■茂木雅世のお茶でchill out!
誰かからお茶を貰うととてもあたたかい気持ちになる。
友人が「この間行ってきたから」とその土地のお茶を買ってきてくれたりしたなら、私はもうそれこそ大切に少~しずつ、噛みしめるように飲んでいる。
その場所でしか買えないからということに加えて、買ってきてくれた人の気持ちが何よりうれしいからだ。
昔は様々なシーンでお茶を贈ることが多かったが、最近ではすっかり少なくなってしまい、正直、寂しい。
そんな“お茶を貰う”“お茶を贈る”というあたたかいやり取りを、新しい形で表現するプロジェクトが佐賀県嬉野市で立ち上がった。
その名もグリーンレタープロジェクト。
嬉野市の若手茶農家16人が集まり、未来の嬉野のために、そして子供たちのためにと始めた取り組みだ。
「就農してから今年で15年目になりますが、就農した頃に比べて、周りの茶農家も減りました。いいお茶を作っても評価されなかったり、モチベーションが保てないという声もあります。お茶農家がいいお茶をつくることだけに集中できるような未来をつくりたいという想いからこのグリーンレタープロジェクトがスタートしました」
そう語るのは、プロジェクトの代表であり、お茶農家でもある三根孝之さん。
3年程前にお茶をお便りとして贈る(送る)“お茶より”という取り組みをスタートさせ、その後も保育所などで、無地の袋に入ったお茶を無料で配布して、大切な人にお茶を贈ろうというワークショップを開催するなど、お茶と人とをつなぐ様々な企画を形にしてきた。
嬉野は山間地のお茶畑が多く、作業としては手間がかかるところが多いそうだ。
しかし、大量生産は出来ないけれども、一方で嬉野茶ならではの魅力というものもあり、「嬉野茶が大好きだ」と公言する人も多い。
この、グリーンレタープロジェクトは、そんな嬉野のお茶をより多くの人に知ってもらうために、嬉野を訪れた人が、その時に出会ったうれしの茶を、その人から大切な人に贈ってもらい、広めてもらおうというもの。
コンセプトを伝え、呼びかけたところ、16人もの若手茶農家がプロジェクトに参加することになったという。
それぞれ、自分の作るお茶の中で一番自信があるお茶を本プロジェクトの商品として出しているので、各農家ごとにお茶の種類も異なっている。
おすすめの淹れ方や生産者からの一言などもパッケージの裏面に記載されており、読んでいるだけでワクワクとドキドキが止まらない。
中でもとりわけグッときたのが、お茶のパッケージ。
一見すると、カラフルでかわいいイラストに見えるが、これは、佐賀出身のアーティスト・ミヤザキケンスケさんとともに、このプロジェクトに参加しているお茶農家の子供たちが描いた絵だという。
良く見ると急須が細部までしっかり描かれていたり、お茶のある幸せな風景ばかりが描かれていて、子供たちのお茶と家族への愛が感じられて、じーんとくる。
この全20種類のお茶の中から、相手に飲んでほしいお茶を選び、専用の郵送パッケージに入れ、メッセージを書いて、そのまま贈る(送る)ことが出来るのだ。
また同封されるポストカードにも、茶畑や作り手をより身近に感じられる工夫がされている。
ポストカードには各農家の茶畑の写真が使用されていて、裏面には、茶園の情報やSNSアカウントの掲載もされている他、生産者の顔写真と「ふるさと嬉野への想い」「加工で工夫していること」「これから挑戦したいこと」といった質問への回答が書かれているのだ。
全ての茶畑を巡り、話を聞くことは容易ではないが、こういう形で作っている人の人柄や茶畑の雰囲気を少しでも感じることが出来るのは、お茶好きとしてはたまらなく嬉しい。
そしてなにより、読んで、想いを馳せながらお茶を飲むと、ありふれたお茶の時間が少し特別な時間になる。
旅の想い出を一緒に共有することが出来なかったとしても、こういう形でお茶とその土地の雰囲気をシェアできるというのは、贈る側はもちろん、受け取った側にとっても記憶に残る嬉しい体験になりそうだ。
嬉野を訪れた際には、是非、大切な人にお茶を贈ってみてはいかがだろうか。
グリーンレタープロジェクト→ https://greenletter.stores.jp/
茂木雅世 もき まさよ
煎茶道 東阿部流師範・ラジオDJ
2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまう活動を開始。現在ではお茶にまつわるモノ・コトの発信、企画を中心にお茶“漬け”の毎日を過ごしている。暮らしの中に取り入れやすいサステナブルアイテムを探求することも好きで自称“アットDIMEのゆるサステナブル部部長”
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