欧州車に比べて長らく、走行性能で劣ると言われ続けた日本車。しかし、1980年代になると欧州列強に、ハンドリング性能で勝るとも劣らないクルマが続々と登場していた。
ホンダはF1復帰に伴い、世界でスポーツイメージの強いクルマを発表し、その評価を高めていた。
そんな時代の大きなうねりの中で、実に個性的なクルマが生まれていたことをご存じだろうか?
それが、ホンダ「アコード・インスパイア」と兄弟車の「ビガー」だ。
ホンダ「アコード・インスパイア」
ホンダ「アコード・インスパイア」(リア)
ホンダ「ビガー」
ホンダ「ビガー」(リア)
両車は1989年10月12日より発売され、ホンダ「アコード・インスパイア」はクリオ店、ホンダ「ビガー」はベルノ店で扱われた。
FF車でメルセデス・ベンツやBMWといった欧州FR勢に対抗しようと試みた、両車の高い志について振り返ってみたい。
ホイールベースは2805mm。でも5ナンバーサイズに収まるホンダ「アコード・インスパイア」
ホンダ「アコード・インスパイア」と「ビガー」の基本部分はほぼ同一なので、ここではホンダ「アコード・インスパイア」を中心にご紹介していく。
ホンダ「アコード・インスパイア」最大の特徴は、5気筒エンジンを縦置きし、FFミッドシップとしたことだろう。
FFミッドシップとはエンジン、トランスミッション重心を前車軸後方に置き、FFとして理想的な前後重量配分を図る考え方だ。
エンジン、トランスミッションを縦置きにして、デフギヤをエンジン中央の左側に配置。ミッションからの出力はエクステンションシャフトにより、デフギヤに伝達する。
ドライブシャフトはエンジンの下を通すのではなく、クランクケースを貫通させるというのもユニーク。エンジン自体は35°傾斜させて配置することで、低重心化、低ボンネット化も図られている。
ホイールベースは2805mmと長く取り、その結果、フロント荷重60%前後のFF車として理想の重量配分を実現した。
ハンドリング性能向上のためでもあるFFミッドシップだが、これまでのFF車では想像できなかった美しいプロポーションを創りだしたのも見逃せない。そのロングノーズながらショートオーバーハングのフォルムはまるで、FR車のように美しい。
しかし、ホンダ「アコード・インスパイア」は全長4690×全幅1695×全高1355mmの〝5ナンバーサイズ〟に収まる。車両重量も1270kgからと、見た目よりずっと軽量に収まっている。
エンジンは総排気量1996cc、水冷直列5気筒縦置SOHCで、最高出力は160PS/6700rpm、最大トルクは19.0kgm/4000rpm。5MTと4ATが組み合わされ、比較的軽量なボディを軽快に駆動した。
心の豊かさとやすらぎを与える上質なホンダ「アコード・インスパイア」の室内空間
機能だけの4ドアセダンとは異なり、このホンダ「アコード・インスパイア」は、ドライバーに真の満足を与えるための空間づくりを目指した。
視認性に優れたメーターや低いアイポイント、ホールド性の良いシート、ドライバーを適度に包み込むインパネ&ドアライニング、そして開放感あふれる広角視界……。ドライバーの感性を満たすコクピットとなっている。
また、4ドアハードトップながら、ラウンドしたリアウインドウ、十分なヘッドクリアランスによって開放感あふれるリア空間も実現。リアシート別体式ピロー、リアクォーターのソフトパッド、リア・インテリアランプなどの快適装備も自慢だった。
ホンダ「アコード・インスパイア」は、「インスパイア」へと名前を変え、「ビガー」は「セイバー」へとチェンジ。最終的には「インスパイア」の名に統一し、2012年9月まで20年以上販売された。
ホンダ「アコード・インスパイア」、初代「ビガー」は中古車で買える?
ホンダ「アコード・インスパイア」、初代「ビガー」は中古車で買えるだろうか? 大手中古車販売サイトで在庫状況を確認してみた。
ホンダ「アコード・インスパイア」の掲載は2021年9月末時点で3台。
最安値は1990年式 走行距離13万6000km 白 4AT AG-iで車両本体価格は65万円
最高値は1991年式 走行距離4万4000km 白 4AT AX-iで車両本体価格は148万円だった。
初代ホンダ「ビガー」の在庫は残念ながらないが、〝3ナンバーサイズ〟に拡大されたビガーは2台掲載されていたので、気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか?
※データは2021年9月下旬時点での編集部調べ。
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文/中馬幹弘