ハッキングによる仮想通貨の流出事件は、頻繁に起きているわけではないもののゼロではない。2021年8月には約660億円分の仮想通貨が盗まれる事故が起きている。最悪の事態を想定して対策を講じておきたいが、どうしたらよいか。身を守るには「自衛」が唯一無二の手段だが、どのような方法があるのか紹介したい。
取引所がハッキングされるリスクを自衛する手段
取引所がハッキングされた場合、個人に取れる手段は残念ながら何もない。そのため、ハッキングされる前に取引所から引き揚げておき、自分が管理するウォレットに保管するしかない。
ただし、取引所から仮想通貨を出庫するには手数料がかかってしまう。その対策として、仮想通貨を購入する時点で取引所を2〜3か所に分散しておけば、〝全財産が引き出せなくなった〟という事態を避けることができる。
ウォレットとは何か?
ウォレットとは仮想通貨を保管しておく専用アプリや、アプリを内蔵した端末のことを指す。左ページで詳しくまとめたが、USBメモリのような形をしたハードウェアウォレットやスマホで使えるモバイルウォレットがある。仮想通貨取引所でも複数のウォレットを組み合わせた体制で仮想通貨管理を行なっている。とはいえウォレットでのセキュリティーは万全ではなく、コンピュータープログラムである以上ハッキングされる可能性は常に付きまとう。
ハッキングから身を守るためのチェックリスト
ハッキングリスクに備えるには「分散」と「履歴確認」がキーワードになる。具体的にどのような自衛手段があるか、下記にチェックリストをまとめた。すべての手段を取れればベターだが現実的には難しいので、最低でもログインに必要な2段階認証だけでも設定しておきたい。また取引所ではログイン時にメール通知を飛ばしてくれるので、通知がきちんと受け取れるよう迷惑メール設定や、受信可能なメールアドレスなのかを確認しよう。
●自衛のためのチェックリスト
残高や不審なログイン履歴がないかは3か月に一度を目安に確認し、もしあれば取引所や警察に躊躇なく相談しよう。
ウォレットはネット接続の有無で2種類に分かれる
(1)ホットウォレット
「ホット」とは、インターネットに接続中の意。すぐに送金が実行できるが、仮想通貨が盗まれやすい。モバイルウォレットに仮想通貨を保管する場合は2段階認証を有効にし1日に1回は残高を確認しよう。取引所の口座もホットウォレットだが、他の投資家と共用の場合が多いので、長期間保管するのは避けたい。
●モバイルウォレット
取引所のウォレットに比べて自分専用である分だけ安全だが、過信は禁物。
●取引所アカウントのウォレット
取引所のウォレットはすぐに売買できて便利な分、流出リスクが高い。
●ペーパーウォレット
ウォレットの情報をQRコードで印刷。入出金時にそのコードを使う。
●ハードウェアウォレット
USBでパソコンに接続した時に限りインターネットに接続する。
もしウォレットをなくしたり壊したりしたら保管している仮想通貨は取り出せるの?
ウォレットは基本的にバックアップ・復元用のパスワードを初期設定時に記録する。このパスワードがあればウォレットをなくしたり壊したりした時でも仮想通貨を取り出すことができる。しかしこのパスワードがわからない場合は、二度と仮想通貨が取り出せなくなる。流出対策のため難しいパスワードパターンの設定を求めるウォレットが多い一方、紙などにメモしておくと流出リスクにつながる。誰にも見られない場所への保管を心がけたい。
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取材・文/久我吉史