フォルクスワーゲン・モデルすべてに共通するイメージは、やはり“実直”に尽きるだろう。それはハッチバックの雄たるゴルフはもちろん、ミドルクラスモデルのパサートにおいても然り。どのモデルをみても機能的で丁寧な造りが魅力である。その象徴たるパサート・シリーズがマイナーチェンジを受けた。新型のトピックは主に3つ。内外装のデザイン刷新とパワートレインの変更、そして運転支援システムの強化である。
スマートな小変更
新型パサート・シリーズは、外観上は一瞥しただけでは従来型と大差ないと思われるかもしれないが、実際にはフロントバンパー下の形状が改められて以前よりもややアグレッシブな表情になり、前後のエンブレムが新CIに沿ったものへと置き換えられた。内装では運転席まわりの清潔で機能的なレイアウトはそのままに、エアコンの操作スイッチをダイヤル式からタッチコントロール式に改めて使いやすさをさらにアップ。室温調整などがスマートに行えるようになった。
ボディタイプはセダン、ワゴン(ヴァリアント)、オールトラックの3種が用意され、エンジンおよびグレード展開が整理されている。ガソリンエンジンはこれまでの1.4ℓ直4ターボから、コモンレール式直噴システムを用いた最新世代の1.5ℓ直4ターボへ換装(2ℓ直4ディーゼルは変更なし)。トランスミッションはディーゼルも含めてすべて7速DSGの組み合わせとなった。セダンとワゴンは1.5ℓ直4ガソリンターボと2ℓ直4ディーゼルターボを軸に、それぞれにエレガンス(標準)グレードとエレガンス・アドバンス(充実装備仕様)を設定。ヴァリアントのディーゼル搭載車にはスポーティな仕立てのRラインが加わる(以上、すべてFWD)。ワゴンベースのオールトラックは2ℓ直4ディーゼルターボ+4WDのみとし、標準とアドバンスの2グレードを用意する。
最近の車の装備として見逃せない運転支援システムはというと、カメラやセンサー類が最新型に置き換えられ、機能制御の向上によって従来のTraffic Assistが「Travel Assist」に進化。アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープの協調制御の範囲が0〜60km/hから0〜210km/hまで対応可能になったことが新しい。
着実なレベルアップ
試乗車のオールトラックは、ワゴンをベースにSUVテイストを強めたモデルとあって、実直な造りのなかにも趣味性の高さを感じさせる一台だ。ヴァリアントよりも25mm高められたグラウンドクリアランスとパサート・シリーズ唯一の四駆モデルとあって道を選ばない頼もしさもある。実際に走らせてみると、2ℓ直4ディーゼルターボは走行中に無粋なガラガラ音や振動は伝えてこず、どの回転域からでももりもりと加速してくれるドラバビリティの高さが光っていた。パワートレインのマナーの良さは上位クラスのラグジュアリーモデルに匹敵するだろう。
高速道路でTravel Assistを試してみると、ACCの加減速やレーンキープの制御が一段とスムーズになったように感じた。ステアリングに静電容量式センサーが備わったからだろう、手を添えておくだけでシステムが継続的に作動してくれているから、ステアリング保持の注意喚起にいちいち反応しなければならない煩わしさからも解放された。
取り回しや奇を衒ったところのない使い勝手の良さ、安定感のあるフットワークはマイナーチェンジ版でも健在だ。そのうえで今回のような細かなブラッシュアップの積み重ねが実力のさらなるレベルアップにつながっているのは間違いない。特にオールトラックはグラウンドクリアランスの高さと緻密な制御の4WDによる安心感で、たとえば雪深い道でもバックカントリーに分け入っていける頼もしさもある。長く使える道具はこうあってほしい、そんなお手本ともいえるのがパサートというモデルである。
32個のLEDが自動で最適な配光を実現するヘッドライト“IQ.LIGHT”が全車標準となる。
基本レイアウトはそのままに、エアコン調整がタッチコントロール式となった。
後席は上級サルーンなみの足元スペースが確保されており、リラックスして過ごせる。
余計な張り出しがなく床面もフラットで使いやすいラゲッジルーム。
セダンは車高が高いオールトラックよりも動きが素直。フォーマルなシーンには最適だ。
スペック
モデル名:フォルクスワーゲン・パサート・オールトラック・アドバンス
価格:6,049,000円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,785×1,855×1,535mm
車重:1,740kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:7速AT
エンジン:直列4気筒ディーゼルターボ 1,968cc
最高出力:140kW(190PS)/3,500〜4,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,900〜3,300rpm
問い合わせ先:フォルクスワーゲン 0120-993-199
TEXT:桐畑恒治(AQ編集部)