【連載】もしもAIがいてくれたら
【バックナンバーのリンクはこちら】
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第19回:iPhone13はカメラの進歩はすごいけど、AIアシスタント「Siri」はどうなっていくのだろう
「マッチングアプリ」は需要増
秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんのご結婚が世間を賑わせています。
お二人のお立場だからこそ注目を集めているというのはもちろんあるでしょう。しかし、私たち民間人にとっても結婚は人生の一大イベントです。この世でたった一人の最高の人とめぐり会いたい――そう思う人が少なくないからこそ、お二人の姿勢に関心が集まるのかもしれません。
自由な出会いの場が少ないであろう皇族と比べれば、民間人に出会いのチャンスは多いでしょう。ですが、コロナ禍で明らかにそのチャンスは減っています。昔は、合コンなど飲み会に参加することで出会いがあったりもありえましたが、リアルな場で出会うことは困難な世の中になってしまいました。
厚生労働省が2021年6月に発表した2020年の人口動態統計によると、婚姻件数は戦後最少の52万5490組(概数)で、コロナ禍前の2019年より1割以上減少しています。出会い自体が少ないのか、結婚を先延ばししているだけなのかはわかりませんが、明らかに出会いの機会は減っていますよね。
そこで需要が増しているのがマッチングアプリです。
リクルートブライダル総研の『婚活実態調査2021』によると、婚活サービスを通じて結婚した割合が3年連続過去最高を更新し、婚姻者のうち、婚活サービス利用経験者は、2017年は15.6%でしたが、2019年には30.4%で、約4人に1人が利用経験あり、ということです。特に、「マッチングアプリ」などのオンライン系婚活サービスの利用経験率が高まっており、コロナ禍で、直接相手と会わずに相手探しができる婚活ツールとして定着しています。
全てのマッチングアプリを試せているわけではないので、ここで書くことは、私が実際に登録したことがある某マッチングアプリの利用経験に基づくものになります(記事を書くために登録したわけではないことを念のため申し添えます)。マッチングアプリに登録したといっても、恥ずかしくないと思われるほど、当たり前の選択肢になっていると信じています。
「顔認証AI」はすでに使われているけれど……。
マッチングアプリは、登録している会員のプロフィール情報をもとに、何らかの形で会員同士をマッチングしているようです。
大手のアプリになると、登録している人が多いため、全員を確認することは不可能です。何らかの方法で目に触れた相手としか出会えないので、きっとプロフィールに書く内容が重要なのだろうと思いますが、ターゲット年齢と趣味だけで提案されてくる相手では難しいのではないかと思います。やはり、第一印象が入口なので、顔が好みかどうかは重要です。
顔認識能力が高いAIの力を使って、例えば、好みの異性の顔の写真を登録すると、その印象に近い顔の相手を提案していただけるとよいと思いましたが、すでにそのようなサービスはあるようです。いいね!を押した相手と似た顔の人をレコメンドしたりするようです。好きな芸能人の写真を上げてしまうと、詐欺に遭う可能性が高まるのではないかと思いますし、過去に実際に好きだった人の写真を登録しても問題なのかもしれないので、アプリに登録している人同士の了解のもと、というのが妥当なのでしょう。
マッチングサイトには詐欺師も登録しているようです。モデルのような写真で、リアルに会うことが困難な遠隔地に住んでいる設定のことが多いという話。実際に詐欺に遭って、一度も会っていないのに500万円も騙し取られたという方からの話を耳にしたことがあります。
男女間のチャットのやり取りをAIに監視させて、詐欺の可能性が高いときに警告を出す、といったことがありえます。ただし、詐欺師は、すぐに他のアプリに誘導してやり取りしようとするようなので、実際に会うまで、マッチングアプリ内でのやり取りを継続する必要があるでしょう。
逆に、詐欺師側がAIを使っている可能性もあります。一生懸命やり取りしている相手が、実はAIによるボットだった、ということもあり得ます。
バーチャルな世界は、AIが活用されやすいので、これからもいろいろなAI活用が登場しそうです。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。