あの塚田農場が、タルタルソース専門店をオープン
「孤独のグルメ」の主人公のゴローを始め、男性に意外と多いタルタルソース(以下「タルタル」)好き=タルタリスト。「アジフライにもチキン南蛮にもエビフライにも、たっぷりかけたいのにいつも圧倒的に足りない」――そんな満たされない想いを抱いて生きているタルタリストに朗報だ。2021年9月14日、エキュート大宮内に(おそらく日本初の)タルタル専門店「ツカダファーム タルタルファクトリー」がオープンしたのだ。
運営しているのは、駅ナカやデパ地下などで中食事業を展開する「株式会社塚田農場プラス」。2021年9月14日から2022年3月31日までの半年間、期間限定のポップアップストアとして出店している。オープン翌日に、さっそく行ってみた。
▲「ツカダファーム タルタルファクトリー」(エキュート大宮内「food theater」ゾーン)営業時間:<平日>9時30分~22時 <土曜>8時30分~22時 <日祝>8時30分~20時30分 ※時短営業中、月~土21時閉店 ※テイクアウト専門
初めて訪れた大宮駅構内の予想外の広さに迷子になりつつ、テイクアウト用フードが集まったエリアの「food theater」ゾーンに到着。店舗中央の冷蔵ケースには一見、スイーツの専門店のようにカラフルな容器がずらりと並んでいる。その数、実に8種類!タルタリストたちの歓喜の雄たけびが、遠くから聞こえてくるようだ。
8種類のタルタルに、タルタルの“台”となるフード、お弁当まで販売
冷蔵ケースにはアジフライやエビフライ、ホタテフライなど、タルタルソースを味わうための「台」ともいえるフードがずらりと並んでいる。つまりこの店だけのワンストップで、豪華な“タルタルパーティー”ができる仕組み。
8種類もあるとどれを選べばいいのか果てしなく悩みそうだが、それぞれのフードと相性のいいタルタルソースの種類も表示されている親切さ。
冷蔵ケース左側では、ロケ弁グランプリなど多数の受賞歴を誇る塚田農場プラスのお弁当も各種販売。
検証①…8つのタルタルソースの味は?
8種類のタルタルソースは、50g入り(160円※税込み 以下同)と100g入り(300円)のプラカップで販売。「50g3種味くらべ」(450円)、「50g6種味くらべ」(900円)、「50g8種全部味くらべ」(1,200円)、「100g2種味くらべ」(580円)などがある。
▲「50g8種全部味くらべ」(1,200円)。きれいに並べられるジャストサイズのプラプレート付き
せっかくなので全種類食べてみたいと思い、「50g8種全部味くらべ」を購入し、それぞれを単独で味わってみた。
塚田農場の「若鶏のチキン南蛮弁当」などでおなじみの味「プレーン」。塚田農場こだわりの卵「塚だま®」の持つ濃い黄身の風味が自慢の定番タルタルだ。コクもあるが、ほどよい酸味もあって、なめらか。上品なタルタルという印象。
「明太子」は、予想していたほど明太子の風味や辛みは強くなく、ほんのり感じる程度。リリースによると「子供も楽しめるように」あえて穏やかな風味にしているとのこと。確かにこれなら子供の明太子デビューにはよさそうだが、大人の明太子好きならもう少し“追い明太子”をしてもいいかもしれない。
「アボカド」は、タルタルというよりクリーム系のソースのような非常に濃厚なコクに驚いた。原料表記を見ると、チーズも含まれている。バランスのとれた味だが、アボカド好きな人はアボカドの果実味がもう少し欲しいと感じるかもしれない。
上記3品は「上品で穏やかでリッチな風味のタルタル」という印象だったが、それがガラリと変わるのが、以降の5品。
「バジルトマト」は、トマトの酸味が爽やかで、タルタルでもあり、何かのお料理のソースのようでもある。リリースには「つけるに留まらず野菜に塗って焼くなどおもてなし料理への汎用性も高いソース」とあるが、確かにかけるだけですごい高級料理に化けそうな、ポテンシャルを感じる。
「カレー」は、本格的なスパイスの香りで強烈なインパクトのあるタルタル。このままカレー料理の一種として食べたくなる。リリースには「白身魚のグリルなどにも」とあるが、確かに料理にもいろいろ使えそうだ。
お弁当のコラボでも大好評の「岩下の新生姜」。予想よりずっと「岩下の新生姜」の配合量が多く、爽やかな刺激とタルタルのコクが相乗効果で感動の美味しさ。生姜のシャリシャリした食感もしっかり感じられて、これはハマる人が多そう。
「青唐辛子」は、味わった瞬間は「全然辛くない」と思いきや、時間差でキレのある辛みがいきなり来るので、かける量に注意を。油っこい料理をさっぱりさせてくれそう。
「いぶりがっこ」は、特有のスモーキーな香りとどこかなつかしいうまみが印象的。いぶりがっこのコリコリとした食感も楽しく、これだけ味わっても美味しい…と思いきや、これが他の食材と組んだ時、思いもよらない変化を遂げることを後に知る。
検証②…フライとの相性は?
