ゼネラルモーターズ(GM)は、2021年10月6日・7日の両日、投資家向けのイベントを開き、全車電動化の未来に移行する中で、EBIT調整後利益率を拡大させながら、10年後までに年間売上高を倍増させる計画について、その概要を発表した。 GMはすでに、2025年までにEV(電気自動車)およびAV(電動自立走行車)に350億ドルを投資し、30車種以上の新型EVを世界市場に投入する計画を発表している。
GMの会長兼CEOメアリー・バーラ氏は、以下のように述べている。
「GMは、事故ゼロ、排出ゼロ、混雑ゼロの世界をつくりあげるというビジョンのもと、電動化やソフトウェアを活用したサービス、『オートノミー』(2002年にGMが発売した未来型燃料電池車の概念)の分野において、競合他社を大きくリードしてきました。これら成長トレンド分野への初期投資により、GMは自動車メーカーから、お客様を中心としたプラットフォーム・イノベーターへと変貌を遂げました。GMは、ハードウェアとソフトウェアのプラットフォームを活用して、お客様の日々の体験を革新し、向上させて、すべての人を全車両電動化の未来へ導いていきます」
投資家向けイベントで議論されたテーマは以下の通り。
■GMは、2025年までに米国におけるEV市場シェアでリーダーになることを目指すとともに、内燃機関エンジン車からの利益を拡大する計画である。GMの成長の原動力となるのは、自社開発したモジュール式EVプラットフォーム「アルティウム(Ultium)」であり、共通化した拡張可能なバッテリーパックを使用して、非常に魅力的で幅広いEVポートフォリオを構成することが可能となる。「アルティウム」搭載のEVには、3万ドル前後で販売されるシボレーのクロスオーバー、ビュイックのクロスオーバー、シボレー、GMC、ハマーEVのピックアップトラックなどの量産車のほか、新たに投入される「リリック」や「セレスティク」といった精巧にデザインされたキャデラックのEVなども含まれる。
■GMは、デジタルサービスを積極的に拡大し、ライフタイムバリューを高めるために、「アルティウム」に「アルティファイ(Ultifi)」を加えた、GMのデュアルプラットフォーム戦略を展開する。「アルティファイ」は、新しい車両体験を実現し、顧客のデジタル・ライフとの連携のために設計されたエンドツーエンドのソフトウェアプラットフォームである。ソフトウェアで定義された機能やアプリ、サービスなどを顧客に無線通信で頻繁かつシームレスに配信できるようになる。
■GMのグローバルイノベーション&グロースチームには、機会があればあらゆる市場に参入し、新しい市場を開拓するというミッションがある。GMは、規模も成熟度も異なる約20社のスタートアップ企業を傘下にしており、その中にはまだ初期段階にある企業もあれば、電動商用車のブライトドロップ社や保険代理店のオンスターインシュアランスのように事業を開始した会社も含まれる。
■2030年までに、GMの北米および中国の生産拠点の50%以上をEV生産可能にする計画。
■米国の施設での再生可能エネルギー100%調達を5年前倒しし、2025年までに実現する計画。
収益の倍増と利益率向上のための経営計画を発表
さらに、ゼネラルモーターズ(GM)は、電気自動車(EV)、コネクテッドサービス、新規事業を原動力とする成長企業への変革により、2030年までに年間売上高を倍増させ、利益率を12〜14%に拡大する経営計画の詳細なロードマップを発表した。
GM会長兼CEOメアリー・バーラ氏は、以下のように語った。
「GMはこれまでも世界を変えてきましたが、今回も再び変えようとしています。私たちには長期的な成長の原動力が複数あり、今後のビジネスチャンスを前に、これほど自信と期待に満ちたことはありません」
GMは、2日間にわたる投資家向けミーティングの冒頭で、その成長戦略を発表した。他社からGMに入社したばかりの多くの人材を含む同社幹部が、GMの強力なハードウエアとソフトウエアのプラットフォームがどのように組み合わされて、成長、利益率の拡大、顧客の増加、収益の多様化をもたらすかを詳しく説明した。
エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・ファイナンシャル・オフィサーのポール・ジェイコブソン氏は次のように述べている。
「GMは、我々のビジネスの軌道を変えるような長期的な成長ストーリーを実現しています。端的に言うと、我々はいま2030年までに収益を倍増させると同時に、利益率を拡大するというターニングポイントに立っています。世界トップクラスの内燃機関エンジン(ICE)、EV、AVを設計・製造・販売するという中核事業の伸長に加え、利益率の高いソフトウエアやサービスの成長、新規事業への参入と商業化によって、これを達成していきます」
