テレビの便利グッズコーナー常連のあのメーカー
コロナの巣ごもり需要の影響が、テレビの情報番組でやたらと見かける「便利グッズ」紹介コーナー。そこにかなりの確率で登場するのが「サンコー」というメーカーだ。あまりによく見るので、最近では商品を見ただけで「これはサンコーだな」と直感するほど(そしてほぼ当たってしまう)。
ざっとあげただけでも、シワを伸ばせる乾燥機「アイロンいら~ず」、スマホアームスタンドとビーズクッションが一体化した「あご乗せお餅スマホアームクッション」、オフィスで炊き立てご飯が食べられる「14 分で炊ける弁当箱炊飯器」、水を入れるだけでカップ麺が食べられる「自動カップ麺メーカーまかせ亭」などなど…。
▲水を入れてボタンを押すだけでカップ麺を勝手に作ってくれる自動カップ麺メーカー「まかせ亭」(希望小売価格 税込み5,980円)
▲「顎を乗せてスマホゲームができる!」と人気の「あご乗せお餅スマホアームクッション」希望小売価格 税込み5,980円。2021年発売開始
どれもこれも、便利といえば便利だが、正直ツッコミたくなる商品ばかり…。いったいどんなメーカーなのだろうか。軽い気持ちで調べてみたら、これが驚愕の連続だった。
驚愕1…毎週2~3製品、年間100以上の新商品を発売
サンコーは2003年に秋葉原からスタートした会社で、現在の社員は43名。なのに毎週2~3製品を発売し、年間の新発売商品はなんと100個にのぼる。
なぜこの人数でそんなに新商品を出せるかというと、全社員(アルバイトも)が毎週、必ず1個は新商品を提案するのがルールになっているから。
「こういうのがあったらいいな」というアイデアを、社内の商品企画掲示板に投稿し、そのアイデアをみんなでブラッシュアップしていくのだという。いいアイデアには賞が与えられ、報奨金も出るとのこと。
▲10月中下旬頃入荷予定の新商品。長時間のうつぶせ寝が苦にならないつぶせ用クッション「うつぶせ寝クッション0(ゼロ)」(希望小売価格 税込み5980円)
驚愕2…「自撮り棒」「首かけファン」をブームの前からいちはやく販売していた!
サンコーは、2003 年 パソコン周辺機器輸入販売の会社に務めていた山光博康(やまみつひろやす)さんが創業した会社。山光さんは海外にある面白いグッズが大好きで、ぜひ扱いたいと社内で提案していたが全く認められなかった。そこで独立し、「面白く」て「役に立つ」というコンセプトに日本には売っていない商品を扱うネット通販「サンコーレアモノショップ」を開設。腕時計型の MP3 プレーヤーなどを販売し、初年度で8900万円、2 期で2.1 億円と好調なスタートを切った。
2005 年からは自社開発商品をスタート。2009 年には秋葉原中央通りに直営店舗「サンコーレアモノショップ秋葉原総本店」をオープン。2011 年 9 月 日本ではほとんど販売していない自撮り棒の販売をスタート。ご存じのようにこの語、自撮り棒が日本中で見られるようになる。
2016 年からは家電商品の展開を開始。2017 年 6 月 には首掛け式の扇風機「ヘッドホンなクーラー」を開発。翌年から首掛け扇風機タイプが出回るようになる。2017 年 8 月 面倒な「アイロンがけを自動化したい」という思いで、シワを伸ばす乾燥機「アイロンいら~ず」を開発。大きな話題を呼ぶ。
▲乾燥とアイロンがけが同時にできる「シワを伸ばす乾燥機 アイロンいら~ず2」(希望小売価格 税込み12,800円)。シャツなら約30分、ズボンなら約100分
ビッグヒット商品を連発し始めるのは2018年以降。ペルチェ素子を利用したウェアラブルクーラー「ネッククーラーmini」が18,000台を売り上げるほか、2019 年 12 月には お米を 14 分で炊ける「超高速弁当箱炊飯器」を発売。2 日間で完売し、現在までに累計で 11 万台以上を売り上げている。
▲最短14分で一人分のご飯が炊きあがる「超高速弁当箱炊飯器」(希望小売価格 税込み6,980円)。「オフィスでも炊き立てご飯が食べられる!」と人気で11万台以上を販売
驚愕3…コロナ禍に、売上250%UP!
