2021年10月1日、東海道・山陽新幹線に新しいサービス「S Work車両」がスタートした!その名のとおり、ビジネスパーソン向けに試行導入された新サービスで、東海道・山陽新幹線を走る全ての「のぞみ」に設定されている。そのサービスの全容を解説しよう!
「S Work車両」と「EX予約・スマートEX」
今回試行を開始した「S Work車両」は、「のぞみ号」の7号車に設定された、ビジネスユースに便利な空間が用意されたサービスだ。
「S Work車両」の利用には、東海道・山陽新幹線のウェブ予約サービス「EX予約」か「スマートEX」から予約する必要がある。
この「EX予約・スマートEX」は東海道・山陽新幹線に乗車する機会が多いならぜひとも入会しておきたいサービスで、どちらもオンラインで列車が予約でき、通常の紙のきっぷより通年で安いうえ、一度購入しても、改札通過前や指定列車の発車前であれば何度でも列車を変更できるのも便利だ。
「スマートEX」は年会費無料で、対応するクレジットカードブランドであれば、すでに自分が持っているクレジットカードで入会でき、すぐに利用できる。
一方、「EX予約」は専用のクレジットカードへ入会が必要なのと年会費1100円がかかるが、「スマートEX」よりも割引率が高く、さらに複数回乗車するとグリーン車にアップグレードできるサービスがある。
年間どのくらい東海道・山陽新幹線を利用するかでどちらのサービスにするかチョイスするのがおすすめだ。
「S Work車両」は「N700S」以外でものぞみ号全列車で設定されている。ただし、一部サービスは「N700S」のぞみ限定なので要注意
「S Work車両」では、車内でノートパソコンを広げて仕事を整理したり、座席で通話、Web会議などがしやすい環境が整えられている。
といっても、通常の席でもノートパソコンは使用できるし、実はあまり知られていないが東海道・山陽新幹線では座席での携帯電話の通話はそもそも「NG」とされてはいない。車内放送でも「マナーモードに設定の上、周りへご迷惑にならないようにご協力を」と案内されており、「通話はご遠慮ください」といった案内はない。
とはいえ、ほかの鉄道では車内での通話は「ご遠慮を」というのが一般的なので、いくら東海道・山陽新幹線のルールではマナー違反ではないとはいえ、自席で通話をするのはやっぱり周りの目が気になるし、トラブルの元にもなりかねない。
そこで「S Work車両」では、「モバイル端末などを気兼ねなく使用して、仕事を進めたいお客様向けの車両」をコンセプトにして、PCのタイピング音や携帯電話の通話などをビジネスシーンにおける最低限の「音」をお互いに「気にしないで」利用することができる車両になっている。
なお、車内販売などは通常の「のぞみ」同様に利用可能で、「S Work車両」だけにかかる特別な追加料金もない。なお、「こだま」・「ひかり」で運行される場合は7号車も通常の普通車として販売される。
N700Sの7号車「S Work車両」。一見、通常の普通車と変わらないが……
N700S限定!お役立ちアイテムの無料貸し出しも!
さて、そんな「S Work車両」。最新鋭の「N700S」で運行されるのぞみ号については、よりサービスが充実!
東海道・山陽新幹線の車内では現在もフリーWi-Fi接続サービスが提供されているが、「N700S」の7号車(S Work車両)と8号車(グリーン車)には「S Wi-Fi for Biz」というちょっと異なるWi-Fiサービスがスタート。
これは通常30分ごとに再接続が必要な既存の車内Wi-Fiサービスと異なり、接続時間は無制限。回線スピードは通常のものと変わらないものの、アクセスポイントが2倍になっており、より快適に安定して使用できるようになっている。
さらに、車内限定コンテンツとして「dマガジン」の読み放題サービスなども提供される。なお、「S Wi-Fi for Biz」は車両改造の関係で、随時利用可能列車が増えていく予定だ。
また、同じく「N700S」の「S Work車両」限定で、車内での仕事に役に立つビジネスサポートツール(膝上クッション、簡易衝立、PC用ACアダプタ、USB充電器、小型マウスなど)も無料でレンタルOK!(各アイテムは数量限定)
実際に乗ってみた「S Work車両」!
今回実際に短い時間ながら「S Work車両」に乗車してきたので、各種サービスの使用感をチェックしてみた。
まず、気になる「S Wi-Fi for Biz」だが、接続はいたってシンプルスムーズで、ほかの公衆Wi-Fiと遜色ない感触。
接続後、「LINE」を使用して友人とビデオ通話をしてみたが、若干映像がもたつくシーンはあったものの、接続が途切れることはなかった。
「N700S」は普通車でも全席にコンセントが装備されているので、電源については不安ない。
ビジネスサポートツールは、膝上クッションを使ってみたが、各席にしっかりとしたテーブルもあるのでそこまで活躍しないかなと思いきや、想像以上の安定性で意外にも使い心地がよかった印象だ。
うっかり忘れた時に助かるPC用ACアダプタ(USBタイプC給電タイプのみ)
ただ、ちょっぴり残念なのが「S Work車両」を最大限に活用できるのは「のぞみ」のなかでも「N700S」で運行される列車だけという点。
「N700S」の「のぞみ」はこちらで確認できるものの、実はここで公開されている固定運用以外にも「N700S」の「のぞみ」は運行されている。できれば当日でもいいので、自分が乗る「のぞみ」が「N700S」かどうかが事前にわかると嬉しいところだ。
変更自在の「EX予約・スマートEX」といえども、改札を通過してしまうともう、ほかの列車の指定席へ変更できない。「S Work車両」を利用せずとも、今までの「N700A」より快適な車内が魅力の「N700S」だけに、JR東海さん、ぜひともシステム改善をお願いしまーす!!
「S Wi-Fi for Biz」のコンテンツ画面。沿線情報から車内エクササイズまで!
駅でも新サービス
東海道新幹線の駅でも新サービスがスタートしている。
東京、名古屋、新大阪駅の各駅待合室には「コンセントポール」が設置され、モバイル機器の充電ができるようになった。さらに半個室タイプの「ビジネスコーナー」も誕生! コンセントやライト、大きめのデスクが完備されている。
東京駅に登場したパッセンジャーワークスペース。銘板やブース番号のアルミ材は実は引退した700系新幹線に使用されていたアルミ材をリサイクルして使用されている
東京駅待合室の「コンセントポール」。無料で自由に使用できる。
コロナ禍で変わっていくビジネスシーン。今回の「S Work車両」の試行でどのような「新幹線」スタイルが誕生していくのか注目だ!
取材・文/村上悠太