トーベ・ヤンソンの名を冠する公園がもともとあるなど、フィンランド共和国と関わりの深い飯能市に、北欧のライフスタイルを体験できるメッツァビレッジが開業したのは2018年のこと。
2019年には同一敷地内の隣接エリアにムーミンの物語をテーマにした「ムーミンバレーパーク」がオープンし、2つのエリアをあわせて複合施設「メッツァ」が揃ったことになる。
この「メッツァ」にて、2021年11月28日(日)までの金、土、日、祝日限定で、アウトドアサウナイベントが開催中。サウナファンなら気にせずにはいられないこのイベントに、さっそく足を運んできた。
北欧ライフスタイルのテーマパーク内にて開催
「メッツァ」に足を踏み入れると、頭上の緑を埋めつくすように咲き誇る傘に目を奪われる。これは2012年にポルトガルのちいさな街で芸術祭の一環として始まった“アンブレラスカイ”を取り入れた「森と、湖と、アンブレラと。」というイベントで、開催期間延長のため、思いがけずご相伴(?)にあずかることができた。
この幻想的なトンネルを抜けると見えてくるのは、北欧のライフスタイルを、ショッピングや飲食などで楽しむことができる「メッツァビレッジ」。そこで左に曲がると「ムーミンバレーパーク」だが、「アウトドアサウナ in メッツァ」はここで右折して直進したところにある、宮沢湖畔を臨む一角にて開催されている。
イベント会場に到着すると、まず目に入るのが牽引式のトレーラーサウナ・アセマ、その奥にフィンランド製のテントサウナ(R)サヴォッタ2台が並ぶ。いずれも薪焚きのフィンランド式サウナが楽しめる。
今回のイベント「アウトドアサウナ in メッツァ」を主催しているのは、株式会社温泉道場。「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」「おふろcafe」シリーズ、「ときたまひみつきちコモリバ」など、日帰り温泉の運営を通じて地域活性化の実現をめざす、いわば「街のおふろのプロ」。
「アウトドアサウナ in メッツァ」開催にいたる経緯を、株式会社温泉道場 執行役員 兼 事業本部 統括支配人の松澤 修氏に伺った。
株式会社温泉道場 執行役員 兼 事業本部 統括支配人の松澤 修氏
―どんな経緯でこのイベントを開催することになったのですか?
松澤さん(以下、松澤)「もともと飯能市がフィンランド推しで、その中でメッツァさんが、フィンランドの体験ができる施設として運営されているにも関わらず、サウナがない。それがもったいないと、ずっと思っていたのです。
そこからコミュニケーションを重ねるうちに、この場所ならいいよと許可をいただきまして。見てわかるよう、この湖畔の最高のロケーションで始めることができました。
とはいえ、最初は湖に向かって常木や草が生い茂っていたんですよ。そこを取り払ったらいいかもと思っていて取り払ったら、こんな風光明媚な光景が広がっていました」
―本当に土地づくりからのスタートですね。
松澤「はい。今までメッツァにないのが不思議だったサウナを、アウトドアサウナにぴったりのロケーションにつくりました。
この素晴らしいロケーションだけで成立すると思ったので、めちゃくちゃ工夫をこらしたり、変に飾りなどの作り込みもあえてしませんでした」
―なんでも排水用のパイプまで完備されているとか。
松澤「そうなんです。掃除も拭き上げるだけでなく、きちんと水をかけて綺麗にできるようにしてくださいと保健所から言われているので、掃除した水を排水できる排水管を設置するのに150万円かかりました」
―3か月のイベントにずいぶん贅沢な装備ですよね。
松澤「テントサウナを張りっぱなしにすると、公衆浴場法に基づいた営業許可を保健所にもらわないといけないんですね。
おしゃれサウナのイベントとかでは許可を取らずに開催されているものが多いですが、私たちはおふろやさんなので、今回は3か月という期限を決めて、保健所の許可をきちんと取って運営しています」
―3か月後にまた再開ということも視野に入っているんですか?
