子どもは無限の可能性を秘めている。ゆえに、どんな将来の夢を抱くのも自由なはずだ。しかし、多様性を尊重する今の時代においても、古くからのジェンダーイメージによって夢の範囲が限定的なものになってしまうこともあるだろう。
マテル・インターナショナル株式会社はこのほど、「親と子どものジェンダー並びにキャリアのギャップ」に関する調査を実施した。詳細は以下の通り。
消防士やパイロットなどはジェンダーイメージが強く、ギャップが生まれている!
具体的な職業を提示した上で「それぞれの職業についてどのようなイメージがあるか」を親に対して調査したところ、職業におけるジェンダーイメージが確かに存在することが明らかになった。
例えば、消防士に対して男の子のイメージがあるのが90.0%、女の子のイメージがあるのが1.5%となり、男の子のイメージが強くなっている。また、子どもにおいても、消防士に対して男の子のイメージがあるのが81.8%、女の子のイメージがあるのが1.3%となり、親と同様の結果となった。
一方で、消防士やゲームプログラマーについては、どちらのイメージでもないという回答が親よりも8ポイント以上上回り、子どもの方がジェンダーイメージを持たない傾向にあることがわかった。
また、親が各職業のイメージについて、男の子と女の子のどちらのイメージでもないと回答している場合は、その子どももどちらでもないと回答している割合が高くなっており、親のジェンダーニュートラルな考え方に対して少なからず影響を受けている可能性が考えられる。
親も子も、算数には男の子・家庭科には女の子のジェンダーイメージ
「それぞれの教科についてどのようなイメージがあるか」を親に対して調査したところ、「算数」においては51.5%が男の子のイメージ、「家庭科」においては75.8%が女の子のイメージを持っていることが明らかになった。従来言われることが多かった理数系が男の子、家庭科や国語が女の子という印象が強いようだ。
また子どもの回答でも、「算数」「体育」について、36.0%が男の子のイメージと回答し、他の教科と比べて男の子のイメージが強いことが分かったが、どちらの教科についてもジェンダーイメージは親よりも少ない結果となった。
さらに、「音楽」、「家庭科」を除く教科では、50%以上がどちらのイメージでもないと答えており、教科に対するジェンダーイメージが薄くなっていることが伺える。
男の子の将来なりたい職業ランキング第1位は「YouTuber」、女の子の第1位は「パティシエ」
将来なりたい職業を調査したところ、総合では第1位が「YouTuber」(23.7%)、第2位が「会社員・事務員」(21.1%)、第3位が「料理人・シェフ」(20.5%)となった。また男女別に見ていくと、男の子の人気は「YouTuber」(41.0%)、「会社員・事務員」(33.5%)、女の子の人気は「パティシエ」(48.5%)、「花屋」(42.0%)に集まった。YouTuberと料理人・シェフは男女どちらもTOP10にランクインしている一方で、その他の職業については男女差の出る結果となった。
また、その職業になりたいと思ったきっかけを聞くと、「テレビや本でその職業を知って(42.0%)」という回答が群を抜いて多くなった。身近に働いている人がいなくても、テレビや本などを通して間接的に職業を知ることで、選択肢の1つになり、誰でも将来の可能性を広げられることが考えらる。
60%以上が「なれない・なりたくてもなれるか分からない」と感じ、夢に対する自信のなさが明らかに
「どの夢を選んだとしてもなれると思いますか」という問では、「なれないと思う(3%)」「なりたくてもなれるかは分からない(63%)」と答えた人が60%以上となり、半数以上の子どもが自身の夢みる職業につくことには自信を持てていないことが伺える。
また、「なれないと思う」「なりたくてもなれるかは分からない」と回答した子どもを対象に、なぜそう思うかを調査したところ、「難しいと思うから(43.9%)」、「なり方が分からないから(34.5%)」といった理由が続いた。
なりたい職業ラインキングの上位に入っていたYouTuber、プロゲーマー、ファッションデザイナーなどは、比較的なることが難しいと感じている子どもが多く、医療関係者、政治家、宇宙飛行士については、なり方がわからないと回答する子どもが多くなった。テレビや本をみて憧れを持つものの、その職業につくための方法やより具体的なイメージが持てず、自信が持てていないことが伺える。
さらに、「自分の夢を人に言うのが恥ずかしいと思うことはありますか」という質問には、約70%が「いいえ」と回答した。夢を言うことは恥ずかしいと思っていないものの、実際にその夢を叶えることについては難しいと思っており、将来の選択肢を増やす機会を与えるともに、自分がその職業についたことを想像するようなサポートが必要であると考えられる。
もっといろいろな職業を知りたいと思う割合が80%以上!
「もっといろいろな職業を知りたいと思いますか」と聞いたところ、80%以上がもっと知りたいと回答した。このことから、全ての職業を直接見る機会を持つことは難しくとも、間接的にであっても、たくさんの職業を知るような機会が増えることが求められていると明らかになった。
■総括
職業や教科については、男の子のイメージ、女の子のイメージを持っていることが多い一方で、親世代に比べて子どものほうがどちらのイメージも持っていないことから、ジェンダーニュートラルであることがわかった。
また、職業については男女で憧れの職業は異なる傾向にあるものの、60%以上が「なれない・なりたくてもなれるかわからない」と思っており、自信を持てない傾向にあることも明らかになった。
さらに、もっと職業を知りたいと80%以上の子どもが願っていることから、ジェンダーで制限することなく、様々な職業を知り、自分自身がその職業につくことを想像するような機会が多くなっていくことが重要であることが伺える。
<調査概要>
調査対象:小学校1年生から4年生(各学年男女50名ずつ)とその保護者計800名
調査手法:インターネット調査
実施期間:2021年8月
出典元:マテル・インターナショナル株式会社
構成/こじへい