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プラモデル教室「ガンプラアカデミア」の担当者に聞く、日本のものづくりの未来を担う子どもたちに伝えたいこと

2021.10.01

BANDAI SPIRITSが10月より実施開始する、小学校高学年を対象にしたプラモデル授業『ガンプラアカデミア』。言わずとしれたガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」を題材に、プラモデルの組み立て体験と配信映像を組み合わせ、“ものづくり”の楽しさと、ガンプラの生産過程やプラスチックのリサイクルなど地球環境問題に対応する“サステナブル”の取り組みが学べる無償の授業パッケージだ。

これは、バンダイナムコグループが立ち上げた『ガンダム』を活用したサステナブルプロジェクト「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」の教育分野における取り組みである「ガンダムエデュケーショナルプログラム」の一環として企画されたもの。プラモデルを組み立てる体験と、BANDAI SPIRITSがプラモデルを生産する工場「バンダイホビーセンター(BHC)」の紹介を通して、工業分野の優れた技術や、持続可能なものづくりのための工夫への関心を強めていくことを目的としている。

パッケージは事前学習(45分×2コマ)・本時(45分×1コマ)・発展学習(45分×1コマ~)を基本とする3部構成となっており、オプションとしてオンラインで生徒が直接バンダイホビーセンターの従業員に質問することができるライブ配信も選択可能。事前学習の中で組み立てる「ガンプラトライアルキット RX-78-2 ガンダム」は、全高約100mm、51パーツで28ヶ所が可動。組み立てには工具や接着剤は不要、4色イロプラでシールを使わずカラー再現されたモデルだ。

小中学校の生徒などが実際に工場を訪れる見学ツアー(現在は休止中)はバンダイホビーセンターが出来た2006年から行われていて、すでに15年にわたる経験の蓄積があるほか、地元である静岡市の小学校の社会科では副教材として地場産業のプラモデルを学ぶ単元があり「バンダイホビーセンターでのものづくり」が取り入れられたりもしてきたが、『ガンプラアカデミア』はこれをさらに一歩進めるもの。その概要は@DIMEでもすでにお伝えしてきたが、今回は、企画の経緯や意図、授業を通じて「日本のものづくり」について子どもたちに伝えたいことなど、『ガンプラアカデミア』担当者であるBANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部の松橋幸男さんと中桐美由貴さんに話を聞いた。

ガンプラで生まれる新しいコミュニケーションの形

――『ガンプラアカデミア』を企画された意図と、そのメリットは?

松橋:日本のものづくり人材は昔と比較して不足しているという現状があり、なんとかそれを解決したいというのが大元です。この活動自体ですぐに変わるというわけではないでしょうが、そのきっかけ作りを始めたという最初の一歩だと考えています。

また、我々にとっては、ガンプラを作っている静岡のバンダイホビーセンターで働きたいという人材をこれから先も集めていきたいですし、いろいろな方に興味を持っていただくことで、我々だけでなく日本全体としてものづくりを発信できるようになっていけばよいなと思っています。それが間接的に我々のビジネスにも通じることになりますし、ちょっとでも興味を持ってもらえるようなことをやっていきたいなというのが『ガンプラアカデミア』を企画した意図であり、メリットでもあると思っています。

――逆に教育現場からは導入にはどういったメリットがあると考えられますか?

松橋:過去何回かテスト運用させて頂いていますが、やはり普通の授業に比べてガンダムというキャラクターが入ってきますので、子どもたちの関心が非常に高いというところと、ガンプラは親御さんもご存知の方が多いので、そこで親子の会話が生まれたりということがあります。あとは実際にあったケースなんですが、たとえば足が速いとか勉強ができる子がクラスで注目されるのと同じように、ガンプラを組むのが早い子がそうではない子に対して教えてあげたりする中で新しいコミュニケーションが生まれたりもしていて、それもメリットだと思います。

――ガンプラは男の子の趣味というイメージが強いですが、テストされてきた中で女の子の反応は?

