副業のプロが伝授する、副業の概念を根本から変えて人生を豊かにするヒント
コロナで仕事が減ってしまい、給料も減ってしまった。今のところ生活には困らないけれど、できればもう少し、貯金を増やしておきたい。
そんな時に出会ったのがこの「自由にはたらく 副業アイデア事典」(中野貴利人著、SBクリエイティブ刊、定価:1,650円)だ。これまでの副読本の様に「毎月いくら稼げる」とか、「この職業が狙い目」といったキャッチーなフレーズが全く出てこない。
それどころか、副業は「楽(ラク)ではなく楽(たの)しく」、とか、「長期的なマネープランを描く」、など、ちょっと意外な視点で説得力がある。これならば失敗を繰り返していた自分でも副業が見つかるような気がしてきた!
今回は著者の中野貴利人先生に本当に成功する副業のポイントを教えてもらった。中野先生、よろしくお願いします!
目標を設定すると副業は成功しやすい
―まず大前提として、副業は誰でもできますか?自分は飽きっぽくて、ゲームでもなんでも夢中になりますが、すぐに飽きてしまいます。
中野:副業は誰でもできます。副業マッチングサービスがあるおかげで、今はあらゆる仕事を副業に選べる時代になりました。その中でも自分の好きなこと、特に興味関心があることを副業に選べば、継続しやすいでしょう。副業ですので途中で辞めても、別の職種に変えても構いません。気軽にいろいろ試してみて、自分に合う副業を選んでいただけたらと思います。
副業を続けたいのに続かないという人は、先に何のために副業をするか、目的を設定することがおすすめです。漠然と「副業で収入が増えたらいいな」では、本業の仕事で忙しく疲れている中、すぐにやる気が失せます。
副業とは問題の解決策です。当時、私は「奨学金返済による生活費の圧迫」という問題を抱えており、節約、投資、残業、出世、転職といった解決策を試していました。ただ、どれも確実性とスピード感に欠けており、馴染みませんでした。
そこで副業です。私は「2年以内に奨学金を完済したい」という数値目標を設定し、そのゴールに向かって副業を始めてみたところ、自然と体が動くようになりました。
副業の目的は人それぞれです。「収入、キャリア、人脈など物足りない部分を補う」、「将来性、転職、独立を見据えた準備をする」、「達成感、社会貢献、楽しさといったやりがいを求める」などがあります。どれか1つでも複数でもいいので、今の本業では到底実現できない目標を副業で目指すことで、副業は続けられるようになります。
副業を後押しする社会状況が整った
―なるほど!でも、どうして今、副業なのでしょうか?
中野:副業をしやすい条件と環境が整いました。
副業を始めるきっかけは多くの調査で「収入を増やしたい」が第1位です。国税庁の調査でも、日本人の平均年収は2000年の461万円から、2019年の436万円まで落ち込んでいます。それに加え、税金と社会保険料の負担は年々増えており、手取り額はそれ以上に少なくなりました。
本業のみで豊かな暮らしを享受できる時代は終わり、第2の収入源を確保しようと動き始めているわけです。
政府もモデル就業規則やガイドラインを改定し、副業を後押しするようになりました。企業は時間外労働の上限を守るようになり、徐々に在宅ワークも浸透しています。厚生労働省の調査によると、日本人の平均年間労働時間は2000年の1853時間から、2019年の1669時間まで減少し、空き時間が年間184時間も増えました。
このように収入が減少し、空き時間が増えている事実から、今副業をスタートして、将来へのリスクヘッジとする選択肢は正しいと思います。
手っ取り早い副業サイトには特性がある
―最近、ネットでも副業紹介サービスはとても増えていますね。自分に合うサイトかどうかはどこで見分けられますか?
中野:副業マッチングサービスも250種類以上になりました。クリエイティブ系のみではなく、事務、営業、マーケティング、コンサルのように、今の本業で使っているスキルを、そのまま別の企業に応用できる案件が多々あります。また副業ではベビーシッターや家事代行といった日常のお手伝いも人気です。
しかし、すべてを取り扱っている副業マッチングサービスは存在しません。それぞれに得意分野がありますので、まずは職種でどの副業マッチングサービスに登録するかを絞りましょう。
私が取材した人ではパーソナルスタイリスト、日本語教師、ウェディングムービー制作、占い師、ヨガインストラクターなど、みなさん多様な職種で活躍されており、それぞれ別の副業マッチングサービスを利用しています。
大手であればクラウドワークスが有名ですが、コンサル業務を受けるならビザスク、オンライン講座を開くならストアカ、ハンドメイド品を販売したいならCreemaのように使い分けます。
例えば、土日にフォトグラファーやエアコンクリーニングといった生活領域の案件なら、ミツモアというサービスで集客できます。ちなみにどのサービスも本業で使っている人もいますし、副業で使っている人もいて、案件を獲得するツールとして浸透しています。
取材に裏付けられたデメリットも掲載
―この本では副業を100に分けてそれぞれ必要なスキルなど細かく紹介されていました。読んでいるだけでも何だか楽しい!