こうして、次々にヒット商品を連発し、創業から14年目の2016 年には年商10 億、2017 年に13 億、2018 年に14 億、2019 年に17 億…と着実に売り上げを伸ばしていたが、2020 年にはなんと、いきなり 44 億円と急上昇!コロナ禍にあって、売上250%UPを達成した。
理由は複数あるが、ひとつは2020 年 4 月に発売した首にかけるウェアラブルクーラー「ネッククーラーNeo」が累計販売 25 万台という、サンコー史上最大のヒット商品となったこと。そのほかにも「超高速弁当箱炊飯器」(累計販売数約11万台)、「タンク式食器洗い乾燥機」(累計販売数約2万台)、「エレクトリックナイフ Slim」(累計販売数約18,000台)などの巣ごもり関連商品が次々にヒットした。
▲サンコー史上最大のヒット商品となった「ネッククーラーNeo」(希望小売価格 税込み5,980円)。急冷された冷却プレートが、まるで缶飲料を当てたような冷感を2秒で与え、10000mAhのモバイルバッテリー使用時で最大20時間持。※現在品切れ
驚愕4…年間テレビ露出数237回!
確かに、「面白くて役に立つ商品」への熱い探求心はわかったが、しかし世の中にはそういう商品が山ほど出ている。なぜサンコーの商品がテレビで取り上げられやすいのか。じつはつい最近まで、サンコーはそれほど広報に力を入れている会社ではなかったという。現在の状況の陰には、サンコーの名物広報マンの努力があった。
サンコーの広報部長である﨏 晋介(えき しんすけさん、愛称ekky)は、輸入家電メーカーの営業マンとしてテレビショッピングの出演や、家電メーカーでリリース作成などを経験した後、2015年にサンコーに入社し、営業を担当。過去の職歴から「こんなに面白い商品がたくさんあるのに、発信しないのはもったいない」と思い、入社2か月後から自発的に広報業務も兼務するようになる。
翌年には広報部を設立して、リリース作成やメディア対応など広報業務を一人で行うようになり、現在ekkyというキャラクターでテレビ出演も積極的に行っている。ちなみに、同社商品の年間テレビ露出回数は年間平均237回。2021 年の出演実績 9 月現在 でテレビ45番組 ラジオ 3番組 雑誌 7 誌にのぼる。
驚愕5…240のテレビ番組制作会社に、「ネタ帳」を送付!
﨏氏が特に注力したのが、テレビでの露出。これは知名度や認知度がアップするというだけではなく、話題になると卸先が反応しやすいので、販路拡大につながるためだ。
とはいえ、テレビで商品を紹介してもらいたいメーカーは山ほどあり、単に「ちょっと面白い」だけ紹介してもらえるほど甘くないのが、テレビ業界だ。﨏氏がすごいのは、その発信力。番組のエンドロールやネットから番組の制作会社を調べ上げ、あらゆる情報番組の制作会社に、自社の商品をタイムラインで並べた「ネタ帳」を送付。その数合計240社にものぼった。
「実はテレビ関係者だって、常にネタを探しているんです。忙しい番組制作者がパッと見てわかる資料は歓迎されるんですよ」(﨏氏)
▲番組制作会社に送付した「ネタ帳」の一部
現在、商品リリースは1商品につき1000通以上を送付しているという。「またサンコーか!」と思うほどテレビでよく見る陰には、こんな努力があったのだ。
これまでに一番売れた商品ベスト5
最後に、これまで売れた商品ベスト5を教えていただいた。1位は、前述の「ネッククーラー シリーズ」で 「ネッククーラーEvo」が約47万台、「ネッククーラーNeo」が約30万台売れている。
2位も前述の「超高速弁当箱炊飯器シリーズ」。「超高速弁当箱炊飯器」(約11万台)と「2段式超高速弁当箱炊飯器」(約2万台)で合計約13万台売れている。3位以下はご覧の製品だ。
▲3位…誰でも断面が美しく切れる電動ナイフ「エレクトリックナイフシリーズ」(希望小売価格 税込み5,980円)で、約4.7万台
▲4位…水道いらずのタンク式食器洗い乾燥機 「ラクア」(希望小売価格 税込み29,800円)。工事不要でどこにでも置けてすぐに使え、家事が時短になる点が受けて約2.5万台を売り上げた
▲5位は約2万台以上を売り上げている「どこでも座れるリュックシリーズ」(希望小売価格 税込み7,980円)。1秒で出して1秒で収納できるスピーディさが人気
ちなみに、「社内で、最も反対意見が多かったのに、よく売れた商品は、「USBあったか手袋」「USBあったかスリッパ」だったそうだ。
▲USB端子に接続するだけであったかくなる手袋「USBあったか手袋2」 税込み1,680円(現在は完売)
取材・文/桑原恵美子
取材協力/サンコー株式会社
編集/inox.
◎関連リンク
サンコー 公式オンラインショップ https://www.thanko.jp/