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知ってる?電気のコンセントにつなぐだけでネットにつながる仕組み「HD-PLC」

2021.09.29

ネットワーク環境は多くの場合、LANケーブルを用いた「有線接続」や、Wi-Fiを使った「無線接続」を使うことが多いでしょう。

そんな中、“第3のネットワーク技術”とも言えそうな、「HD-PLC」という便利な技術をご存じでしょうか。

電力線を通信線として活用するHD-PLCとは?

HD-PLCは、「High Definition Power Line Communication」の略称で、直訳すると“高速電力線通信”となります。名前の通り、電気を送るための電気配線である電力線を、通信線として活用する、目からウロコがおちそうな技術です。

これはパナソニックが提唱する高速電力通信方式の名称で、日本やそのほかの国での登録商標もしくは商標になっています。

具体的には、家庭用の50Hz/60Hz、100V/200Vの電力線に、高周波化させたLANの信号を載せ、出口側では高周波部分を取り出してLANの信号に戻すことで、通信を行うもの。電力線を「電力の供給」と「データの伝送」の2つに使うことができるというわけです。

例えば、ネットワークカメラを使う場合は通常、PCにネットワーク接続しておく必要があるのですが、有線LANではコードが届かない、Wi-Fiは遮蔽物の影響で届かないといったシーンが想定されます。

こういった場合、HD-PLCが実力を発揮。ネットワークカメラとPCそれぞれに端末を取り付け、その端末を電源コンセントに接続します。すると、電力線を通じて通信ができるため、ネットワークカメラとPCの接続ができるようになります。

実は「PLC」は10年以上前から活用されている技術なのですが、当時は10~450kHz以下という、比較的低い周波数を使う必要がありました。

10~450kHzは、一般的に家庭で使用する電源機器から発生する周波数帯に近いため、ノイズが入りやすく、つながり自体が悪いことも多かったのです。

そんななか、HD-PLCは2006年の電波法規制緩和のおかげで、2MHzから30MHzを使用できるようになりました。そのため通信速度が従来よりも速くなり、他製品からのノイズも小さくおさめられます。

さらに今回、2021年6月30日付の「電波法施行規則等の一部を改正する省令」によって、これまで使用できなかった三相3線や、鋼船(鋼材で造った船)でも使えるようになりました。

パナソニックのHD-PCLはマルチポップ技術対応で長距離通信が可能に!

パナソニックのHD-PLCは第3世代のものとなっており、「マルチホップ技術」に対応しています。

実は、従来のHD-PLCは親機と子機が1対1でしか通信できなかったのです。

そのため親機と子機の距離が離れてしまうと通信ができなかったり、間に分電盤などがあると信号が減衰してしまい、こちらも通信がうまくできないという特性があったため、HD-PLCは主に、家庭用として活用されることが多かったのです。

しかし、「マルチホップ技術」を活用すれば、子機を中継器として利用することが可能。そのため、信号をバケツリレーのように運べるので、長距離でも安定した通信環境が構築できるのです。

マルチホップ技術は、これまでネットワーク環境が整っていなかった工場やトンネル内といった産業用途でも活用しやすくなっており、HD-PLCはローカルエリアネットワークの第3の手段として、産業用途を中心に期待されています。

HD-PLCを使うメリットはあるの?

HD-PLCは、基本的に電源コンセントへ端末を接続すればネットワーク環境を構築できます。特に配線工事の必要がないので、コストや工期を大きく減らす期待があります。

また、老朽化が進んでいる建築物などの工事では、躯体にダメージが生じる場合があり、さらに重要文化財では建物へ穴をあけられないといった場合もあります。

そんな時にHD-PLCを活用できるのは大きなメリットでしょう。また、無線接続に比較すると、障害物や混線の影響を受けにくいという強みもあります。

上図のように、有線LAN接続/無線接続に比較すると、簡単で画期的なネットワーク技術ではありますが、一方で通信速度を上げにくいというデメリットもあります。

パナソニックは、HD-PLCが従来ある有線/無線技術にとって代わると考えているわけではなく、「工事費用を抑えたい」「電波がどうしても届かない」といった局所的な問題を解決するための補足的なネットワーク技術としています。

家庭用のHD-PLC対応機器もパナソニックはラインアップ

マルチホップ機能に対応した家庭用のアダプターは、すでに製品化されています。

パナソニックではHD-PLC対応PLCアダプター、「WPN7011」などを展開。

屋内/屋外専用やコンセントタイプ/端子台取付タイプも用意され、状況に応じた製品が選べるようになっているのも特徴です。

パナソニック HD-PLC対応 PLCアダプター(LAN変換)(屋内専用100V) コンセントタイプ「WPN7011」 価格3万2780円

【参照】パナソニック WPN7011

学生寮やトンネルなどへHD-PLCの技術展開が始まっている!

実際に、名古屋大学の学生寮や新長崎トンネルといった場所で、HD-PLCの導入は進んでいます。

工事費を抑えやすく、電波が届きにくい場所にもネットワーク環境をもたらすHD-PLCの今後の進展に、ちょっと注目してみてはいかがでしょうか。

取材・文/佐藤文彦

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