松澤「テントサウナを3か月張りっぱなしにしていると、痛みなどもあると思いますので、そのメンテナンスなども考えて、3か月で一旦は終了するのは変わらないですね。その先はその時点での検討になるかと」
―3か月で配管代を回収できるでしょうか…(余計なお世話)。
松澤「我々の会社、変な話、このイベントで利益をだそうと思っていないんですよ」
―エッ。
松澤「赤字ならないようにとは言われていますが、もともとが“あるべきところにサウナがないのはおかしい”という想いでスタートしているので。だったらうちの会社がやるべきだよね、という感じで。というかこの規模で大きく利益を出すのは絶対に無理ですよ(笑)」
―人数制限もされていますもんね。
松澤「トレーラーサウナとか、もともと会社で所有しているものを持ってきていたり、なるべく余計にお金をかけないように設営してなんとかなるかどうか…、っていう感じじゃないですかね。でも目的は儲けじゃないので」
―サウナの奥にはBBQエリアもありますね。
松澤「そうなんです。BBQはオプションとして別プランでつけることができます。ロケーションがいいので、サウナ入らない人もBBQは充分楽しめるのではないかと。
緊急事態宣言が開けないとお酒は飲めないですが最高の場所ですよね。お母さんと子どもがBBQしていて、お父さんはちょっとサウナ入ったり、ムーミンバレーパークの前後に寄ったりね。
実は今回のイベントは子どもの制限をしていなくて、1000円で参加できるんです。サヴォッタのテントサウナは70℃くらいまでしか温度が上がらないので、サウナデビューにはちょうどいいんですよね」
―ご家族でアウトドアサウナを楽しめますね。
松澤「僕の中では、アウトドアサウナって普通のサウナとはちょっと別のものという感覚があって、半分遊び感覚でやっておりますので、ロケーション含めたアウトドアサウナ体験をみなさんに楽しんでいただけたらと思います」
テントサウナの原点に還るような体験
筆者たちもさっそくアウトドアサウナを体験することに。フィンランド製のテントサウナ(R)サヴォッタは、断熱材などを挟まない、無骨ともいえるほどシンプルな仕立てが特徴だ。
機密性を高めたつくりではないので、温度はそこまで上がらないため、熱いのが苦手な人でもゆっくりじっくり入ることができる。
「アウトドアサウナ in メッツァ」では下にも別途シートを貼り、サウナ内で発生する水分は完全に排水菅を通して排出するように設営。は排水を自然にそのまま垂れ流してはいけないという項目が公衆浴場法にあるため、その対策としての、インタビューにも登場した“排水管”設置なのだ。
薪から発生する熱気にほどよく蒸され、外に出ると目の前に広がるのは宮沢湖。圧倒的解放感を得ながら、水シャワーで汗を流して水風呂へドボン。
ここからも湖を望むことができ、すでに解放感に溢れているが、湖畔のデッキでの外気浴は、贅沢この上ないおもてなしを受けているかのよう。
この日は小雨混じりの曇り空という悪天候だったが、宮沢湖やそれをとりまく木々が幻影的な雰囲気を醸しだし、これはこれでいいぞ…!と自然と気候を慈しんだ。
扉の向こうには湖、まるで気分はフィンランド
トレーラーサウナは、密閉性が高くしっかり温まれるのが特徴。こちらも薪ストーブからの贅沢な温熱を味わいながら、扉の向こうに広がる宮沢湖を眺めることができる。
なかなかサウナに入ったまま絶景を目にする体験はできないので、これもこのロケーションならではの贅沢。
外を眺め、ぼんやりしているうちに温まり、また水風呂、外気浴と廻っていると、永遠にこのループを繰り返したいような気持が沸いてくるほど、シンプルに自然とサウナに没入できるアウトドアサウナ体験を堪能することができる。
会場には男女別の着替え用テントのほか、簡易シャワーもあるが、メッツァの並びには「宮沢湖温泉 喜楽里別邸」がある。入浴のみだと土日でもタオルセット付きで1,050円で入れるので、そちらに寄ってゆっくり汗を流して着替えて帰るのもオススメだ。
「アウトドアサウナ in メッツァ」
開催期間:開催中~2021年11月28日(日)
時間:
〇サウナ…10:00 / 12:00 / 14:00 / 16:00 / 各回100分制
〇B.B.Qサイトレンタルプラン…10:00~18:00 / 240分制
参加費:
〇サウナ…大人:4,400円(税込)子ども(中学生以下):1,000円(税込)
〇B.B.Qサイトレンタルプラン…1サイト:14,800円(税込)
予約URL:https://reserva.be/metsasauna
※裸、上半身のみ裸での利用は不可。
※水着及び施設指定のTシャツ着用必須。
※緊急事態宣言中は酒類の持込み、提供は不可。
お問合せ先:株式会社温泉道場 049-292-7889
取材・文/安念美和子(nenko)