「一か八か、やってみよう」と決断した経験は、誰しも一度はあるのではないだろうか。ドラマ『賭ケグルイ』のオープニング曲名に採用されていたり、『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』の罠カードの名称になっていたりと、近年でも身近な言葉の一つだ。しかし、そもそもなぜ「一」と「八」なのだろうか。
本記事では、この「一か八か」という言葉の正しい意味と使い方、なぜ「一」と「八」なのか、その由来について解説する。類語や対義語、英語表現も併せてチェックしてほしい。
「一か八か」とはどんな意味?
はじめに、「一か八か」の正しい意味と由来について解説したい。その意外な由来を知ると、「一か八か」という言葉の面白さを感じられるはず。
意味は「運を天に任せてやってみること」
「一か八か」の読み方は「いちかばちか」。八は「はち」と読まない点に注意しよう。 一か八かとは、「結果はどうなろうと、運を天に任せて思いっきりやってみること」を表す言葉だ。一世一代の大勝負をする時、後先は分からないが運任せで物事に取り組む時、ギャンブルをする時などに使われる。
実際の文章では、「成功するか分からないが、一か八か脱サラして独立してみよう」「一か八かやってみて、ダメならまた考えれば良い」「一か八か買った馬券が、万馬券になった」のように用いる。
由来は江戸時代のばくち用語
「一か八か」という言葉の由来としては、2つの説が有力だ。一つは、ばくち用語の「一か罰か(さいころの目に一が出るか、それ以外の目が出てしくじるか)」がなまったという説。「一か八か」の「ばち」が、「罰」からきていると覚えると、この独特な発音を理解しやすいだろう。
もう一つは、ばくち用語の「丁か半か」からきているという説。さいころを使ったばくちには、出た目が丁(偶数)か半(奇数)かで勝負を決める丁半賭博がある。この「丁」と「半」という漢字上部の「一」、「八」をとって「一か八か」という言葉ができたというものだ。
ちなみに江戸時代には、「一か八か」だけではなく、「一か六か」という言葉も使われていた。これは、さいころの1の反対側の目が6で、丁半も逆(1は奇数、6は偶数)からきていると考えられる。
「一か八か」の類語・対義語
ここでは「一か八か」の類語、対義語について説明する。それぞれの言葉の由来も併せて参考にしてほしい。
類語
・のるかそるか
成否は天にまかせ、思い切って物事を行うことを指す言葉。「一か八か」と、ほぼ同じ意味で使える。これは、弓矢の矢を作る際に少しでも反ってしまうと使い物にならなくなってしまったことから生まれた言葉だ。「一か八か」とは由来が大きく異なるが、同じ意味を表せる言葉として覚えておきたい。
・当たって砕けろ
成功するかどうかわからなくても、思い切ってやってみよという意味。意外なことに、英語の「Go for broke.」に由来する。「Go for broke.」は、第二次世界大戦中のアメリカ陸軍が有した日系アメリカ人部隊の合言葉として使われた。他者に思い切った行動を促す時に用いる。
・清水(きよみず)の舞台から飛び降りる
思い切って大きな決断を下すことを言い表す言葉。京都にある清水寺の舞台から飛び降り、無事であれば願いが叶うという民間信仰から生まれた言葉だ。舞台の高さは13メートルもあり、そこから飛び降りるには相当な覚悟を持たなければならないことから、思い切って大きな決断をするという表現として使われるようになった。決死の覚悟で物事に取り組む際や、高額な買い物をする時などに用いられることが多い。
対義語
・石橋を叩いて渡る
用心の上にも用心深く物事を行うことのたとえ。「硬い石で作られた橋であっても、叩いて安全を確認してからでないと渡らない」という、物事を注意深く念入りに行う様子から生まれた言葉だ。「一か八か」が“運を天にまかせる大胆さ”を表現しているのとは対照的に、「石橋を叩いて渡る」は、”運まかせにしない慎重さ″を表している。
・念には念を入れる
用心した上に、さらに重ねて用心するという意味。「念を入れる」とは、間違いのないように気を配ることを強めた言い方だ。江戸時代後期に生まれたと言われる『江戸いろはかるた』の「ね」にも採用されているほど有名な語句。「石橋を叩いて渡る」と同様に、運まかせ、勢いまかせではなく、慎重に物事に取り組む際に使いたい。
英語ではどのように表現する?
「一か八か」の英語表現でよく使われるのが、「all or nothing」。直訳で「すべてを貰うか、すべてを失うか」という意味だ「Honestly,it is all or nothing.(正直なところ、それは一か八かだ。)」などのように用いる。「sink or swim」、「hit or miss」等も同じ意味で使えるため、併せて覚えておきたい。
他にも「take one’s chance(チャンスにかけてやってみる)」、「take a risk(リスクをとってやってみる)」といった表現もある。実際の文章では、「Let’s take a chance./一か八かやってみよう」「I’ll take a chance on that horse./あの馬に賭けてみよう」などのように使う。
文/oki