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KDDIとドコモが「購入プログラム」を改定、残価設定型ローンはスマホ購入でも当たり前になるのか?

2021.10.17

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は通信キャリアの購入プログラムについて話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

1年で買い換えたくなるドコモの「いつでもカエドキプログラム」

房野氏:新型iPhoneの発売に合わせて、携帯電話各社がiPhoneの価格や購入補助プログラムを発表してきましたね。

NTTドコモ「いつでもカエドキプログラム」

au(KDDI)「スマホトクするプログラム」と「スマホトクするボーナス」

房野氏

石川氏:購入補助プログラムは、KDDIがちょっと手を入れた。「スマホトクするプログラム」と「スマホトクするボーナス」で、なるほどねという感じだったのが、ドコモが「いつでもカエドキプログラム」で直前にホームランを打ってきた、みたいな感じ。

石川氏

房野氏:auはスマホトクするプログラムで、古い端末を返却する時に新しい端末を買わなくてもよくなったんですよね。

法林氏:「次もauで買ってね」というのはダメということになったので。

法林氏

石野氏:公取委対応プログラムですね。

石野氏

法林氏:ほぼ、それだけのためにやっている感じ。

石川氏:今までの購入補助プログラムは、48回割賦で半分負担か、24回払いで23回分払って、24回目は半分負担くらいという設定になっていた。iPhoneだったらそれが成立するだろうけど、Android端末は購入後、価値がかなり下がることを考えると厳しいんじゃないかなと。

 同じキャリアで新しい機種に買い換える前提だったり回線契約と紐付いていたりするなら、ビジネスとして成り立つけれど、完全分離されちゃうと厳しいよね。単に端末が買われて半分払ったらおしまい、みたいになっちゃうので。いずれ厳しくなるよね、手が入るよねと思っていたら、今回、残価設定が増えてきた。去年のauに続いてドコモが残価設定型にしてきた。

 考えられるのは、iPhoneはいいけれどAndroid端末は厳しいということ。Android端末の中でも、グローバルメーカーの端末はいいかもしれないけれど、国内メーカー端末は厳しくなってくると思う。残価を考えながら新しいスマホを買うという、世知辛い世の中になってくるなと思いました。

法林氏:Galaxyはいいけれどほかは残価が低い、みたいな話になる。GalaxyもSシリーズとかNote、Foldは高いけれどAシリーズはダメとか。

石野氏:世知辛い。今(2021年10月6日時点)、ドコモで残価設定が出されているスマートフォンはiPhoneとGalaxyですが、それだけを見ると残価が高い。頑張っているなと思うんですが、たぶん、このあと残価設定が安いモデルがどんどん出てくるんだろうなと。

法林氏:今までとちょっと違うかなと思っているのは、ユーザーの意識の中に「スマートフォンって中古でもいいんじゃない?」という考え方が増えてきた。また、高額な端末を2年に1回買うんだったら、「安い端末を半年とか1年に1回、ばんばん買い換えた方が幸せじゃないの?」という意識もある。高価なiPhoneを20万円出して買うのがいいのか、3万円、5万円くらいのAQUOS senseを毎年買うのがいいのか。ユーザー的には、通信費はこの2年くらいで下がったけれど、端末の購入に20万円も支払うという構図は、結構反感を持っている人が多いと僕は感じている。

石野氏:ドコモの残価設定だと、iPhoneも1年で買い換えた方が、早期利用特典が付くので得になるような感じがするんです。1年だと実質3万円未満で買い換えられるモデルがある。ドコモはいつも特殊なヘビーユーザーに気配りしているところが謎ですよね(笑)

石川氏:それは石野さん対応ですよ(笑)

石野氏:ドコモは4キャリアの中で端末の売上も突出して多い。いろんなところに目配りしていることは、ドコモの販売力の強さにつながっているのかなと。

石川氏:早期利用特典(22か月目以前に端末を返却すると翌月以降の分割支払金が割引される特典)を導入したところは素晴らしいなと思った。

石野氏:目配りがすごいですよね。

石川氏:すごい。他社だとちゃんと2年間使って買い換えようと思うけれど、いつでもカエドキプログラムだったら1年で買い換えようかという気になる。我々のような1年でどんどん買い換えるようなユーザーからするとありがたい。

石野氏:下手したら6か月でもいいじゃないですか。

石川氏:そう。だから「Galaxy Z Fold3 5G」を買って、3か月くらいで返却したらどうなるかなって考えている(笑)

「Galaxy Z Fold3 5G」

端末価格のからくり

房野氏:以前、石川さんは、ユーザーを2年間囲い込めることで、キャリアは経営計画を立てやすいという話をされていたと思います。今回のような買い換え前提になってくると、ユーザーの利用スパンが読めなくなって、キャリアは舵取りが難しくならないでしょうか。

