世界各国の主要自動車メーカーがしのぎを削る、電気自動車(EV)の開発競争。こうした中、EVを動かすモーターのエネルギー効率を改善する『パワー半導体』に注目が集まっている。
そんな『パワー半導体』についてこのほど、三井住友DSアセットマネジメントが以下のレポートをまとめた。
EVの省エネに欠かせない『パワー半導体』
EVに搭載された巨大なバッテリーには、「直流」の電気が蓄えられている。これを「交流」に変換した上で電流の周波数を調整し、EVを駆動するモーターの回転速度をコントロールするのが『パワー半導体』の役割だ。
理論上、必要な動力(電力)はモーターの回転速度の三乗に比例する。簡単に言うと、モーターの回転速度を2割落とすと、消費電力を約半分に削減することができる。つまり、『パワー半導体』を使いモーターの消費電力を抑えることで、同じ容量のバッテリーでもEVの「航続距離」を伸ばすことができるのだ。
EVシフトで需要が拡大する『パワー半導体』
国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年に登録されたEVの台数は世界で3百万台となり、前年比41%の増加となった。また、現在公表されている各国政府の環境対策を積み上げた「公表政策シナリオ」では、EVの年間登録台数は2030年には19.2百万台、2040年には27.9百万台まで急増するものと予測されている。
今後EVシフトが急速に進むことで、『パワー半導体』の需要も大きく拡大することが見込まれている。2018年に320億ドル(約3兆5,200億円)だった世界の『パワー半導体』の市場規模は、2030年には556億ドルまで拡大するとの報道もある。
関連メーカーに積極投資の動き、新技術の動向には注意を
日本には三菱電機や富士電機など世界のトップ10に入る『パワー半導体』メーカーが複数あるが、EVシフトへの期待感や積極的な『パワー半導体』の増産投資の動きから、関連銘柄は今後も注目を集めそうだ。
ただし、海外の競合大手は大口径のシリコンウエハーを使った生産コストの低減や、新素材を使った省エネ性能に優れる新しい『パワー半導体』への投資を積極化させており、競争環境の変化には注意が必要だ。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント株式会社
http://www.smd-am.co.jp
構成/こじへい