おうち生活が続くいま、家の中の片付けの必要性に迫られている人も多いのではないだろうか。しかし片付けは往々にして億劫なもの。「自分は片付けが苦手」「片付けのセンスがない」などと心でつぶやいて数ヶ月が経つという人も少なくないはずだ。
しかし、整理収納アドバイザーであり「片付けパパ🄬」「片付け部長🄬」として活躍する大村信夫氏によると、多くの人は片付けを勘違いしているというのだ。ぜひ考え方を変えてみよう。
片付けは「センス」ではなく「理論」
大村氏は、講演や執筆などを通じて片付けメソッドを普及している。著書である『片付けパパの最強メソッド ドラッカーから読み解く片付けの本質』から、まず片付けとは何かを紐解いてみたい。
【取材協力】
大村信夫氏
「片付けパパ🄬」代表。整理収納アドバイザー1級、共働きで3児のパパ。モノを整理することで心も整理され、日常生活や人間関係など人生全体に好循環が生まれることを伝えるべく、家電メーカーに勤務しながらパラレルキャリア(複業)として講演やワークショップを開催。一般社団法人パラレルキャリアマネジメント協会の事務局長・理事としても活動し、パラレルキャリアの普及に注力している。著書に「片付けパパの最強メソッド ドラッカーから読み解く片付けの本質」(インプレス/ICE)がある。
大村信夫公式ホームページ
https://omuranobuo.net
何かやりたいなと思っても、「自分にはセンスがないから無理だ」と考えている人は多いが、他のことはどうであれ、片付けについて言えば、必要なのはセンスではなく理論であり、スキルであるため、やればできるようになるという。
片付けられない状態には、そもそも「自分にはできない」という思い込みも深く関わっていると大村氏。
「私自身も片付けを学ぶ前は『自分にはセンスがないからできない』とあきらめていましたし、本当に家の中もモノだらけでぐちゃぐちゃでした。ですが現在は、整理収納アドバイザー1級に合格して、片付けもできるようになりましたから、『できないという思い込み』も片付けることはできるのだと言えます」(大村氏)
途端に希望がわいてきた人もいるだろう。そのやる気が第一歩。
「片付けは自転車と同じ。自転車は生まれたときから誰でものれるものではないですが、みんな最初は補助輪をつけて練習を重ねるうちに自然と乗れるようになったと思います。
片付けもこれと同じで、乗れるようになるまでは意外と簡単で、理論を学んで実践すればいいのです」(大村氏)
ただし、どうしても片付けが苦手に感じたりする人もいるという。そんなときに考えて欲しいのが、整理収納アドバイザーに有償で依頼すること。「これは決して逃げなどではなく、『自分で片付けなければ』という思い込みを片付けたとも言えます」と大村氏は著書の中で述べる。
片付けとは「整理→収納→維持」のサイクル回すこと
ここで片付けの理論に少しフォーカスしてみよう。
「片付け」とは具体的にどのような行動をするものか。「しまう」「整理整頓する」「捨てる」「分類する」「もとに戻す」など人それぞれ言葉が違うし、曖昧だ。
そこで、片付けのプロである整理収納アドバイザーとして推奨する片付けをもとに理解してみよう。
片付けとは、「整理→収納→維持」のサイクル回すことだという。
1.整理とは
・「必要・不要」を分けること。
・手順は、「全部出す→選択基準を作って必要・不要を分ける→不要なモノは手放す」
2.収納とは
・「整理」で必要となったモノを収納すること。
・5つの鉄則「適正量の決定、動作・行動動線にかなった収納、使用頻度別収納、グルーピングの効果、定位置管理」を守って収納する。
3.維持とは
・整理収納された状態を維持すること。
・意識してやるというよりも、考えなくてもできる状態になる(習慣化する)ことが重要。
・ポイントは「INとOUTのバランスを保つ・家が散らかる行動習慣をやめる」の2つ。
これらのサイクルを回すこと、そして整理、収納、維持それぞれについてやるべきことを手順に沿ってやること。これが片付けなのである。
片付けの「成功・ゴール」を明確にしよう
実は、「片付けにおいて最も大事なのは、どうやってやるか(=How)ではなく、どういう部屋で過ごしたいか(=Being)という点」だと大村氏は説いている。
まず片付けにおいてはやり方ではなく「あり方」を意識しておかなければならない。
なぜなら、あり方を意識することは、片付けのモチベーションを上げるためにも重要だからだ。
大村氏自身、「正直に言うと、片付けという行為自体はそんなに楽しいものではない」と言うくらいだ。
「片付けのモチベーションを上げるためには、『どういうところで暮らしたいか?』『どういう時間を過ごしたいか?』を明確に思い描いていただくことが重要です。
これはダイエットと同じ。ダイエットという行為そのものは楽しいものではないけれど、ダイエットの先にある自分を思い浮かべるとモチベーションがわきますよね。
家の片付けも、家族で子どももまじえて、雑誌やWebの部屋のなどの写真を身ながら『どういう暮らしをしたい?』『こんな感じがいいよね』『こういうデザインがいいよね』『こういう時間を過ごしたいよね』と話し合って、あたかもそれが実現しているように妄想してほしいのです」(大村氏)
片付けが理論やスキルなら、自分もできるかもしれない、と思ったら、まずはゴールから決めてみると良さそうだ。一人暮らしなら自分が暮らしたい部屋を。家族同居なら、ぜひ家族とともに話し合って理想の部屋を描こう。
【参考】
「片付けパパの最強メソッド ドラッカーから読み解く片付けの本質」(インプレス/ICE)
取材・文/石原亜香利