iPhone 13シリーズではカメラ性能の刷新が焦点となったが、そのなかでも注目を集めたのが「シネマティックモード」だ。スマートフォンで映画やドキュメンタリー映像のような印象的な表現を可能にする同機能の詳細を紹介しよう。
上の動画は「iPhone 13 Pro Max」の広角カメラにて撮影した、シネマティックモードによる動画だ。周囲の背景がボケることで、被写体により注目を集めることができる。これまでのスマートフォンでは難しかった映像表現だ。
このようなボケを活かした動画撮影には、通常は大きなイメージセンサーを搭載したカメラと被写界深度の浅いレンズを組み合わせる必要がある。しかしシネマティックモードではiPhone 13シリーズに搭載された「A15 Bionic」プロセッサの機械学習アルゴリズムが、被写体と背景を検出し分離。そして背景だけに、ボケ効果を施すのだ。
シネマティックモードは人物だけでなく、ペットや物体にも適応できる。通常の人物撮影だけでなく、YouTubeやオークションに出品する商品撮影などでも活躍してくれることだろう。
ピント位置は自由自在
https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/09/apple-unveils-iphone-13-pro-and-iphone-13-pro-max-more-pro-than-ever-before/
映画ではピント位置を別の人物へと移動することで、聴衆の注意を移動させる「ピント送り」というテクニックがある。シネマティックモードでも同様のピント送りが利用可能で、フレーム内の人物の顔や体の向きの変化を検出することで、ピントをあわせる対象が自動的に移動する。
さらに撮影後でも、iPhoneの写真アプリやiMovieアプリからピントの位置やボケ効果の強さを変更することが可能だ。この機能は近日中に、macOSのiMovieとFinal Cut Proでも利用できるようになる。フィルム時代のシネマカメラでは不可能だったピント位置の変更が、手のひらサイズのスマートフォンでできるという事実は衝撃的だ。
シネマティックモードの動画は、明るさの表現が拡張された映像規格「ドルビービジョンHDR」によって録画される。高画質と印象的な映像表現を両立させたのが、iPhone 13のシネマティックモードなのだ。
iPhone 13ユーザーならぜひお試しを
https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/09/apple-introduces-iphone-13-and-iphone-13-mini/
このように動画撮影の表現を大幅に広げるシネマティックモードだが、ありがたいことに上位モデルのiPhone 13 Pro/Pro Maxだけでなく、iPhone 13/13 miniでも利用できる。なお、同機能が利用できるのは広角カメラと望遠カメラだけで、超広角カメラでは利用できない。
iPhoneではiPhone 7 Plusから、ソフトウェア処理で静止画にボケ処理をほどこす「ポートレートモード」が利用できていた。今回のシネマティックモードは、同様の機能を動画撮影にも応用したものといえる。
静止画におけるポートレートモードは数多くのAndroidスマートフォンでも利用できるが、動画におけるポートレート撮影が利用できるスマートフォンは少ない。このシネマティックモードを利用するためだけでも、iPhone 13シリーズを購入する価値があるのではなかろうか。
文/塚本直樹