夫婦の話し合いによって行う「協議離婚」。そもそも離婚をするかどうかという点から、養育費や子供との面会条件まで、さまざまな内容を双方の合意に基づいて決定できる離婚方式だ。費用を抑えつつ、当事者間で完結できる手軽さはあるが、後のトラブルを避けるためにも、基本的な知識はおさえておく必要がある。
本記事では、協議離婚の意味やメリット、デメリットについてわかりやすく解説する。離婚の形式は、協議離婚の他にもいくつか存在するため、各形式の違いも併せて確認してほしい。
協議離婚とは何?
まずは、協議離婚の意味を解説する。よく見聞きする他の離婚形式との違いもチェックしておこう。
話し合いによってする離婚
協議離婚とは簡単に言うと、「夫婦間の話し合いによって成立させる離婚」のこと。現在日本では、この協議による離婚がもっとも多いと言われている。「協議」とは、’’離婚する意思の合致’’を意味するため、当事者間での合意があれば離婚の際に法的な理由は不要。つまり、協議離婚は、離婚意思の合致と離婚届の提出によって成立する。
協議離婚と調停離婚の違い
調停離婚とは、夫婦間での協議が困難である場合に、家庭裁判所において行う離婚形式。第三者である「調停委員」が夫婦の間に入り協議を進める点で、協議離婚と異なる。
協議離婚と審判離婚の違い
審判離婚は、離婚の調停が不成立となった場合で、裁判所が離婚するのが相当であると認めたときに行われる離婚形式。裁判所が職権で行う「調停に代わる審判」によって成立する。
協議離婚と裁判離婚の違いは?
裁判離婚とは、協議離婚や調停離婚が成立せず、審判離婚が行われていない場合において、夫婦のいずれか一方の訴訟提起に基づき、裁判所が判決または和解によって婚姻を解消させる離婚。第三者として裁判官が加わり、強制的に行う離婚形式のため、一般的に協議や調停でも解決が困難な場合に行われる。また、裁判離婚を行うには、一定の原因(民法770条1項各号の「法定離婚事由」)があることが条件となる。
協議離婚のメリットとデメリット
次に、協議離婚のメリットとデメリットを解説する。夫婦間の状態や希望する条件によっては、他の離婚形式が適している場合もあるため、慎重に判断する必要がある。
メリット
協議離婚のメリットは、手続きが簡単であること。基本的に、当事者間で合意さえできれば、離婚届を作成し提出することで手続きが完了する。離婚の理由を問わず、費用も抑えることができるのもポイントだ。また、離婚条件の決定も夫婦間で行うため、相手との交渉次第では、他の離婚形式よりも有利な条件で離婚できる場合がある。
デメリット
夫婦間での話し合いが進まず、離婚条件も曖昧になりがちな点が協議離婚のデメリット。そもそも離婚を検討している時点で、「相手と話したくない」「感情的になってしまう」といった状態の夫婦も多いため、協議離婚が適していない場合がある。また、離婚するか否かという点に話が集中してしまい、離婚条件の決定を忘れてしまうことも少なくない。冷静に話し合うことができそうかを見極め、場合によっては弁護士への相談や他の方法を検討することが重要だ。
協議離婚の進め方
ここでは、協議離婚の手続きの流れを解説する。手続きを円滑に進めるためには、相手に対する否定的な言動を避け、冷静に話し合うことが大切だ。
離婚する意思を伝える
まずは、離婚したい旨を相手に伝え、合意に向けた話し合いを始める。離婚を切り出す前に、離婚後の住居や荷造りについても検討しておきたい。
離婚条件について協議
離婚することについて合意できた場合は、次に離婚条件を定める。財産分与や慰謝料、子供がいる場合は親権や養育費などが主な離婚条件となる。あらかじめ自身の希望を明確にしておくと、条件のすり合わせがスムーズに行える。また、交渉が難航しそうなときや、請求金額の決め方などが分からない場合は、弁護士に相談すると交渉を有利に進められる可能性がある。
離婚協議書の作成
次に、離婚協議書を作成する。協議離婚書とは、話し合いで決めた内容を書面にしたもの。離婚協議書を作成しておくことで、離婚条件を明確化し、条件が守られなかった場合の証拠として主張することが可能となる。
なお、離婚協議書を公正証書(公証人によって作成される書証)で作成しておくと、離婚条件について違反があった場合に、強制執行手続などをスムーズに行うことができる。
離婚届の提出
最後に、離婚届を市区町村に提出する。提出先は、夫婦の本籍地または住所地の市区町村役場。本籍地以外の役所に提出する場合は、戸籍謄本(全部事項証明書)を添付する必要がある。
文/oki