中桐:実際に小学校でのプラモデル授業を見学に行きましたが、子どもたちはこれが男の子のものだという偏見は全然なくて、本当に組むことがすごく面白いとか楽しいっていう形で受け取ってくださっていて。終わった後にそのまま親御さんに頼んで女の子がガンプラを買ってもらったりとか。BANDAI SPIRITSでは、ガンプラだけでなく他にもポケモンなどいろいろなプラモデルを作っていますが、そういったものにも興味を持ってもらったりもしているので、入り口としてはすごくいい授業になったかなと思います。

――企画はいつ頃からスタートしたんですか?

中桐:2019年頃からですね。バンダイホビーセンターが出来てから、実際に工場の中を見てもらう見学は受け続けていたんですが、ただ課題として、来て頂けるのは静岡の近隣の小中学校に限られてしまう。もっと遠方からも来たいというご要望がたくさんあったんですが、日程が合わなかったりなどなかなか受けることができなかったので、それに応えたいという思いがありました。そんな折にちょうど文部科学省から、2022年に全小学校にタブレット端末を配布するという話が出てきたので、こういったことも可能なのではないかと思ったのが最初でした。その後コロナ禍の状況となり小学校だけでなく世界的にオンラインや動画配信が普及したことも、今回の企画を実施する環境が急速に整ったと思っています。

――実際に企画を進めていく段階で苦労されたことは?

中桐:今までに約400校、約1万2000人の生徒さんの工場見学を対応しましたが、それを授業にしようとすると、またちょっと考え方が違うというか。実際の学校の社会科の授業の中で取り入れるとなると、学校の指導要綱に沿っていかないといけないですし、その部分の知識が私たちだけでは不安でしたので、今回NHKエデュケーショナル様とNPO法人企業教育研究会様のご協力でノウハウをいただいて、実際に模擬授業をやりつつ、どうすれば導入しやすいのかという試行錯誤を重ねたりしました。当初は、「プラモデルができるまで」という工場紹介の映像を見ていただいた後に、じゃあプラモデルを組んでみよう、という授業の流れを考えていたのですが、先生方からは、そうではなくて、先にプラモデルを一回組んでみて、これを作った人たちはどんな思いを込めて作ったんだろうとか、どんなところを工夫して作っているんだろうっていうのをまず考え、想像してから実際に映像を見てその回答を得るという風にしたいと言われました。これまでとは全く逆の発想だったんですね。そういったところでも学校現場の考え方を学ばせていただいたと思います。

松橋:我々だけでやっていたら多分まだ全然実現できていなかったと思うんですが、NHKエデュケーショナル様と、カリキュラムを作っていただいているNPO法人企業教育研究会様の方にも入っていただいたことはとても大きかったですね。それはやはりガンダムとかガンプラというキャラクターがお互いを結びつけてくれたというか。“あの”ガンダム、“あの”ガンプラを作っている工場のものづくりの仕方というところでお互いに通じ合えてパートナーシップを組めているということが大きな結果につながっていて、本当に我々だけでは絶対できないようなことが外部の方に加わっていただいたことで成立している、そういうカリキュラムだと思っています。

授業の時間内に組みきれるサイズ感を重視したトライアルキット

――小学校5年生を中心とした高学年が対象だということですが、その理由は?

松橋:対象を5年生にしたのは、ひとりで40分とか45分の授業の中でプラモデルを組み切れる年齢っていうところですね。もちろん売り場とか体験会の場でやる時には3年生・4年生くらいでもひとりで組めていたり、1年生・2年生でも親御さんと一緒にやればできたりするんですけれど。授業のコマの中で1人で組めることを考えると、5年生・6年生が妥当であると考えて設定しています。

――1/144スケール(約13cm)のHGよりもひと回り小さいサイズですね。

松橋:小学生にとって、手の中での収まりがいいサイズ感ということで、ひと回り小さくして約10㎝にしています。あと今までの体験会キットよりもパーツ数も減らしていまして、ランナーの構成も2枚のランナーからパーツを探すのではなくて、1枚のランナーで頭はこれ、肩はこれ、腕はこれといった具合に直感的に分かるレイアウトにしています。できるだけ時間内に組めるように、そして完成度も高くて、手に取った時の収まりのよさを考えながら設計しています。

――事前学習~本時~発展学習という基本4コマの構成になっていますが、このボリュームはどう決まったのですか?

