「思慮」と「分別」、どちらも同じような意味を持つ言葉から成る四字熟語「思慮分別」。「思慮分別のある行動」のように、日常的に用いられる言葉だ。本記事では、「思慮分別」の意味と四字熟語を構成している二つの熟語のそれぞれの意味、類語などの関連表現を解説する。正しい意味を理解し、ぜひ「思慮分別のある行動」を心がけてほしい。
「思慮分別」とはどういう意味?
「思慮分別」の読み方は、「しりょふんべつ」。「分別」の読みは「ぶんべつ」ではない点に注意しよう。冒頭でも触れたとおり、「思慮」と「分別」の二つの熟語を組み合わせた四字熟語で、「注意深く考えをめぐらし、物事の道理や善悪などを判断すること」という意味を持つ。では、「思慮」と「分別」のそれぞれの意味をみていこう。
「思慮」の意味は「注意深く心を働かせて考えること」
「思」と「慮」はどちらも同じような意味を持っており、「思慮」は「将来どうなるか、自分はどう行動すればいいかについて、注意深く心を働かせて考えること」を表す。「思」という漢字は「思う/考える」などの意味を持ち、「慮」は「慮る(おもんぱかる)」とも読み「深く考えをめぐらす/じっくり考える」などの意味を持つ。そのため、「思いやる」や「気遣いができる」という意味がある言葉と誤解されがちだが、本来「思慮」という言葉は「理性的に判断して考える」という意味の言葉であり、思いやりなどのニュアンスは含まない。
「分別」の意味は「道理をよくわきまえていること」
「分別」には、「ふんべつ」と「ぶんべつ」の二つの読み方があり、読み方によって意味が異なる。「思慮分別」や「物事の分別をわきまえる」などの「ふんべつ」は、「道理をわきまえていること、物事の善悪や損得についてよく考えること」を表す。一方、「ごみの分別」などと使われる場合は「ぶんべつ」と読み、「種類によって分けること。区分すること」を指している。
「思慮深い」とは「物事を注意深く十分に考えること」
「深く考えをめぐらす」ことを意味する「思慮」に、程度を表す「深い」を合わせた「思慮深い」という言葉がある。「物事を注意深くじっくり慎重に判断する」こと、またそのさまを言い表す言葉の一つだ。反対に「思慮が浅い」と言う場合は、慎重に物事を判断せず、短絡的なことを指す。
「思慮分別」の類語、対義語
ここでは、「思慮分別」の類語と対義語を紹介する。関連語を知って、思慮分別の意味をより深く理解してほしい。
類義語「熟慮断行」
熟慮断行は「じゅくりょだんこう」と読み、「十分によく考えた上で、行動を決定すること」という意味を持つ四字熟語。「熟慮」とは「時間をかけて十分に検討する」ことを表し、「断行」は「反対を押し切り、実行すること」を意味する。
対義語「軽挙妄動」
思慮分別の対義語である四字熟語「軽挙妄動」は、「けいきょもうどう」と読み、「何も考えずに軽々しく行動すること」という意味を持つ。「軽挙」は「軽はずみな行動」、「妄動」は「考えもなく軽々しく行動する」という同じ意味合いの熟語で構成されている。
対義語「軽率短慮」
軽率短慮は「けいそつたんりょ」と読み、「軽々しく物事を決めたり、行動したりすること」を指す。「よく考えずに軽々しく行うこと」を意味する「軽率」と「慎重さや思慮に欠け、考えが浅はかなこと」を意味する「短慮」を合わせた四字熟語だ。
「思慮分別」を英語で表現すると?
最後に、「思慮分別」を使った英語表現を紹介する。抽象的な表現であるため、いくつかの単語を組み合わせて表現することもあるが「自由、裁量」などを意味する「discretion」や、「(頭を使って)考える」の意味の「thought」、「判断能力、道徳的な考え」を意味する「sense」や「reasonable」などで表現することができる。
「思慮分別がある」の英語表現
「思慮分別がある」の英語表現としては、「判断」を意味する「judgement」を用い、「discreet and well advised judgement(分別のある慎重な判断)」「wise and mature judgement(賢明で慎重な判断)」がある。
「思慮分別がない」の英語表現
「思慮分別がある」と反対の意味を持つ「思慮分別がない」は、「欠けている」という意味の「devoid」を用い、「devoid of sense(道徳的な考えが欠けている)」と表現できる。また、「軽々しい、慎重さに欠ける」といった意味の「indiscreet」も英語表現で用いられることも多い。
文/oki