ご家庭でも手軽に様々な造形物を作ることができると、注目を集めている3Dプリンター。金型が不要で、趣味のモノ作りやちょっとした日用品も作ることが可能です。この記事では、家庭用3Dプリンターを選ぶ際に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
3Dプリンターって何? 家庭用3Dプリンターの使い道
3Dプリンターとは、3D(3次元)の設計データを元に、樹脂などの材料を少しずつ積み重ねることで立体造形を行う装置です。
もともとは部品の試作品製作など業務用(工業用)で用いられる高額なものでしたが、特許切れなどを理由に、近年では一般消費者向けの製品も多く登場。一般家庭にも普及しつつあります。
家庭用3Dプリンターでできること
3Dプリンターには後述するように様々なタイプがあり、それぞれ使える素材や作れる物が異なります。
家庭用の3Dプリンターにおいては、フィギュアや模型の製作、オリジナルのスマホケースやインテリア雑貨などの日用品作り、アクセサリー・お菓子・キャンドル製作で活用する“型”作り、釣り用のオリジナルルアー作りなど、幅広い用途で活用できます。
種類ごとに3Dプリンターで作れるものは異なる! 使い方に応じて選びたい家庭用3Dプリンターの選び方
3Dプリンターは、造形方式、機能、使い勝手などを基準に選ぶのがおすすめです。また、造形サイズや積層ピッチに関する知識も身につけておくと良いでしょう。
なかでも造形方式は、3Dプリンターを選ぶうえで最も重要なポイントといっても過言ではありません。それぞれの方式で、使用できる材料(マテリアル)や造形物の仕上がり・耐久性が異なるため、まず「どんなものを作りたいのか」をイメージすることが大切です。
作品の仕上がりにも関わる! 家庭用3Dプリンター選びで知っておきたい造形方式と使用できる材料
3Dプリンターは主に「熱溶解積層方式」「光造形方式」「粉末焼結方式」「インクジェット方式」「粉末固着(接着)方式」の5種類があります。家庭用の3Dプリンターによく用いられているのは「熱溶解積層方式」と「光造形方式」です。
家庭用3Dプリンター選びの基礎知識:初心者におすすめの「熱溶解積層(FDM)方式」
熱溶解積層方式は家庭用3Dプリンターで最も定番で、初心者の方におすすめ。熱で溶かした樹脂(フィラメント)をノズルから押し出しながら積層し造形します。
取り扱いやすく、材料(ABSやPLA樹脂など)を比較的安価に入手できるためコストパフォーマンスも高いです。ただし光造形方式などに比べると仕上がりは粗め。
家庭用3Dプリンター選びの基礎知識:家庭用の定番で作品の完成度が高い「光造形方式」
光造形方式は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂など液体状の樹脂に紫外線を当てて硬化させ、一層ずつ積み上げていきます。
製作に時間はかかってしまいますが、液体樹脂を用いるため表面が滑らかな造形物を作ることができ、複雑な造形物も高い完成度で作りやすいです。ただし材料費が高い傾向にあり、太陽や照明器具の光に当たらないよう配慮するなど取り扱いに注意が必要という面もあります。
家庭用3Dプリンター選びの基礎知識:高精度で色合いのよい造形物を作れる「インクジェット方式」
一般的なプリンターのようにヘッドから樹脂を噴射して紫外線で硬化・積層していく「インクジェット方式」は製作スピードが速く、高精度で色合いのよい造形物を作ることができます。ただし、造形物の耐久性は比較的低めです。
家庭用3Dプリンター選びの基礎知識:金属製造形物の製作も可能な「粉末焼結方式」
「粉末焼結方式」は粉末状の素材にレーザーを照射して焼結させる方式。樹脂以外に金属製の造形物も製作可能で、複雑な造形で耐久性の高いものを作れます。
家庭用3Dプリンター選びの基礎知識:カラー出力が可能な「粉末固着(接着)方式」
「粉末固着(接着)方式」は、石膏やデンプンなどの粉末素材を接着して固めていきます。カラー出力が可能なため、造形後に塗装をする手間が省けます。材料費も安めですが、造形物の耐久性は比較的に低いです。
機能や使い勝手も家庭用3Dプリンターでは要チェックポイント
機能性や使い勝手も3Dプリンターを選ぶうえで重要です。例えば、装置に操作モニターがついている製品は操作しやすくて便利。また、造形物を出力する台座の水平を自動で調整する「オートキャリブレーション」は、3Dプリンターを初めて使う方にはぜひ欲しい機能です。そのほか、操作マニュアルの有無もポイント。