石川氏:経営的に結構厳しいというか、安定性がなくなるような気がしています。オンライン専用プランはすごく乗り換えやすいので、自分も毎月のように乗り換えているんですよ(笑) 端末も別にどこで買ってもいいじゃないですか。ということを考えると、従来は、少なくとも2年は使ってくれるユーザーがいる中で安定した経営を考えられたけれど、今後、下手したらユーザーがドカッと移動することもあり得るので、大変なんじゃないかなぁ。

石野氏:縛れない対価として、残価設定プログラムのiPhoneって、Appleの価格に比べると高くなっているんですよ。そういう影響はある。

法林氏:キャリアの場合、基本的に購入補助プログラムが使える。後で差し引きすると微妙なんだけど、一応、通信料金に月額2000円くらいプラスすればiPhoneを買える。そうやって、2年間使う人をうまく囲い込んでいる。本当はそうやって事業の設計を成り立たせたかったんだけど、石川君のように毎月乗り換えるような人もいるので、そこは少し見直しがかかるかもしれない。

 基本的に、端末を売ったらキャリアは儲かる。一定数、売上が立つので、そこはいい。ただ、確証はないけど、楽天モバイルのiPhoneの扱い方は、ほかの3キャリアの扱い方と違うんじゃないかと。だから楽天モバイルはAppleと同じ金額でiPhoneを売っているんだと思う。

トータルコスト意識と「月額」意識

石野氏:キャリアの購入補助プログラムは、2年で買い換えると割安になるじゃないですか。ドコモの場合だと1年とか、半年でもまぁまぁお得になる。一方、一般的にスマホは3年から4年使われると言われていますが、そういうユーザーは損しますよね。手元に端末が残る代わりに本体価格は割高になっているので。なんか、新たな格差というか、新たな不公平がいずれ総務省に指摘されるんじゃないかと(笑)

石川氏:でも、この売り方を否定されたら、もう売りようがないですよね。

石野氏:1台のスマホを長く大切に使っている方たちに、どんどん買い換える人が助けられている。

法林氏:石野君が言ったことはカギだと思う。2年使ったから得とか3年使ったから損だという考え方ができるのは、そういう経験値がある人というか、全体像を見て、そういう判断ができる人。例えばクルマは、リースがいいのがレンタルがいいのか、カーシェアがいいのか自分で買うのかいいのか。家も賃貸がいいのか買うのがいいのか、戸建てなのかマンションなのかってあるじゃないですか。それと同じ。

 僕は、今の世間一般の人たちのスマホの買い方って「月額」だと思うんですよ。2年使ったらどうとかって考え方をあまりしていない。「1か月の通信料はこれだけです。これにこれだけ乗せたらiPhone 13 Proが買えます」という判断。トータルコストを考えていない人が多い気がする。。ただ「2年経った時に返すんでしょ? どちらにしろ2年経ったら手放すから、それでいいじゃん。またその時に入ればいいんでしょ? だったらそうします」っていう感覚。そういう消費者心理をうまく利用したのが、今の購入補助プログラム。

石野氏:そういう人にとっては、2年後に買い換えずに端末が手元に残っていても、月額千数百円、二千数百円の分割支払い額は変わらないわけだから、「負担は別に増えていないでしょ」という考え方なんですね。

法林氏:うまくすると、2年後に延長プログラムが始められる可能性があるわけですよ。

石野氏:僕らの発想だと、「2年間使ったものに、これ以降、さらに月額千数百円払っていくのは損。新しいモデルに切り替えた方がいい」と思うけど。

法林氏:ユーザーの心理は月額に向いているんだということ。

石野氏:考え方が違うんですよね。

法林氏:根本的に違う。

石川氏:我々みたいなユーザーは価値として考えている。1年後に売る前提で、きれいさを保ったまま使うし、ぶつけたら落ち込むし。

石野氏:トータルコストはいくらかと考える。

法林氏:でも、「どのキャリアでiPhoneを買うとお得?」みたいな記事はそこそこ読まれているようなので微妙なところですよね。

房野氏:「航空券のチケット、どこが安い?」みたいなWebサイトがあるじゃないですか。通信でもそういうのがないですかね。iPhone 13 miniを買うには「あなたの場合は楽天モバイルで、このプログラムで買ったら安いですよ」みたいな提案があるような。

石野氏:それはスマホの専門媒体に。

石川氏:ただね、まだそこまで理解されていないと思います。各社のプログラムの違いもみんなよくわかっていないし。

法林氏:だから注目を集めるのが月額なんですよ。大多数のユーザーは結局、その値段しか見ていない。

房野氏:そうなんでしょうね。各キャリアの料金シミュレーションは月々の支払いをベースにして作られていますし。

石野氏:確かにそうですね。

房野氏:端末の一括価格がわかりにくくて、調べる時に苦労します。イライラすることも多いんですが、一般のユーザーは1か月の金額の方が重要なのでしょうね。

石川氏:総額じゃないんだよね。

石野氏:僕らだと、旧機種を売ることで「1年間たったの4万4000円で使えて、さらにiPhoneが新しくなる」と考えるんですけど。

法林氏:そこが根本的に間違っている(笑) いろんな機種をどんどん買い換える人は確かにそうなんだけど、多くのユーザーの心理とは違う。

石野氏:まぁ、そうですね。でもiPhone 12 Proを4万円くらいで1年間使えたと思うと、超お得ですよ。

メーカー版Android端末は破損に要注意!