中野:ありがとうございます。ただ私自身が経験者であることから書きやすかったです。私は新卒でシステムエンジニアとして働いていましたが、そのときから副業を始めており、最初の副業はブロガーでした。
それ以外でもせどり、ネットオークション、輸入ビジネスといった転売系、イラストレーター、ウェブライター、サイト制作といったクリエイティブ系、講師業、コンサルティングなど、多数の職種を経験しています。また現在の本業の職種はコンテンツマーケターですので、マーケター領域は実務レベルで記述できます。
さらに副業者への取材も何十人に行っており、そういった過去の経験が本著に生かされています。
―そのほか、この本で「ここだけはぜひ読んで欲しい」部分はありますか?
中野:メインコンテンツではないのですが、あとがきは読んでほしいです。あとがきには副業で活躍中の人を取材したときの声が載っています。
27歳の女性は「今の副業を通して、いろんな人と深く関わる機会を得て、私の人生が彩り豊かになっているのは間違いないでしょう。友人や知人とつながることとはまた違います。本来ならつながることのない人と副業で繋がり、その人の人生に関われることは刺激的であり、私にとって生きる糧にもなっています」と述べていました。
副業の奥深さを感じられて、副業をやってみたいという気持ちになるかもしれません。
副業で人生が彩り豊かに
―それはすごく良いですね!逆に陥りやすい失敗ポイントはありますか?
中野:副業は空き時間で収入を得る行為ですので、ノーリスクミドルリターンです。
副業が成功せず、挑戦したがゆえに時間を無駄にする可能性もありますが、本質的な失敗ではないでしょう。副業による本当の失敗とは「本業に悪影響を及ぼす」ことです。副業とは本業ありきであり、仮に副業のせいで本業に迷惑をかけて、組織や上司から評価が下がってしまうと、元も子もありません。
例えば副業で本業の社名や名刺を使って、信用を失墜させてしまったり、本業の社内情報や個人情報流用して、秘密保持を破ったり、本業の時間に副業の仕事をして職務に専念しなかったりする人が後を絶ちません。
原則、副業する行為そのものは自己責任にあり、本業に悪影響を及ぼしたことで懲戒処分となった人もいます。過去に私が副業の取材を受けたときは「副業はデザートである」と答えました。本業という主食がなくては、副業もおいしくありません。本業に物足りない部分を副業で補う意識が大切です。
―逆に副業に向いている人とは?
中野:満たされている人、恵まれた環境にいる人がわざわざ副業をやらないですし、向いていません。逆に現在に満足せず、将来に危機感や期待感を抱いている人は、副業に向いています。何かしら「将来を変えたい」という欲こそが、行動力を生むでしょう。
そういう意味では自分をアップデートさせたいと思っている人にもおすすめです。
副業では学歴や年齢はあまり関係ありません。純粋に何ができるか、何を価値提供できるかで、その等価交換として報酬を受け取ります。本業では客観視できなかった自分の市場価値もわかりますし、副業でさまざまなスキルやキャリアを磨くことで、自分自身が成長できます。副業は収入目的の人が多いですが、将来や成長といったプラスアルファの目的が副業継続のポイントであり、そのような意識がある人は副業に向いています。
副業にはさまざまなカタチがある
―最後にメッセージをお願いします。
中野:副業とは働き方の多様性とも言われています。本業に添えるだけが副業ではありません。複数の本業を持つマルチキャリア、転職目的の社会人インターン、仲間で始めるスモール起業、収入より公共善のためのプロボノも、副業の一種です。
不確実性の高い時代を柔軟に生き抜くために、みなさんもぜひ副業を始めてみませんか?過去とはまた違った世界が見えてくるはずです。
―ありがとうございました!ぜひやってみます。
中野先生の言葉に背中を押されて、副業をしてみたくなった。自分の好きなことを仕事にできるかもしれないという点も、ちょっと嬉しい。それなら多少報酬は低くても、楽しくやれそうな気がする。副業に対する視点や捉え方が変わる一冊となった。
著者・中野貴利人
文/柿川鮎子
編集/inox.