中桐:ガンプラを作るだけの授業ではなく、もっと幅広く、日本のものづくりってどういうものなんだろうというところを導入として始まりガンプラにつながっていく、という形で取り組んでいただく流れになっていて、実際の文部科学省の指導要綱のものづくり単元の中の授業としてフィットする感じに組んでいます。

ガンプラをきっかけに「ものづくり」への興味を

――今回の体験キットはガンダムRX-78-2ですが、別のものを今後用意される可能性は?

松橋:我々のものづくりの中では、ガンプラだけではなくポケモンなどもありますし、ノンキャラで恐竜の骨格のプラモデルなど、様々なものを手掛けています。恐竜骨格のプラモデルに関しては、LIMEX(ライメックス)という素材で、これは半分以上が石灰石を使っているんですが、昨今のSDGsへの取り組みに紐づくような商材でもあります。今回はガンプラを起点にものづくりというのがどういう風になっていて、どうやって進化してきたのか、といったことを学ぶカリキュラムになっていますけれども、もう少し違う切り口として、ガンプラを使ったSDGsであったり、もしくはその恐竜の骨格プラモデルを使った何か違う授業にしたりとか、もっと幅広く、キャラクターを問わず、また学年も問わず、さらに可能性を広げられればと考えています。

――最後に、受講する子供達にどういったことを学んでほしいのかというメッセージを。

松橋:今の小学生、特に5年生・6年生はいろいろなことに興味があって思春期も手前という時期だと思うんですが、そういったタイミングで、「あれがかっこいい」とか「あれがダサい」といった先入観なしに純粋にガンプラやものづくりに触れてもらうことで興味を持ったり、また、ものづくりに対して熱い思いを持っている人がまだ日本にいるんだよということを知ってもらえればと思っています。玩具も含め様々な物が海外で作られていることが多いですが、我々は静岡で国内生産をしていて、かなり高い技術を持っていると自負していますし、それを世界に向けて発信しているという姿勢にも少しでも興味を持って頂ければと思います。別にプラモデルじゃなくてもいいんです。何かものを作って世界に向けて発信していくっていうマインド、日本のものを発信していくしっかりとしたマインドを持ってもらえるといいなと。子どもがなりたい職業ランキングを見ると昨今はYouTuberなどが人気ですが、そういった中でも、未来のものづくり人材につながるような言葉が『ガンプラアカデミア」の授業を受けた小学生のアンケートから出てくるようであれば、我々の活動も少しは意味のあるものになるのかなと思っています。

最後は子どもたちに向けての熱いメッセージで締めくくられた『ガンプラアカデミア』担当者インタビューだったが、すでに9月27日(月)より全国の小学校約2万校に向けて順次案内が開始されており、それがちょうどこのインタビューが行われた当日であったため、申し込みの状況について伺ったところ、早くも全国から問い合わせがありスタートダッシュは上々といったところのようだ。小学校でガンプラを作ったことがきっかけで子どもたちがものづくりを志すようになったとしたら、その何十年か後の日本にはもう少し明るい未来が訪れているのかもしれない。

『ガンプラアカデミア』授業パッケージ申し込み

バンダイホビーセンターHP内「プラモデル授業」のページにて受付中。

※日程やその他の条件によりお受けできない場合もあります。
※申し込みは文部科学省が定めた小学校に限ります。

©創通・サンライズ

取材・文/小田サトシ

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