新型コロナウイルスの感染拡大により申請件数が増加している制度、「雇用調整助成金」。注目が集まっている制度でありながら、’’誰がいくらもらえるのか分からない’’と疑問を抱いている方も少なくないはずだ。
そこで本記事では、雇用調整助成金の概要をわかりやすく解説する。特例措置についても併せてチェックして、この機会に理解を深めてほしい。
雇用調整助成金とは
まずは、雇用調整助成金がどのような制度なのかについて解説する。基本的な部分を理解しておこう。
雇用維持を助ける制度
雇用調整助成金とは、事業主が労働者に休業手当などを支給する場合に、その一部を国が助成する制度のこと。景気の変動や経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業が「雇用調整」を行い、従業員の雇用を維持した場合に適用される。雇用調整助成金は、事業者に対する支援を通じて従業員の雇用を保護する仕組みであり、労働者個人が受給することはできない。
対象となる「雇用調整」とは?
雇用調整助成金を受給するためには、雇用調整として「休業」「教育訓練」「出向」のいずれかを計画・実施しなければならない。雇用調整助成金制度における「休業」は、労働者に働く意思と能力があるにもかかわらず労働できない状況を指し、ストライキや有給休暇などは支給対象外となる。
助成金の内容
事業主が雇用調整を行った場合の負担額(休業手当・教育訓練を行った場合の賃金相当額・出向を行った場合の出向元事業主の負担額)に対する助成率は、大企業で2分の1、中小企業で3分の2ほど。また、教育訓練を実施した場合は、従業員一人あたり1日1,200円が加算される。ただし、雇用保険基本手当日額の最高額(令和3年8月1日現在で8,265円)を上限とする「日額上限」がある点に留意したい。
休業と教育訓練の場合はその初日から1年間に最大100日分、3年間に最大150日分の受給が可能。出向の場合は、出向期間中(最長で1年)受給することができる。
支給要件と申請方法
では、具体的にどのような場合に助成金が支給されるのだろうか。対象者や受給するための要件について見ていこう。
主な支給要件
雇用調整助成金は、売上や休業などに関する一定の要件を満たす場合に支給される。主な要件は以下の通り。
【支給要件】
・雇用保険の適用事業所であること
・売上高や生産量など事業活動を示す指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期と比較して10%以上減少していること
・雇用保険被保険者数や受け入れ派遣労働者数による雇用指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期と比較し、中小企業の場合は10%超かつ4人以上、中小企業以外の場合は5%超かつ6人以上増加していること
・労使協定に基づいた休業などを実施していること
・過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設ける場合、直前の対象期間の満了日の翌日から起算して1年を超えていること
申請方法
支給申請は、雇用調整の実績をもとに支給申請書を記入し、必要書類とともに都道府県労働局またはハローワークに提出する方法で行う。また、申請は「支給対象期間」ごとに行う必要があり、申請期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内となっている。なお、専用の受付システムを利用することでオンラインでの申請も可能だ。
支給までの流れや申請方法のマニュアルは、厚生労働省の公式サイトで確認することができる。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例
2021年(令和3年)9月現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、雇用調整助成金について受給条件緩和などの特例措置が実施されている。
特例措置の概要
今回の特例措置は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の対象区域(職業安定局長が定める区域)において、都道府県知事の要請に協力した事業者を対象としている。特例の適用を受けた場合、助成率を最大10割・日額上限最大1万5,000円とする引き上げが行われる。また、申請にあたり計画届の提出が不要となる点もポイント。
いつまで適用される?
特例措置の適用期間(緊急対応期間)は、緊急事態措置の実施状況に鑑みて延長が発表されている(2021年9月現在)。当初の適用期間は2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)9月30日であったが、今回の発表により2021年(令和3年)11月末までとなる予定だ。
文/oki