コロナ禍で、子どもがいる家庭では、悩みが増えていないだろうか。子どもがイライラ、寝付かない、かんしゃくが多いなどはよくあるといわれる。
医師でイシハラクリニック副院長の石原新菜氏によると、子どものイライラなどは自律神経に関係しているという、そこで子どもの食事や腸内環境改善からの対策を聞いた。
1歳から5歳の子悩み~偏食傾向への悩みがトップ2に
株式会社ユーグレナは、2021年8月、1歳から5歳の子どもを持つ親200人を対象に、同居している子どもの体質などに関する悩みについて調査を実施した。
その結果、悩みの1位が「好きなものしか食べない(77人)」、2位が「野菜を食べてくれない(48人)」とトップ2が偏食傾向への悩みだった。次いで、「なかなか寝ない(46人)」、「落ち着きがない(40人)」のほか、「食が細い(29人)」や「癇癪を起こしやすい(27人)」、「肌がかぶれやすい・弱い(26人)」と続いた。
子どもの習慣にしたい食べ物
この調査結果を受け、石原氏は子どもへの対策を解説している。
「好きなものしか食べない」「野菜を食べてくれない」といった偏食傾向の悩みについては、「子どもは本能で好き嫌いがあるため、嫌いなものは無理に食べさせる必要はありません。だんだんと食べられるようになるので焦らなくてよいです。食べられるものの中からバランスよく、ビタミン・ミネラル・食物繊維をしっかり摂ることを意識するとよいですね」と述べる。
【取材協力】
石原新菜氏
医師・イシハラクリニック副院長/ヒポクラティック・サナトリウム副施設長/健康ソムリエ講師
1980年長崎県生まれ。小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすいキャラクターで、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書は 13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』、『研修医ニーナの731日』等30冊を数え、韓国、香港、台湾、ベトナムでも翻訳され出版されている。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。二児の母。
また、石原氏は習慣にしたい食べ物として、発酵食品と食物繊維を挙げる。
ハッピーホルモンといわれるセロトニンの9割は腸で作られるといわれており、腸内環境を整えることは大事。そのために子どもに積極的に食べさせたい食品が、発酵食品と食物繊維だ。発酵食品から摂った良い菌を腸の中で育てるには、エサとなる食物繊維もしっかり摂ることが大事だという。
1.おすすめの発酵食品~納豆、ヨーグルト、味噌、お酢
「納豆や味噌、ヨーグルトの健康効果は有名です。腸内環境を整えてくれることで自律神経や免疫機能への関与も期待できます。納豆とお味噌汁は毎日食べさせるのがおすすめです。お味噌は体を温める食品で、温かいお味噌汁で摂ると腸を温める効果もあって非常に理想的です。朝ごはんに取り入れるのが特におすすめです。お酢も酢酸菌という、腸内細菌のエサとなる菌を腸に入れるためにぜひ摂りましょう。お味噌汁、牛乳にお酢ひとさじを入れることで毎日ちょっとずつ摂らせることができます」
納豆や味噌について、もし子どもが積極的に食べない場合、どうすれば食べやすくなるだろうか。石原氏は次のように述べる。
●納豆が苦手な子ども向けの食べ方
「納豆は嫌いな子は多いですね。においがダメな子どもが多いようです。まずはにおいの少ない納豆を選んであげましょう。納豆にポン酢を少しかけるだけで、香りがかなり減って食べやすくなります。また、山芋のすりおろしを加えるのも。刻みのりも足すとより美味しいです。生卵をかけるだけでも臭いが減ります。納豆を味噌汁に入れてしまうのも臭いが減るのでおすすめ。逆に納豆オムレツなど、火を加えて調理してしまうと香りがより強くなってダメかもしれません」
●味噌が苦手な子ども向けの食べ方
「お味噌汁が苦手という子どもは少ないですが、玉ねぎや、かぼちゃ、さつまいもなどゆでると甘くなるものをお味噌汁の具にするとよりいいです。またお味噌にもいろいろな種類があるので、赤味噌、白みそなどを試してあげましょう」
2.おすすめの食物繊維豊富な食品~ユーグレナ、アーモンド、カカオ(ココア)
●ユーグレナ