また、造形の成功率を上げるには「ヒーテッド(ヒート)ベッド」があると良いでしょう。ABS樹脂などの材料はすぐに冷めて熱収縮が発生しやすく、造形中に反りなどが起きてしまうことも。ヒーテッドベッドは台座を温めることで熱収縮を抑えてくれます。さらにABS樹脂以外の材料においてもより品質の高い造形がしやすくなります。
家庭用3Dプリンターは大型のほうが良い? 本体サイズと造形サイズについて
造形サイズ(造形が可能なサイズ)は本体の大きさと比例するとは限らないので注意しましょう。
また、最大造形サイズは大きければよいわけではありません。大きいものほど出力に時間がかかり、歪み・反りなどが生じやすくなります。また、材料切れや動作不良、製作物が土台から剝がれてしまうなどのトラブルが起きた時、やり直しのコストもかかってしまいます。
リスク面を考慮すると、大きいものを作りたい時はパーツを分けて出力し、あとから組み立てるのがおすすめです。
精度にも影響するってホント? 積層ピッチは細かいほど造形に時間がかかる
積層ピッチとは、積層する1層あたりのZ軸(上下方向)の厚みを示しています。積層ピッチが細かいほど造形物の密度が高くなるため、強度が増し表面が滑らかになりやすいといった面がありますが、造形には時間がかかります。
また、3Dプリンターの精度には積層ピッチ以外にも、X軸(左右)とY軸(前後)の解像度やプリンターの再現性(データを忠実に再現できるか)など様々な要素が影響します。積層ピッチだけでは判断しきれないことを念頭に置いて、製品を比較しましょう。
なお、出力後に自分で研磨する、コート剤を使うといった作業を行えば、ピッチがさほど細かくなくとも表面がきれいな造形物を仕上げることが可能です。
2021年版! 家庭用におすすめの3Dプリンター4選
続いて、家庭用におすすめの3Dプリンターを4機種ご紹介します。
親子で楽しめるコスパ最強の家庭用3Dプリンター! XYZプリンティング「ダヴィンチ nano w 3Dプリンタ」
3Dプリンターの人気ブランド“XYZプリンティング”の製品は主に、エントリーモデル/スタンダードモデル(初級~中級者向け)/ハイグレードモデルの3種類に分けられます。「ダヴィンチ nano w 3Dプリンタ」はエントリーモデルの1つで、子どもから大人まで3Dプリントを楽しめるよう設計されています。
ガラス製の脱着式プラットフォームを採用するなど使いやすく、378×280×355㎜と小型ボディで重量もわずか4.7kg。3万円以下で購入できるお手軽なモデルですが、完全密閉式構造をはじめ安全性に配慮された設計となっているため、家族で使いたい方にもおすすめです。
Wi-Fi接続に対応した光造形方式の3Dプリンター! Creality「HALOT-ONE(CL-60)LCD 3Dプリンター」
Creality「HALOT-ONE(CL-60)LCD 3Dプリンター」 は光造形方式。120W電源のスーパースポットライトを搭載した新しい光源構造を採用し(波長405nm)、Wi-Fi接続が可能。ワンクリックでファームウェアのアップデートが行えます。
自社開発の光学システムにより光強度分布を均一にし、精度の高いプリントを実現。日本語には対応していませんが、5インチフルカラータッチスクリーンにより直感的に操作しやすいです。
静音仕様で家庭でも使いやすい3DプリンターFLASHFORGE JAPAN「Finder」
FLASHFORGE JAPAN「Finder」は熱溶解積層方式の家庭用3Dプリンターです。日本語対応の3.5インチフルカラータッチパネルを採用しているため、初心者の方でも操作しやすい点が魅力。
家庭での使用を想定して作動音を50デシベルに抑えた静音仕様です。スライド式の造形テーブルはプリント終了後に本体から簡単に取り外すことができ、プラットフォームには樹脂の反りを抑えるため専用ビルドシートが貼ってあります。
【参考】FLASHFORGE JAPAN公式サイト製品詳細ページ
フィギュアづくりにもおすすめ! 印刷精度高めの家庭用3DプリンターANYCUBIC「Photon Mono」
ANYCUBIC「Photon Mono」は、3万円程度で購入できる光造形方式の3Dプリンターです。
光源は15個のUV LEDライトで構成されており、樹脂3Dプリントに最適な405nmの波長のUVライトを均一に当てることで、高い印刷精度を実現しています。さらにZ軸のリニアガイドとスクリューモーターを組み合わせることで、造形物の表面の紋様を軽減。フィギュアなど高い精度を要する造形物を作りたい方にもおすすめの一台です。
※データは2021年9月下旬時点での編集部調べ。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
※製品のご利用、操作はあくまで自己責任にてお願いします。
文/bommiy