そろそろ、受験シーズンが近づいてきた。我が子に受験生がいる場合、親として気が引き締まるのではないだろうか。同時に不安になることもあるかもしれない。とくにコロナ禍においては、不安やストレスはより高まっているだろう。そんななか、意識したいのが、子と親、両方の健康マネジメントだ。
健康マネジメントの専門家、水野雅浩氏は、健康を後回しにしながら勉強をするのではなく、健康習慣をつけることで勉強のパフォーマンスを上げることを推奨している。
そこで水野氏に、受験生を持つ親へストレスや食事面アドバイスをしてもらった。
受験生の子を持つ親の悩み
株式会社ロッテが、2019年1月に、「2019年に受験をする子どもを持つ親400名(男性200名・女性200名)」に対して実施した「受験期の健康に関する意識調査」の結果、受験シーズンの親の悩みがわかった。
子どもが受験生になってから悩むことが増えたのは75.0%、子どもの受験に関する悩みのトップ3は、1位「子どもの成績の伸び悩み」、2位「志望校選び」、3位「子どもの健康」となった。
また、子どもの受験に関する悩みの全体1位は「子どもの成績の伸び悩み」(53.3%)で、父親の1位は「子どもの成績の伸び悩み」(57.8%)、母親の1位は「子どもの健康」(54.7%)であった。
そして、受験期の子どもの健康について気をつけていること1位は「栄養バランスのとれた食事」(39.0%)、2位は「適切な睡眠」(34.5%)という結果に。
自分自身の健康に気をつけている親は、79.5%に上った。
受験シーズンの親にとって、子どもの成績と健康が大きな悩みごとであり、同時に自身の健康にも気をつけていることがわかる。
子どもの受験期に親が疲弊してしまう・ストレスが増えるときの対処法
実は、子どもの受験期は、親の心身の健康が非常に重要だと水野氏は述べる。
【取材協力】
水野雅浩氏
健康マネジメントスクール代表。予防医学の専門家。健康経営アドバイザ-。作家、講師。著書「太らない疲れない7つの習慣」はアマゾン総合1位に。企業研修に加え、進学塾の受験生・保護者を対象に「受験に合格するための健康習慣」をテーマにオンラインセミナーを行っている。2021年11月には、『親子でつくる健康習慣「本番力」で受験に勝つ!』を学事出版より出版予定。
https://www.healthylifepj.com/
「親がストレスを抱えていることは、子どもにとっても最悪の状態です。ストレスの構造は、お化け屋敷と同じ。一人がキャーとなると、周りもキャーとなります。不安、恐怖、ストレスは伝播し増幅するのです。子どもは、受験シーズンにおいては、ただでさえ、非日常のストレスにさらされているのに、親がストレスで疲弊し、イライラしていると、子どもはそれを見て、さらに、ストレスを増幅させてしまいます。
子どものためにも、お父さん、お母さんは、ストレスが少ない状態をキープすることがポイントです」
水野氏は、親のストレスマネジメント方法として、次の3つを提案する。
1.朝、起床後5分以内に太陽の光を浴びる
「朝、起きたら5分以内に、必ず、太陽の光を浴びましょう。太陽の光を浴びるとセロトニンというホルモンが出ます。これは心を落ち着けるホルモンです。テレワークの方は、昼休憩のときにしか外に出ないということもあるでしょう。しかし心のさざ波を抑えるためには、まずは、太陽の光を浴びることが大切です。カーテンを開ける、ベランダに出る、散歩に出るなどしましょう」
2.睡眠時間を8時間確保する
「受験シーズンになると、我が子が勉強に励んでいることもあり、親も睡眠時間が短くなりがちです。しかし、それはいけません。親がストレスが少ない状態であることが、子どものストレスを低減させるのです。ナイチンゲールは、著書『病院覚書(Note On Hospital)』の中で、『病院の第一の条件は、患者にとって安心、安全な場所であること』と述べています。人を健康にするためには、まず安心、安全な環境づくりが大前提にあるということだと思います。家庭が子どもにとって安心、安全な場所であるためには、親がストレスを少ない状態を作ることが必要なのです。そのために、睡眠時間の確保はマストといえます」
