■茂木雅世のお茶でchill out!
「お茶の季節」といえば、5月の八十八夜の頃を思い浮かべることが多い。
でも一年を通して、どの季節に一番お茶を飲みたくなるかと聞かれたら(もちろん春も飲みたいけれど!)肌寒くなってくる頃と答えるかもしれない。
温かい飲み物が恋しくなる頃に、ちょうどお店に並びはじめる「秋のお茶」。
私は、これがとても好きだ。
どんなものがあるかというと、1つには春に摘んだお茶を低温で熟成させ、秋に蔵出しをして仕上げるお茶がある。
以前、春に摘んだお茶をトンネルの中でひと夏、熟成させたお茶を飲んだことがあった。低温で時間をかけて熟成されているからなのだろうか、まるみがあって、とろけそうになる程おいしく、今でも記憶に刻みこまれている。
また、秋に摘むお茶というものも存在する。4月~5月頃に摘む一番茶からその後の二番茶…そして夏を超え、秋口に芽吹く葉っぱを摘んだものだというが、もう何年も前に、数回しか飲んだことがなく、改めてちゃんと飲んでみたいと思っていた。
そんな中、静岡県のほぼ中西部に位置する菊川市にあるJA遠州夢咲管内の茶園で、一日限定の秋摘み茶の手摘みが一斉に行われたという情報を耳にした。
飲んでみたい!と思い、さっそく今年摘まれた秋摘み茶を購入してみた。
菊川市は深蒸し茶の発祥の地とも言われており、温暖な気候に恵まれた自然豊かな地域だ。
この地域での秋摘みは30年以上前から行われているものだそうで、今年は9月7日秋晴れの空の下、行われたという。
当日は30の茶工場が参加し、それぞれの茶園で丁寧に一芯二葉を手摘みで摘み取ったそうだ。
この秋摘み茶、摘採時期の気候が春の新茶の時期に近いことから「お茶の葉が柔らかく、爽やかな風味と独特なコクを味わえる」とファンも多いそうだ。
届いた秋摘み茶はパッケージもかわいくて、開ける前から心が躍る。
(袋に貼りつけてあった「秋摘み茶」というシールもかわいかったので丁寧に剥がし、保存した笑)
100g入りの缶と75g入りの袋タイプのものがあるそうだが、今回は袋の方をチョイス。
袋をあけて、香りをかいでみると、さわやかで濃厚なお茶の香りがぶわっとやってきた。
さっそく、JAの方におすすめされた淹れ方で淹れてみる。
深蒸しのお茶ということもあり、お茶の色は見ているだけでも癒されるようなしっかりとした濃い緑色。一口飲むと、まずやさしい甘さがやってきて、濃厚なお茶の味が口いっぱいに広がる。鼻に抜けていく爽やかな緑風も最高だ。飲みこんでもなお、ふわふわと口の中に漂うお茶の香りが余韻となって、次のひとくちを促す。
新茶に強さがプラスされたようなお茶の味わいは、まさに肌寒くなってきたこの季節に飲みたい一杯だと感じた。
普段は80度程のお湯で40秒前後待って淹れているが、朝は浸出時間を10秒程度とかなり短めにサッと淹れてさっぱりした味わいのお茶にしたり、気合いを入れたい時には2分の浸出時間でお茶のガツンとした味わいに背中を押してもらうなど、気分に合わせて色々な味わいを楽しんでいる。
現在、菊川市内のJA遠州夢咲の直売所などを中心に販売されているというこの秋摘み茶。JAの方によるとコロナ禍でお店に来店する人の数が減ったり、イベントが中止になったことで呈茶が出来ないため、もどかしい気持ちもあるという。
秋限定のコンビニスイーツやお菓子があるように、秋ならではのお茶もこの時期しか飲めない超超限定品だ。
肌寒くなってきた頃のちょっと切ない気持ちをやさ~しく包んでくれる秋のお茶。
センチメンタルな気分になった時は、是非飲んでいただきたい。
JA遠州夢咲 菊川茶直売所
お問い合わせ:0120-36-4355
茂木雅世 もき まさよ
煎茶道 東阿部流師範・ラジオDJ
2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまう活動を開始。現在ではお茶にまつわるモノ・コトの発信、企画を中心にお茶“漬け”の毎日を過ごしている。暮らしの中に取り入れやすいサステナブルアイテムを探求することも好きで自称“アットDIMEのゆるサステナブル部部長”
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