2020年から続く新型コロナの影響もあり、多くの人がテレワークのために自宅の作業環境を整えたことでしょう。筆者も同様に、自宅で快適に作業ができるようにモニターやキーボードといったPC周辺機器を一通りそろえましたが、いまいち納得がいっていなかったのがオーディオ周りです。
というのも、普段筆者は完全ワイヤレスイヤホンを使用しているのですが、バッテリーや音の遅延といった観点から作業中に音楽を聴き、オンライン会議に出るといった使い方ではやや不安。有線イヤホンを使えばいいのですが、動きがPC周辺に制限されるためあまり快適とはいえません。
そこで、北欧のゲーミングデバイスメーカーである「SteelSeries(スティールシリーズ)」のゲーミングヘッドセット「Arctis 9 WIRELESS」を数日間試してみました。筆者のように、テレワーク時のオーディオ環境を見直したいという人はぜひチェックしてみてください。
超安定した接続性と厚みのある音質が魅力のゲーミングヘッドセット「Arctis 9 WIRELESS」
Arctis 9 WIRELESSは、公式HPでの販売価格が219.99ドル(執筆時点のレートで約2万4150円)のワイヤレスヘッドセット。ちなみにヘッドセットとは、主にヘッドホンにマイクによる音声通話機能がついているものを指します。
【参照】SteelSeries Arctis 9 WIRELESS
ヘッドホン/ヘッドセットは、数千円のものから販売されているため、約2万5000円という価格を一概に安いともいえないのですが、ある程度本格的なオーディオ製品を求めるのであれば決して高くはない価格でしょう。
大切なのは、約2万5000円を出しても満足できる性能/機能を有しているかです。早速、具体的に数日間「Arctis 9 WIRELESS」を使用したうえでレビューをお届けしていきましょう。
着け心地抜群のヘッドバンドと20時間のロングバッテリー搭載で長時間利用も◎
「Arctis 9 WIRELESS」は一見普通のヘッドセットですが、まず特徴的なのが着け心地の良さです。バンド部分は耐久性に優れたスチールヘッドバンド構造を採用しており、安定感が抜群。頭に当たる部分は一般的なヘッドセットに用いられるレザー素材などとは違い、スキーゴーグルのようなサスペンションヘッドバンドになっています。
圧迫感や窮屈感がなく、触り心地が良いため長時間着けていても疲れにくいのがポイントなのですが、特に便利なのが、自分でバンドの長さを調節しなくても、装着することで自動的にヘッドバンドが頭にフィットするようになっている点で、ヘッドホンならではの「いまいちサイズの調節がうまくいかない」といった心配はありません。
バッテリーは最長で20時間以上の連続使用が可能となっています。ワイヤレスヘッドホンとしては決して長いわけではありませんが、ゲーミングヘッドセットとしてはかなりの長時間駆動です。20時間あれば、作業中に音楽を聴くのに使った上に、オンライン会議でもそのまま用いるといった使い方もできるでしょう。
一点気になるポイントとしては、充電を近年一般的なUSB Type-CではなくmicroUSBにて行う点です。ノートPCやAndroidスマートフォン、ワイヤレスイヤホンのほとんどはUSB Type-Cにて充電を行うため、ケーブルの使いまわしができないのが残念なポイントですが、本製品は自宅で使うことがメインと考えると、専用のケーブルを一本用意しておくのもありでしょう。
安定した接続性とマイク性能こそゲーミングヘッドセットの魅力
冒頭でも触れた通り、個人的には「Arctis 9 WIRELESS」をテレワークに用いるのがおすすめだと考えているのですが、その大きな要因が「接続性」と「マイク性能」にあります。
一般的なワイヤレスヘッドホンはBluetoothを使ってPCやスマートフォンと接続します。本製品もBluetoothによる接続は可能ですが、加えて同梱されている「ワイヤレストランスミッター」をPCと接続すれば、2.4GHzでの無線接続が可能です。
2.4GHzは、ワイヤレスマウスやワイヤレスキーボードでも使用されている規格で、専用のハブを使ってデバイス間を接続することもあり、Bluetoothよりも安定した接続が可能。加えて遅延も少ないため、オンライン会議や動画視聴に用いても有用です。
筆者は普段、遅延や接続性の観点からオンライン会議には有線イヤホンを用いて参加しているのですが、本製品を2.4GHzで接続して使用すると有線接続に近い安定感と低遅延が体感できました。
また、接続しているデバイスから少し離れても音楽が途切れることがなく、ワイヤレスならではの快適さも得られます。作業中に少し席を立ち、洗濯物を干すといった際にもそのまま音楽が聴けるのは嬉しいポイントでした。
マイクは双方向デザインを採用しており、ノイズキャンセレーションを実現しているため、通話相手にクリアな音声を届けられました。低遅延や接続性、音声の品質が求められるゲーミング仕様ならではの良さを存分に感じられます。
さすがゲーミングヘッドセット! 臨場感と音のキレが魅力
音質としては、まず音の定位がはっきりと感じ取れるため臨場感を再現する力に優れている印象を受けます。FPSゲームなどをプレイする際にはどの音がどこから聞こえるかが重要になるので、ゲーミングヘッドセットとしてこだわられていて当然とも考えられますが、一般的な音楽を聴いたり、ライブ映像を見る際にも迫力を演出してくれます。
音の広がりや臨場感が優れているのと同時に、細かい音までがしっかりと耳に届きます。音のキレやツブ感が抜群なので、スピーカー再生では聞き取れないハモリの声やベースの響きが感じられました。低音の鳴りよりは、中高音域の精細さに強みを感じる製品です。
ゲーミングヘッドセットはテレワークのオーディオ環境に最適!?
紹介してきた通り、「Arctis 9 WIRELESS」はゲーミングヘッドセットとして高い接続性や低遅延、マイク性能を備えながら、精細でクリアな音質と臨場感を兼ね備えた製品。
もちろん、従来の目的通りゲームプレイ時に使用するのも良いですが、バッテリー性能なども踏まえテレワークでも大活躍できるでしょう。約2万5000円と安価ではありませんが、費用対効果という面では満足度の高い製品になっています。
取材・文/佐藤文彦