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配達中に交通事故に遭った場合、労災保険は適用される?

2021.10.14

最近、新型コロナウイルス感染症の影響などに伴い、Uber Eatsや出前館など、デリバリーサービスの配達員として働く方が増えました。

デリバリー配達員は、「すきま時間」に行うことができる副業として人気ですが、配達中に交通事故に遭ってしまうリスクに注意が必要です。

もしもデリバリーの配達中に交通事故に遭ってしまった場合、通常の会社員やアルバイトとは異なり、労災保険から補償を受けられないことがあります。

今回は、デリバリー配達員に対する労災保険の適用有無や、労災から補償を受けられない場合の対処法などを解説します。

1. デリバリー配達員は「業務委託」|原則として労災保険の対象外

デリバリーサービスの配達員は、会社から雇われている(雇用)のではなく、配達の「業務委託」を受ける立場にあるのが一般的です。

雇用と業務委託の大きな違いは、会社の指揮命令下にあるかどうかの点にあります。

雇用の場合は、会社からの業務指示があれば、契約の範囲内かつ合理的な指示である限り、基本的に従わなければなりません。

会社員・契約社員・パート・アルバイトなどは、会社から雇用されている立場にある労働者です。

これに対して業務委託の場合は、会社からの発注業務を遂行する方法は、受注する側の裁量に委ねられています。

つまり、契約内容に従う限り、どのような方法で業務を遂行してもよいのです。

デリバリー配達員のほか、一般に「フリーランス」と呼ばれる方々は、この「業務委託」によって働いています。

業務委託は、会社から縛られない分、雇用よりも自由で恵まれた立場に見えるかもしれません。

しかしその反面、契約の打ち切り等について法規制がほとんど及ばないなど、安定性の面では雇用に比べて劣ります。

労災保険についても、会社に雇用されている労働者は一律対象となりますが、業務委託で働く方は、原則として対象外です。

そのため、業務委託で働くデリバリー配達員は、仮に配達中に交通事故に遭ったとしても、労災保険から補償を受けることは原則できません。

2. デリバリー配達員も労災保険への「特別加入」が可能

労災保険から補償を受けられないことが不安なデリバリー配達員の方は、労災保険への「特別加入」を検討しましょう。

2-1. 労災保険への「特別加入」とは?

労災保険の特別加入制度は、個人事業主などの労働者以外の方が、一定の要件を満たす場合に労災保険への加入を認める制度です。

労災保険に特別加入することで、通常の労働者(会社員・アルバイトなど)と同様の補償を受けることができます。

配達中の交通事故が心配なデリバリー配達員の方は、特別加入によってある程度リスクを抑えられるでしょう。

2-2. デリバリー配達員は2021年9月から特別加入の対象に

デリバリー配達員は、2021年9月1日から労災保険への特別加入の対象となりました。

デリバリー配達員が対象に追加された背景には、デリバリーサービスに従事する方が増加したことや、配達中の交通事故が頻発したことなどの事情があります。

なお同じタイミングで、以下のようなITフリーランスの方も、新たに特別加入の対象に追加されました。

・ITコンサルタント
・システムエンジニア
・プログラマー
・データサイエンティスト
・Webデザイナー
・Webディレクター
など

参考:令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります|厚生労働省

2-3. 特別加入の保険料は自己負担となることに注意

通常の労働者(会社員・アルバイトなど)であれば、労災保険料は会社が全額負担します。

これに対して、労災保険に特別加入したデリバリー配達員の方は、労災保険料を自己負担しなければならないので注意しましょう。

デリバリー配達員の年間労災保険料は、年間賃金(給付基礎日額×365)の1.2%です。

たとえば、年間300万円をデリバリー配達で稼ぐ方であれば、単純に計算して3万6000円が労災保険料となります。

高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、交通事故などのリスクと保険料を天秤にかけてご判断ください。

3. 労災によって補償を受けられない場合の対処法は?

労災保険に特別加入していない場合は、デリバリー配達中に交通事故に遭っても、労災保険から補償を受けられません。

この場合、交通事故の加害者に対して、直接損害賠償を請求しましょう。

加害者が任意保険に加入している場合には、保険会社との示談交渉が発生します。

保険会社は、独自の基準に基づき、被害者にとって不利な示談金(保険金)を提示してくるケースが多いです。

そのため、保険会社の言い分を鵜呑みにせず、適正な損害賠償額を見積もったうえで請求を行いましょう。

加害者側の保険会社と対等に示談交渉を行うためには、弁護士のサポートを受けることが有効です。

配達中に交通事故に遭ってしまい、労災保険からの補償も受けられずに困っている方は、弁護士への相談をご検討ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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