房野氏:ドコモのいつでもカエドキプログラムを利用すると、MNPで、早期利用特典を使って12か月で返却すると、実質負担額がすごく安くなりますね。「iPhone 13」の128GBモデルだと3万円を切っています。

「iPhone 13」

石野氏:ドコモの残価設定はギリギリを攻めていて、中古ショップの5%引きくらいの価格に設定されている。

法林氏:iPhoneは多くの機種が世界で3つ、iPhone 13だと5つしかSKU(Stock Keeping Unit:在庫管理上の品目数)がないので、中古端末を回収して、業者に渡して、クリーニングして多少傷があれば交換して、試験した上で、箱はないけれど、ケーブルだけ付けて売れる。海外では喜んで買う国がある。

石川氏:こういうことを考えると、本当にiPhoneを買っておいた方がいい。iPhoneを1年くらいで買い換えていくのが一番得。Android端末を買うのは結構難しいなと。

石野氏:いや、僕はGalaxyを買う。

法林氏:全面的に否定!(笑)

石野氏:GalaxyかiPhoneか……日本も北米みたいになってきましたね。

石川氏:auのオンラインストアでは、iPhoneの中古品が売られていますからね。あれを見て、来るところまで来たなと感じました。

石野氏:総務省にやれと言われていたんですよね。

法林氏:そうね。「中古端末を売らないのか」と相当突っ込まれていた。ただ、うーん……海外に転売する話は為替レートの問題も絡んでくる。特に今の時期だと、円安だから結構損する。

石野氏:その間はストックしておいて、ここだという時に出す。

石川氏:売り先が色々あるのがiPhoneの強いところ。為替の影響で、国内がいいとか、今だったら海外だとか、そういったルートがたくさんあるし、多少、倉庫に寝かせておいても価値を保つということでいうと、iPhoneは強い。

石野氏:そうですねぇ。

房野氏:クルマだとトヨタ認定中古車など、メーカー認定の中古車がありますが、auの中古スマホは……

法林氏:それに近いです。

石川氏:au certified(認定中古品)になっている。

法林氏:整備済み品とか、もしくはiPhoneを破損した時に交換してもらう端末と同じだと思う。

石野氏:それで思い出した。僕みたいに勝手に中古ショップに売る“セルフ残価設定プログラム”をやっている人は、画面割れは要注意ですね。画面にほそーいキズが1本入っただけで、買取額が8割減になっちゃったんですよ。

法林氏:補償プログラムに入っていればいいじゃん。

石野氏:メーカーのSIMフリー端末の場合、補償プログラムの内容が弱いんですよ。

石川氏:画面の保護フィルムは重要ですよ。

石野氏:本当にそう思いました。

石川氏:8月にiPhone 12をコンクリートの上に落としたんですよ。そうしたら貼っておいた保護ガラスがぱっきり割れていたんですけど、剥がしたらディスプレイはきれいなまま。なるほどフィルム屋さんは儲かりますよ。

石野氏:本当にフィルムは重要ですね。ちょっとのキズで8割減ですよ、8割減。7万円のものが5万6000円も安くなって1万4000円になるんですよ。自分の端末の画面のキズを「Xperia ケアプラン」で直そうと思ったら、「その程度のキズでは適用できません」って言われてしまった。メーカー版SIMフリー端末でセルフ残価設定プログラムをしちゃうのは、かなりリスクが高いなと思いました。

石川氏:だから、落とした時のことを考えると、Galaxy Z Foldを持ち歩くのは心理的な負担が大きいんだよね。20数万円が一気に価値を落とす。

石野氏:Z Foldには各キャリアの補償サービスがあるのと、Galaxy Harajukuでその場で修理してくれるので手厚い。でも、メーカー版SIMフリー端末は結構リスクが高いなと。

法林氏:SIMフリー端末の端末は、クレジットカード付帯の保険や持ち物保険が使える。企業がやっているスマホ保険もある。

石野氏:「その程度なら使えるでしょ」って言われる中途半端な壊れ方が、一番損するのかもしれませんね(笑)

……続く!

次回は、ドコモの「エコノミーMVNO」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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