体の部位を表す『鳩尾』は、正しく読めない人が多い漢字の一つです。読み方と合わせて、由来についても紹介します。どの部位で、どのような特徴があるのかについても確認しましょう。知っておくと役立つ体の部位を表す難読漢字についても触れています。
「鳩尾」は何と読む?
よく知られている体の部位を表す漢字でありながら、読めない人が多いのが『鳩尾』です。まず、読み方や由来を見ていきましょう。
読み方は「みぞおち」
『鳩尾』は、『鳩(ハト)』と尻尾の『尾』が組み合わさっているので、『はとお』と読み間違える人が少なくありませんが、正しくは『みぞおち』です。音読みにして『きゅうび』と読む場合もあるようです。
『鳩尾』には、『水月(すいげつ)』や『心窩(しんか)』という別名もあります。
ちなみに、『鳩』は『九』と『鳥』が組み合わさった漢字が用いられていますが、『九』はハトの鳴き声の『クークー』を表しているとされています。
由来は形が鳩の尾に似ているから
体の部位の『鳩尾』が、なぜ『鳩の尾』と書くのか不思議に感じている人もいるのではないでしょうか?
一見何の関係もないように思えますが、実は『鳩尾』が鳩の尾のような形状をしていることが由来とされています。
また、『みぞおち』は『水落ち(みずおち)』が変化した言葉です。水を飲んだときに、水が落ちるような感覚のある部位であることが名前の由来とされています。
「鳩尾」はどのような場所?
『鳩尾』は、上腹部の中心部にあるへこんだ部分です。どのような特徴があるのでしょうか?
衝撃を受けると強い痛みがある
『鳩尾』は急所の一つで、衝撃を受けると強い痛みを感じます。これは、鳩尾の内部に多数の神経が走っており、敏感な部位であるためです。
また、強い衝撃で横隔膜の動きが一瞬止まることで呼吸困難になったり、失神したりすることもあります。
子どもの頃に友達と遊んでいるときやスポーツをしているときに、鳩尾に人の体や物がぶつかり、激しい痛みで一瞬動けなくなった経験がある人もいるのではないでしょうか?
ボクシング・空手・ムエタイなどの格闘技や武道では、鳩尾を狙う技術が重視されています。同時に、急所を守る技術もきちんと訓練されています。
胃腸の不調が表れやすい
体調が優れないと、さまざまな部位に不調が表れることが珍しくありません。胃腸の不調は、鳩尾に表れやすい傾向があります。
例えば、暴飲暴食です。油っこいジャンクフードを食べ過ぎたり、スパイシーで刺激の強い食品を食べ過ぎたりすると胃腸に負担が掛かることがあります。
適量を超えたアルコールや炭酸飲料、夏場の冷たいものの飲み過ぎなども原因になります。
また、ストレスがたまると自律神経が乱れ、鳩尾の痛みにつながることも珍しくありません。食あたりや胃潰瘍などの胃腸の病気が、鳩尾の痛みを引き起こすこともあるようです。
参考:胃が痛い・みぞおちが痛い・背中が痛い原因|にしやま消化器内科
東洋医学のツボの一つ
『鳩尾』は、東洋医学の『気』の概念に基づくツボの一つとして認識されています。
息を吐きながら、両手の人差し指・中指・薬指で『鳩尾』を10秒程度ゆっくり押しましょう。精神疲労・イライラ・食欲不振・不眠の改善が期待できるとされています。
ただし、強く押し過ぎると気分が悪くなることもあるため注意が必要です。
東洋医学では、体内の『経絡(けいらく)』を通って『気』が正常に巡っているのが健康な状態と考えられています。経絡には『経穴(けいけつ)』と呼ばれる出入口があり、これがツボです。
ツボを刺激することで、気の流れをよくする働きがあるとされているのです。
ほかにもある難読漢字で表す部位
体の部位を表す漢字には、知らないと読めない漢字がほかにもあります。難読漢字を紹介するので、覚えておくと役に立つでしょう。
蟀谷
『蟀谷』は、耳の上の髪の生え際部分にある『こめかみ』のことです。
名前の由来は『米噛み』で、米を噛むと動くことが由来とされています。米以外でも動きますが、米が主食である食文化が関係しているのかもしれません。
『蟀谷』という漢字が使われているのは、中国語をそのまま当てたためだと考えられています。しかし、『蟀』はコオロギやキリギリスを表す漢字で、なぜ『蟀』と『谷』を組み合わせた漢字が蟀谷を意味するのかは不明です。
靨
『靨』は、『えくぼ』と読みます。個人差がありますが、笑うと頬にでる小さなくぼみのことです。チャーミングなイメージがあるため、漢字の印象と結び付かないと感じる人もいるのではないでしょうか。
靨は、『笑う』と『窪み(くぼみ)』を合わせて『笑窪』と表記されることもあります。こちらの方が言葉の意味を推測しやすいでしょう。
脹脛
『脹脛』の読み方は、『ふくらはぎ』です。足の脛(すね)の後ろ側のふくらんだ部分のことです。
『脹れた(ふくれた)』と『脛(すね)』が組み合わさっているので、漢字の意味が分かった人は簡単に推測できたかもしれません。
なお、脹脛がつることを『こむら返り』と言いますが、なぜ『こむら』という名称が使われているのか不思議に感じたことがある人もいるでしょう。
実は、『脹脛』という名称が使われる前は、『こむら』または『こぶら』と呼ばれていたためです。由来ははっきりと分かっていませんが、『こぶ』のように脹れているが転じて『こむら』になったのではと考えられています。
構成/編集部