最初に試してみたのは、「タルタルといえば◎◎」と誰もが思い浮かぶ鉄板の相棒、エビフライとアジフライ。タルタル好きの家人(夫)と2人で実食した。
タルタリストの家人は最初の「プレーン」で、
「おいしい!僕はこんなにいろいろなくても、プレーンだけでなんら不満はないよ」
と目を輝かせていたが…、
「カレー」をつけた瞬間
「・・・最強だな」
と絶句。続く「岩下の新生姜」にも激しく感動していた。確かにこの2つは男性好みのど真ん中の味。ちなみに家人は
「ひとつだけ選ぶならカレー、3つならプレーンとカレーと岩下の新生姜」
とのこと。
私が揚げ物に合うと感じたのは「バジルトマト」「青唐辛子」の爽やかな風味。そして「いぶりがっこ」の複雑なうまみ。いずれもフライが料理として、ひとつ格が上がるような気がする。
検証③・・・野菜との相性は?
フライを食べ続けて、少しもたれたので、野菜も試してみた。
試したのはブロッコリーと、
ショップで購入した「キタアカリ」(ジャガイモ)のフライ。
野菜では、フライの時とがらりと印象が変わった。フライによく合う「カレー」「岩下の新生姜」などのタルタルは味が強すぎて、野菜が負けてしまうのだ。
ここで最強だったのが、「いぶりがっこ」。野菜本来の風味を殺さず、上手に引き出して、うまみを膨らませてくれる。ブロッコリー、ジャガイモ、それぞれに異なるマリアージュがあり、いろいろな野菜に試してみたくなる。今回、私が一番ハマったのが、「いぶりがっこ」と野菜の組み合わせだ。
検証④・・・残り物料理にかけるとどうなる?
残ったタルタルを、冷蔵庫の残り物と組み合わせてみた。
左上から時計まわりに、「ファミマの冷凍ポテトフライ」「ミニトマト」「グリーンピースのサラダ」「ブロッコリー」(ショップで購入した)「エビとブロッコリーペペロン」。(写真には入っていないが)ポテサラ。
野菜はすべてはずれなし。切っただけ、煮たり焼いたりしただけでも、タルタルをかけるだけで立派な料理になるし、ひとつの食材でも味変ができるので飽きないし、意外なマリアージュを発見する楽しみもある。
検証⑤…最後まであまり減らなかったのは、どのタルタル?
そして意外なことに、最後まで残ったのは、家人が「最強!」と感嘆した「カレー」。決して味が他のタルタルに劣るわけではない。むしろ、何にでも合って、途中から「合わないもの」探しをしてみたが見つからなかったほど、合う(甘口の沢庵にも、べったら漬けにも合った)。ただ、味が強いので、他のタルタルよりもごく少量でちょうどいいのだ。
ポテトサラダに、ほんのちょっとトッピングしただけで、ガラリと味が変わる。他のタルタルと同じ量を乗せたら、完全に“カレーの何か”になってしまう。それがわかってからは、少量ずつ使うようになった。結果、最後まで残ったというわけだ。
その意味で、コスパを考えると「カレー」がダントツかもしれない。
検証⑥…トーストで真価を発揮するのは?
最後に、残り少なくなったタルタルをきれいに食べきるために、トーストしたパンを用意した。
するとこれがまた、意外なことに、揚げ物とも野菜とも違うタルタルが存在感をあらわす。味がマイルドな「プレーン」「明太子」「アボカド」の3種は、パンにつけるとその真価を発揮するのだ。パンの持つ甘みにまろやかなコクが加わることで、お互いを引き立て合う。
このタルタルだけでサンドイッチを作っても美味しそうだし、写真のように一口大にカットすればお酒のおつまみにも最高。ちょっと小腹が空いた時、バタートーストだけだと味気ないが、これだとちょっとしたご馳走になる。今回は食パンだったが、バゲットやフォカッチャだったら、バジルトマトや青唐辛子、岩下の新生姜も合うような気がする。違うパンでの味比べも試してみたくなった。
結論。とにかく楽しい!特別な料理をしなくても盛り上がる!
いろいろ試して驚いたのは、「タルタルだけでこんなに楽しめるんだ!」ということ。
フライ料理ひとつだけではなんということもないが、そこにタルタルがひとつあると気分がアガるし、多種類のタルタルなら食事時間もぐっと長くなり、お酒も進むし会話も弾む。あれもこれも試してみたくなり、それだけ出してもどうにもならない冷蔵庫の残り物も一掃。まさに「タルタルマジック」だ。
そして、「こんなに便利なら自分で作ってみよう」とはならないのも、タルタルの不思議さ…(地味に面倒だし、自分で作るとマヨネーズをケチって美味しくならなそうな予感)。今のところ、大宮のエキナカにしか店がないのが残念。塚田農場さん、多店舗展開をお願いします。
文・桑原恵美子
編集/inox.