ジェイコブソン氏による、GMの財務目標は以下の通り。
■多様性の向上による優れた収益成長:GMは、10年後までに年間売上を5年間の平均である約1,400億ドルから倍増させるという方向性を示した。GMは、2030年までのソフトウエアおよび新規事業の年平均成長率を約50%とし、強力な中核事業である自動車事業が成長を牽引する計画。
■利益率の拡大:GMは、この変革により、10年後までに12〜14%の利益率を実現できると考えている。EVの普及、バッテリーコストの低下、利益率の高いソフトウエアや新規事業プラットフォームの導入により、中核となる自動車事業の利益率は拡大していく。
■充実したプラットフォーム:GMは、量産されるセグメントに魅力的なEVを投入することによって、2023年に約100億ドルが見込まれるEVの売上高が、2030年には年間約900億ドルになると予測。コネクテッド・ビークルやその他の新規事業は、800億ドル以上の新規収益をもたらし、その成長の大部分が、事業規模の拡大に伴って10年後の後半に加速すると考えている。
■クルーズの商業化:GMはクルーズとともに自動運転モビリティサービスの分野で市場をリードする地位を確立しており、10年後までに年間500億ドルの収益を実現する可能性がある。
■内部資金による資本支出:GMの年間資本支出は、次世代EVバッテリーシステム「アルティウム」生産のための合弁会社への投資を含め、EV製品ポートフォリオへの移行に伴い、中期的には90億ドルから100億ドルの範囲となる見込み。GMの堅調な収益と利益率の拡大により、GMはこれらの投資をすべて内部資金でまかなうことができると考えている。
■強力なキャッシュコンバージョン:GMは、10年後の後半には80〜90%のキャッシュコンバージョン率を達成すると見込んでいる。
■健全なバランスシート:GMの強固なバランスシートにより、長期的な成長に不可欠な投資適格格付けを維持しながら、成長に向けた優先的事業への投資を継続することができる。
EV、ソフトウエア対応サービス、新規事業からチャンスを開拓
初日のプレゼンテーションと投資家との質疑応答では、GMのリーダーが「アルティウム」と「アルティファイ」のプラットフォームがいかにしてGMの成長戦略を支えているのかについて説明した。
そのビジネスチャンスは多岐にわたる。
■GMは、10年後には3,000万台のコネクテッドカーが登場し、ソフトウエアおよびサービスの年間売上が200億ドルから250億ドルになると予測している。「オンスター」は、業界をリードするコネクティビティ・プラットフォームであり、現在、1600万台以上のコネクテッドカーが走行、年間20億ドルの収益が見込まれている。GMのソフトウエアおよびサービスの成長の一部は、オンスターインシュアランスによるもので、今後10年間に年間60億ドル以上の潜在的な収益機会があると予測されている。
■クルーズ社のCEOであるダン・アマン氏は、AV「クルーズ・オリジン」の発売に向けて、クルーズの商業化と迅速な取り組みについて、投資家に詳細を説明した。
■GMの新規事業であるブライトドロップは、法人顧客向けの配送製品およびサービスのコネクテッド・電動化エコシステムを構築しており、およそ5年後に50億ドル、10年後には100億ドルの収益をあげ、20%の利益率に近づくと見込んでいる。ブライトドロップは、「アルティウム」搭載のフルサイズ商用EV「EV600」を発売しており、それに続いて来年には小型の「EV410」を発売する予定。
■GMは、スタートアップ企業20社の事業を展開している。これから事業を立ち上げようとしている会社もあり、イノベーションと新たな収益源の可能性を常に追求している。GMのリーダーからは、「Future Roads(フューチャーロード)」と呼ばれる、開発中の全く新しいソフトウエアに対応する新興企業のプレビューを行なった。この企業は、データ分析を用いて、より安全な道路やコミュニティに関する情報を提供する。
プレゼンテーションの中で、GMは、2025年までに充電インフラへの投資を約25億ドルに拡大し、米国とカナダの家庭、職場、公共の場での充電を含む、すべての充電領域を網羅することを発表した。この投資により、「アルティウム」チャージ360の優れたカスタマーエクスペリエンスを通じて、信頼性の高い公共充電設備へのアクセスが大幅に向上する。
関連情報:https://www.gmjapan.co.jp/
構成/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)