健康のために食生活を改善したいと考えている人には、『稗(ひえ)』がおすすめです。どのような効果が期待できるのか、栄養成分やメリットを紹介します。毎日の食事に取り入れやすいように、おいしい食べ方についてもチェックしましょう。
稗(ひえ)とはどんな食べ物?
稗が古くから食べられていることは知っていても、具体的にどのような食べ物なのか説明できない人もいるのではないでしょうか?
そこで、稗がどのような食べ物なのか、特徴や日本人との関わりを紹介します。
イネ科の作物の一種
稗は、高さが1~2mになるイネ科の作物です。稲に似た細長い葉が特徴で、夏には円柱の形をした穂がつき、小さい実がなります。この実が食用とされているのです。
高冷地でも育つほど寒さに強いのも特徴で、『冷え』に耐えられることから稗と呼ばれるようになったともいわれています。
また、荒れた土質でも育つため、稲や麦が不作のときの『救荒作物』としても重宝されてきました。
縄文時代から広く親しまれる
稗は、縄文時代に中国から伝来したという説と日本が起源とする説がありますが、日本最古の穀物の一つとされています。
縄文時代は現代よりも暖かい気候だったことから、食事は豊かだったと考えられています。縄文人たちは、魚・貝類・海藻類・イノシシ・シカなどを食べていました。
同時に野菜類や穀類の栽培も始まり、後期には稲作も始まっていたと考えられています。
五穀米の一つとして知られる
古くから食べられてきた穀類は『五穀米』と呼ばれています。日本書紀や古事記にも記載がある五穀は5種類の穀物のことで、『稗』『粟(あわ)』『米』『麦』『豆』を指します。
米が主流になってからは、生産量の少ない稗や粟などは『雑穀』とひとくくりにされることもありますが、かつては五穀として大切にされていました。
その証しとなるのが、飛鳥時代に始まり現代にも伝えられている五穀の収穫を祝う『新嘗祭(にいなめさい)』です。毎年11月には、皇居の宮中三殿や全国各地の神社で行事が行われています。
稗の栄養成分と食べるメリット
稗は、なぜ健康によいといわれているのでしょうか?栄養成分や食べるメリットについて見ていきましょう。
食物繊維が豊富
稗には、100g当たり4.3gと白米よりもはるかに多い食物繊維が含まれています。
食物繊維は、腸内環境を健康な状態に保つために欠かせない成分です。小腸では消化・吸収されずに大腸にまで届き、腸の働きを活発にするため、便秘予防になるでしょう。
また、血糖値の上昇を抑制する働きや、血液中のコレステロールを低下させる働きなどがあることも分かっています。
厚生労働省が定めた2020年度の1日当たりの食物繊維の目標量は、18~64歳の男性で21g以上、女性で18g以上です。しかし、近年の食物繊維の摂取量は減少傾向にあり、1日当たりの平均摂取量は14g前後といわれています。
稗を日々の食事に取り入れることで、不足分を補えるでしょう。
参考:穀類/ひえ/精白粒 – 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等|文部科学省|食品成分データベース
参考:食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
バランスよくミネラルを含んでいる
ミネラルは互いの働きや吸収に影響し合う特徴があるため、バランスよく取ることが大切なポイントです。稗には、カルシウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などのミネラルがバランスよく含まれています。
中でも稗には、細胞の生まれ変わりや皮膚・骨の発育に欠かせない亜鉛が、白米の約2倍も含まれていることもメリットの一つです。
また、ミネラルは不足すると、さまざまな体調不良につながるとされています。ミネラルは体内で作られないため食事から取らなければいけません。
バランスよくミネラルを含んでいる稗は、ミネラル補給にぴったりの食材といえるでしょう。
稗のおいしい食べ方
「毎日の食事は、おいしく食べたい」と思うものではないでしょうか。稗をおいしく食べる方法を紹介するので、実際に調理するときの参考にしましょう。
他の雑穀や米と混ぜて炊く
簡単においしく食べられるおすすめの方法は、『他の雑穀や米と混ぜて炊く』ことです。
近年は、スーパーなどで複数の穀物がミックスされたものが販売されています。すでに稗が含まれているタイプもあるので、好みの量を白米に混ぜるだけで簡単に栄養豊富な雑穀米が作れます。
複数人で食べるときに、自分以外は白米にしたいという場合もあるでしょう。そのようなときは、炊いた白米に後から稗を加える方法が便利です。
稗は1/2カップに対して120mlの水を加え、ラップをして電子レンジで5分程度(600wの場合)加熱するだけで簡単に炊けます。好みの量を白米に加えて食べましょう。
水の量を多くしておかゆにするのもおすすめです。刻んだわかめや、たたいた梅を加え、隠し味に醤油を加えると風味豊かなおかゆになります。
炊いて他の料理に混ぜる
炊いた稗を他の料理に混ぜる食べ方もあります。例えば、ベチャっとしがちなチャーハンも稗を使うとパラパラした食感に仕上がります。
固めると白身魚のような食感になるので、揚げ物にするのもよいでしょう。コロッケやメンチカツなどの揚げ物に混ぜてもおいしく食べられます。
稗は水分量をアレンジするだけで、さまざまな食感を楽しめるのも特徴です。3倍の水で炊けばクスクス風になり、2倍でマッシュポテト風になります。10~12倍でシチュー風になるので、他の野菜と一緒に煮込んで食べることも可能です。
構成/編集部