3.完璧を目指さない
「『受験生のストレスも大変だけど、お母さんのストレス対策も大切だと思うんだよね』これは、2人の受験生をもつ母となった高校時代の同級生から、私に届いたメッセージです。私が『よかれと思って』、家庭でできる頭がよくなる食事習慣を紹介したことに対して、返ってきたメッセージでした。
とくにお母さんたちは『子どものため』と思い、ついつい子どもが健康になる食事を作ろうと、頑張りすぎてしまう傾向にあります。すると、ストレスが溜まってしまい、バーンアウトしてしまうことも。忙しいときは、出前や冷凍食品を上手に活用することも考えたいものです」
東大に合格した家庭の受験日当日の朝食と昼食のお弁当メニュー
水野氏は、今年11月に著書『親子でつくる健康習慣 本番で受験に勝つ』をリリースする。この書籍を執筆する上で、志望校に合格した親御さんに1年間通して、取材をした。その中でも、東大に合格した家庭の朝食とお弁当を紹介してもらった。
【朝食】卵かけごはんに、納豆にしらすトッピング。ネギとお豆腐たっぷりみそ汁
-解説-
●卵
「卵は、完全栄養食と呼ばれるほど、栄養素が豊富。さらに、コリンという栄養素が脳の神経組織を構成する材料となります。脳の神経ネットワークを活発にし、記憶力、集中力を高めてくれます」
●大豆
「納豆、お豆腐、味噌の原料の大豆は、『畑のお肉』と言われるほどたんぱく質がリッチ。さらに、レシチンという脳の神経伝達物質になる成分が入っていて、アメリカではブレインフードと言われるほどです。不足すると、徐々に記憶力の低下や認知症などを引き起こします」
●しらす
「しらすはDHAやカルシウムが豊富。脳の栄養素となるDHAだけではなく、メンタルを落ち着けるカルシウムも豊富。私も、朝ご飯には、しらすやちりめんじゃこをたっぷりかけて食べています」
●ご飯
「ご飯は、白米に雑穀米、押麦などを混ぜて食物繊維たっぷりの状態に。食物繊維は、糖質の吸収を穏やかにして、腸内環境を整えます。腸内環境が整うと、ストレス緩和につながるといわれています」
●お豆腐とねぎのみそ汁
「野菜は血液をサラサラにしてくれるので、長時間座って受験に臨む受験生の脳に、栄養をたっぷり注ぎ込むうえでも、大きな役割を果たしてくれます」「この朝食メニューは、受験当日だけではなく、毎朝食べるとより嬉しい効果が期待できそうです」
【お弁当】まぜおにぎりとゆで卵、漬物
1.しらすおにぎり:ご飯にしらすを混ぜ込んで、梅干しを真ん中に入れたおにぎり
2.かぼちゃおにぎり:かぼちゃを電子レンジで加熱し、柔らかい状態にしたものを細かく切り、ご飯に混ぜ込たおにぎり
3.たかなおにぎり:高菜の葉っぱを細かく刻んでごはんに混ぜ込んだおにぎり
-解説-
1.しらすおにぎり
「ご飯のような炭水化物は、素早く脳のエネルギーになります。そして、しらすは脳の栄養素DHA、メンタルを安定させるカルシウムを含み、梅干しは疲労回復成分を含みます」
2.かぼちゃおにぎり
「かぼちゃおにぎりは、私も初めて聞きましたが、理にかなっています。糖質が多く、素早く脳のエネルギーになります。また、かぼちゃはβカロテンが豊富で、視力・免疫力の維持向上に役立つ成分です」
3.たかなおにぎり
「お野菜は、ビタミンを始めとする抗酸化成分がたっぷり含まれます。受験中は、日常ではありえないストレスが襲いかかり、脳の中に大量の活性酸素が発生します。この脳のパフォーマンスを下げてしまう活性酸素に抗(あらが)うのがお野菜などのビタン類です」
「また、おかずとして、ゆで卵や、漬物もよいでしょう。一方で、NGなのはソーセージや、唐揚げなど。消化に悪いもの。とくにソーセージやハムなどの加工肉は、WHOなどがタバコと同じカテゴリーに入る食材としています。『脳の健康は、体の健康』『体の健康は脳の健康』というスタンスに立つと、明らかに体に悪いものは、食べさせないほうが良いでしょう」
受験シーズンが近づいている家庭は、ストレスが増してくる時期だ。ぜひ親は自らのストレスマネジメントを意識したい。また、今回紹介された受験日当日の食事メニューを普段の食事から取り入れていくのも良いのではないだろうか。
取材・文/石原亜香利