時候の挨拶は、季節や送る相手、内容に応じて最適なものを選ぶ必要があります。時候の挨拶を選ぶときのポイントは季節感を出すことです。11月に使える時候の挨拶を紹介します。季節を感じる一言を添えて、気持ちのこもった文章を送りましょう。
時候の挨拶とは?
時候の挨拶は、相手への思いやりが伝わる手紙やメールのマナーです。時候の挨拶を書く際のポイントや基本的な文章の流れを紹介します。
手紙やメールの冒頭に書く内容
「時候の挨拶」とは、手紙やメールの冒頭に書く季節に触れた言葉のことを指します。季節や気候の移り変わり・朝夕の寒暖差などを表すことで、季節感あふれる文章になるでしょう。
加えて、相手の健康を気遣う言葉でもあります。ビジネスでもプライベートでも、時候の挨拶を付け加えることで、思いやりや丁寧さがより伝わる文章になります。手紙やメールを送る際のマナーとして、書き方を身に付けておくとさまざまな場面で役立つでしょう。
時候の挨拶には、季節ごとにある程度決まった慣用句があります。それらに一工夫加え、自分なりの表現で伝えるのもおすすめです。
ビジネスなどで使用するかしこまった手紙やメールには季節に合わせた定型句を、親しい間柄の人には簡略化し、少しカジュアルな言葉を選んでもよいでしょう。
気候や行事など季節感を出す
時候の挨拶には、春夏秋冬それぞれの季節を大切にする、日本の伝統的な文化が詰まっています。
季節感を出すことで趣のある文面になるだけでなく、季節・気候・行事といった共通の話題から入ることで、コミュニケーションをより円滑にする効果もあるのです。
時候の挨拶では、季節に合った言葉選びがポイントになります。手紙を送る相手の居住地も考慮したうえで、適切な挨拶を加えましょう。
『~の候』で用いられる漢語調の挨拶は、旧暦を使用していた時代のものであり、現在の暦とは1カ月ほどのずれが生じます。
例えば、実際の気候において盛夏は7~8月、残暑が厳しくなるのは9月ですが、『盛夏の候』は7月を、『残暑の候』は8月を指すため注意が必要です。
基本の文章の流れ
手紙やメールにおいて、文章は前文から始まり本文を挟み、末文で締めくくります。
『前文』では、季節に合わせた挨拶や、相手の繁栄を喜ぶ挨拶や安否を伺う挨拶などを書きます。ビジネスにおける手紙・メールでは、基本的に『拝啓』から書き始めると覚えておきましょう。
送る相手と親しい間柄の場合は、時候の挨拶から書き始めても問題ありません。拝啓の後には時候の挨拶、続いて相手の繁栄を喜ぶ挨拶や安否を伺う挨拶が続きます。
前文が終わったら、次に本題を述べる『本文』に入ります。『このたびは、』『つきましては、』『さて、』などから書き始めるのが一般的です。
伝えたい本題を書き終えたら、最後は『末文』です。結びの挨拶を述べましょう。今後の指導や愛顧を願う言葉・相手の繁栄を祈る言葉を添えるのがマナーです。
ビジネスにおける手紙・メールでは『敬具』で締めくくります。前文と末文で、文面が繰り返されないように注意しましょう。
11月に使える時候の挨拶
11月に使える時候の挨拶を紹介します。『旬』とは10日間のことです。1カ月を3等分にして日数を数えます。上旬・中旬・下旬と、それぞれの時期に合った挨拶を選びましょう。
【11月上旬】適した表現と文例
11月上旬は、11月1日~11月10日ごろまでを指します。このころは、菊の花が咲き終わり、寒さが深まる時期です。よく使われる時候の挨拶に『残菊(ざんきく)の候』と『晩秋(ばんしゅう)の候』があります。
残菊とは、晩秋に咲き残る、菊の花のことです。『菊が散りゆくころ』『菊の花が咲き残るころ』を意味し、晩秋の風景を表現しています。
晩秋の候では、秋が深まり寒さが厳しくなってきた様子を表します。寒さが増し、冬が徐々に近づいていることを告げる表現です。
それぞれ以下のように使います。
- 拝啓 残菊の候、貴社ますますご繁栄のことと心からお喜び申し上げます。
- 拝啓 晩秋の候、日に日に秋が深まる季節となりました。お元気でお過ごしでしょうか?
親しい間柄の相手へ贈る場合は、カジュアルな挨拶でも問題ありません。以下のような挨拶を前文に入れるのもよいでしょう。
- こたつの恋しい季節となりました。我が家ではすでにストーブが活躍しております。
【11月中旬】適した表現と文例
11月中旬は、11月11日~11月20日ごろまでを指します。このころは、秋が深まり霜も降り始め、秋から寒い季節へと向かう時期です。よく使われる時候の挨拶に『霜秋(そうしゅう)の候』と『向寒(こうかん)の候』があります。
霜秋とは秋が深まり霜が降りる様子を意味する表現です。冷たく引き締まった、冬ならではの空気を感じ始める11月中旬に用いるのがよいでしょう。
向寒の候は秋から寒い季節へと向かう、季節の移ろいを表します。小寒の1月6日まで使うことができる表現です。
それぞれ以下のように使います。
- 拝啓 霜秋の候、平素は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
- 拝啓 向寒の候、朝夕とずいぶん冷え込む季節となりました。お変わりなくお過ごしでしょうか?
親しい間柄の相手へ贈る場合は、以下のような挨拶を前文に入れます。
- 枯れ葉の舞う季節となりました。こちらでは毎日落ち葉拾いに追われております。
【11月下旬】適した表現と文例
11月下旬は、11月21日~月末までを指します。このころは、寒さが深まるにつれて風も冷たくなり、冬が本格的に始まる時期です。よく使われる時候の挨拶に『深冷(しんれい)の候』と『初冬(しょとう)の候』があります。
深冷とは寒さが深まり、本格的に冬の寒さを感じ始める11月下旬ごろから用いられる表現です。
初冬は冬の始めを意味します。冬の訪れが感じられる様子を表す表現です。
それぞれ以下のように使います。
- 拝啓 深冷の候、貴社におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
- 拝啓 初冬の候、長らくご無沙汰しておりますうちに、一段と冷え込むようになりました。ご多忙のことと存じますが、お元気にお過ごしでしょうか。
親しい間柄の相手へ贈る場合は、以下のような挨拶を前文に入れるのもよいでしょう。
- 温かい鍋料理を囲みたくなる季節となりました。皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
結びの言葉も一工夫してみよう
末文まで気を配った言葉を選ぶことで、より一層思いが伝わる文面になります。前文の時候の挨拶だけでなく、結びの言葉も一工夫してみましょう。
11月に使える結びの言葉
結びの言葉では、前文で用いた表現を繰り返さないように注意します。相手の健康やさらなる発展を願う言葉を用いてみましょう。
- 深冷の折、末筆ながら貴社の一層のご発展を心よりお祈り申し上げます。 敬具
- 向寒の折、皆様のご健勝とご多幸を衷心よりお祈りいたします。 敬具
- 末筆ではございますが、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 敬具
- 氷雨(ひさめ)のみぎり、どうか体調を崩されませんよう、お体を大切になさってください。 敬具
- 木々が美しく色づく季節となりました。どうぞ温かくしてお過ごしください。
文末まで丁寧に言葉を結ぶことにより、より気持ちのこもった温かみのある文章になります。
マナーを感じさせるだけでなく、四季の移ろいを楽しむ工夫としても時候の挨拶は効果的です。いつもの手紙やメールに一工夫加えて、風情のある文面を送ってみてはいかがでしょうか。
構成/編集部