「ユーグレナは、ワカメや昆布と同じ藻の一種。動物と植物の両方の特徴を持っており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素をバランスよく含んでいる食品。子どもがユーグレナを含む飲料を摂取することで、便通の回数が増えたり、睡眠の質が上がったという報告事例もあります。また、子どものアトピー性皮膚炎症状が軽減される可能性を示唆する研究成果も出ています。子どもが喜んで飲む味付けになっているドリンクもあり、いちばんの悩みでもあった野菜嫌いな子にビタミン・ミネラルなどを補わせるのにも手軽に取り入れられます」
市販の商品を見てみると、ユーグレナは粉末で溶かすタイプやそのまま飲めるドリンクタイプ、ヨーグルトなどがある。この商品も参考にしてみよう。
ユーグレナ「からだにユーグレナ フルーツグリーンオレ」
ホリ乳業「ユーグレナのヨーグルト」
●アーモンド
「アーモンドは総重量の約1割もの食物繊維を含む食品で、摂取した栄養をエネルギーに変える働きや、肌や粘膜の健康を保護する働きが。得に成長期に不足すると成長障害を起こすビタミンB2も豊富なことから子どもにぜひ食べさせたい食品です。
アーモンドが苦手な子どもには、小さく砕いて、またはそのまま、ココアパウダーとはちみつと混ぜるととっても美味しくなります。抹茶パウダーとも合いますし、ヨーグルトとはちみつも合いますよ」
●カカオ
「カカオも、実はごぼうやセロリよりも食物繊維が豊富といわれる食品。それ以外にも一緒に含まれているポリフェノールにも自律神経を整える効果があるといわれています。カルシウム、マグネシウム、ミネラルも豊富です」
カカオはココア商品で摂取しやすい。最新のココア商品をチェックしておこう。
森永乳業 × 森永製菓「森永ミルクココア」
ブレインスリープ「BRAINBOW ミライのCOCOA」
富永貿易「TOMINAGA ピュアココア 80g」
子どもに多い便秘の原因と対策
ところで、アンケート調査では「便秘がち」の悩みを持つ親は16人いた。子どもの便秘の原因と対策を石原氏に聞くと、子どもに多い便秘の原因は4つあるという。それぞれの原因と対策を聞いた。
1.腸内環境がよくない
「食事が偏っていたり、発酵食品や食物繊維が足りない場合が多いです。できるだけ和食と、意識すると良いと思います。煮物、味噌汁、納豆、ごはんを基本にして、その日によってお魚かお肉かというバランスの良い食事を心がけること。煮物にする時間がない場合は、味噌汁にいろいろな野菜を入れてしまえば一石二鳥です! そして納豆は必ず食べさせてあげるよう習慣づけましょう。おやつにはチーズやヨーグルトの発酵食品、さつまいもやかぼちゃをふかしたものがおすすめです」
2.体が冷えている
「体が冷えていると、腸の動き(蠕動運動)も悪くなります。いつも薄着、靴下を履かない、お風呂につからない子どもは体が冷えています。子どもは夢中になって遊んでしまうので自覚をしにくいのですが、触ってみて、手足が冷たい、頬が冷たいなら『今、寒いよ!』という体のサイン。靴下をはかせる、上着を1枚、着させるようにしてあげましょう。またお腹を触ってみて冷たかったら肌着を着せて、お腹が出ないようにしっかりズボンやスカートの中にしまってあげて、温かいものを飲ませましょう」
3.運動量が足りない
「歩いたり、走ったり、体を動かすと腸の蠕動運動もよくなります。たまには外に連れ出して、公園で一緒に歩いたり走ったりするようにしましょう」
4.ストレスや寝不足など
「お母さんにいつも怒られている、お受験のストレス、勉強やゲームで睡眠時間が少ないなど、ストレスや寝不足があると、交感神経が優位になり、内臓の働きも悪くなってしまいます。副交感神経が優位のほうが内臓の働きはよいです。
親が落ち着くと、子どもも落ち着きます。殺気立っているのが子どもにも伝わってしまうと、子どももピリピリしてしまいます。余計にギャーギャーが止まらなくなってしまいます。
15分でも外に出て一緒に縄跳びをするとか、公園でおにごっこをするとか、ストレスをうまく体を動かすことで発散させてあげると良いと思います。運動をすれば体力がつきます。勉強をするにも体力が必要ですから。
そして、しっかり寝かせること。『あと10分、あと10分』と言って大泣きしようが、『家のルールはルール!』とシビアに。寝る時間はしっかり決めて、しっかり寝かせることも重要です」
子どもの悩みがあれば、食からの対策を一度検討してみるとよさそうだ。発酵食品と食物繊維を積極的に取り入れて、運動や睡眠、ストレス対策なども合わせて実施しよう。
※本文中に紹介している商品は、ライターが選出したものであり、医師が推奨するものではありません。
取材・文/石原亜香利