ毎月、同金額を送金しているとしても、兄弟が重複して両親を控除の対象にすることはできません。自分か兄のどちらかだけが、両親を扶養控除の対象にできるのです。

一方だけ経済的な負担を軽減されるのは、不平等に感じる人もいるかもしれません。思わぬトラブルに発展しないように、お互いによく話し合って決める必要があるでしょう。

共働きは収入が高い方に入れると得

近年は、共働きの家庭も増えており、子どもをどちらの扶養に入れるか悩む人もいるのではないでしょうか。

結論からいうと、夫婦で『収入の高い方に入れるのが得』になるためおすすめです。税金は、収入が多いほど高くなる分、控除額も大きくなる仕組みだからです。

夫婦で収入に大きな差があるほど、どちらに入れるかで控除額に大きな差が出ます。手取りをできるだけ増やしたい場合は、収入の高い方に入れるようにしましょう。

なお、扶養控除を受けられるのは16歳以上となっているため、15歳以下の子どもの場合は対象外です。所得税に関しては、どちらの扶養に入れても違いはありません。

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