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乗ってわかったホンダのコスパ最強SUV「ヴェゼル」が売れている理由

2021.09.12

 そのサイズやパッケージングが多くの人の支持を集め、何度もSUVの年間販売台数1位となったホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」が今年初めてのモデルチェンジを行なった。初代「ヴェゼル」が登場してから8年。その間、SUV市場はどんどんとモデルも増え、なかでもコンパクトSUVは、輸入車も含め激戦区となっている。

 そんな中、「ヴェゼル」はコンパクトSUV界のマーケットリーダーとして、ユーザーを獲得してきたことはもちろん、ライバルメーカーを刺激するベンチマーク的な存在だった。他を圧倒するパッケージングが最大の魅力だが、これは初代「フィット」(2001年)から採用を始めた、ホンダが「センタータンクレイアウト」と呼ぶ、ガソリンタンクを前方(車体中央)に配置するレイアウトの長所がしっかりと活かされたものだった。

 床がフラットで、広さも十分な後席からラゲージスペースにかけての広さと使い勝手のよさが特徴だ。他ブランドとは一線を画す、スペースを活かした収納アレンジに魅力を感じてこのクルマを選ぶ人も多い。このレイアウトは現在もホンダの多くの小型車に採用されている。もちろん、新型「ヴェゼル」にも、このレイアウトをベースとするパッケージングが踏襲されている。

 一方で、エクステリアのデザインは大きくイメージチェンジを図り、あらゆる点においてクオリティーがアップした。パワートレーンについては、市場でも主力となっているハイブリッドモデルに最新の2モーターシステムを採用した。守りどころと攻めどころをバランスよくおさえている。

室内の広さは圧巻!

 というわけで、まずは「ヴェゼル」の特徴でもあるパッケージングから紹介したい。ボディーサイズに大きな変更はないが、フラットフロアが特徴でもある後席の足下スペースは35mm延びて、ますます広さが増した。コンパクトモデルにおいて、室内スペースが広くなったことはとても大きなポイントだ。

 また「載せるものから逆算した」という積載力、収納力は相変わらずで、ラゲージの収納力もこのサイズとしては十分だ。さらに「ヴェゼル」は、後席の座面を左右分割して跳ね上げる「チップアップ機構」を採用しており、1225mmという室内高と「センタータンクレイアウト」が可能にしたフラットスペースの活用幅はとても広く、ベビーカーを立てて収納することもできるという。

 ただ、気になる点がないわけではない。ほどよいクッション性をもつシートに沈み込むように座れる座面はさておき、背もたれがフラットでサポート性に欠ける点が惜しい。その代わりと言っては何だが、背もたれを倒してラゲージスルーの状態になる時はフロアがフラットになる。

 実際に、多くのクルマが座ること(快適性)と積むこと(実用性)のせめぎ合いをしていて、特に、このクラスで両立させるのは難しいと言われてきた。つまり、理解はできるが欲を言えばキリがない、と思えるほど突っ込みどころが少ないクルマだということも触れておきたい。

 そんな後席には、充電ポートが2基用意され、おまけに充電中のスマホを収納しておくポケットまで用意されている。さり気ない配慮がうかがえる。加えて、新型「ヴェゼル」には、ハンズフリーアクセスパワーテールゲートに「私が立ち去る時に閉めてね」的な閉扉の予約(設定次第でその後の施錠まで)をボタンひとつでできる機能が追加されている。どういう使い方をするかにもよるが「ヴェゼル」のリッチな空間を活かす工夫が詰め込まれたパッケージングになっていることは間違いない。

居心地のいい室内空間

 デザインはご覧のとおり、大きく変わった。スリークなボディーは真横から眺めた際のルーフラインを含むシルエットやボディーサイズのサーフェスがシンプルに美しさを際立たせている。ちなみに、ドアの下部がサイドシルまでカバーするつくりになっていて、乗降時のふくらはぎの汚れを抑えられている心遣いがにくい。

 フロントフェイスは、バンパーとの境界を感じさせないグリルのデザインが個性的で、切れ長のライトも相まって、表情はクールもしくは爽やかな印象とともに新型「ヴェゼル」らしさを主張している。リヤは傾斜するテールゲートを水平基調のテールレンズが受け止め、スッキリと落ち着いた佇まいになっているのが印象的だ。ところで、デザインを美しく“魅せる”という点では、パネルの組み合わせなどの設計/製造品質も重要になる。その点でも新型「ヴェゼル」は品質感が向上したことを十分体感することができる。

 魅せるデザインは、インテリアも同様だった。居心地の良い空間を作り出すテクニックは先代には申し訳ないが、新型は格段に増したという印象がある。スイッチ類はセンターコンソールのA/C関係とステアリング上に集約されており、オーディオなどの操作はダッシュボード中央の9インチタッチディスプレイが引き受ける。

「ヴェゼル」は、このディスプレイが載るように納まるダッシュボードをはじめ、ドアアームレストやセンターコンソールなどに、ボリューム感のあるソフトパッド材を採用し、モダンな室内空間を作った。さり気なく柔らかで優しい印象を与えつつ、質感を高めている点は芸が細かいといっていい。

 さらに、コネクテッド機能の進化ぶりも新型の特徴だ。Apple CarPlayやAndroid Autoに対応しており、音楽再生や通話など様々な機能をナビ画面や音声で操作できるようになっている。また、車外からは新世代のコネクテッド技術を採用しており、スマホを使ったデジタルキーやA/Cなどのリモート操作も可能になった。それらを選ぶかどうかはさておき、ホンダがコンパクトカーの価値を高めていこうとしている姿勢は十分感じ取ることができる。

 ますます進む電動化に対し、新型「ヴェゼル」は4グレード中、3つのグレードに「e:HEV」(ハイブリッド)をラインアップした。ちなみにガソリンモデルは1グレードだが添え物感はまったくない。とはいえ、ハイブリッドに力を入れているのは間違いない。ホンダはコンパクトモデルにもサイズ上の車種に採用されている最新の2モーターハイブリッドシステムを小型化し、1.5L直4エンジンに発電用と走行用の2モーターを組み合わせたユニットを搭載している。

 WLTCモードの燃費が25.0km/L(e:HEVのXグレード)、JC08モードで30.4km/L。このクラスのSUVでさえ、燃費性能の進化/向上が著しい。ちなみにこのシステムは現行の「フィット」と同じではあるが、車重差を加味して「ヴェゼル」のモーターの出力は上げられている。

理性的で快適な大人のフィール

 今回は、山中湖周辺と高速道路で試乗した。e:HEVはシステム始動時からエンジンの存在を感じることなく、平坦な一般道ではEV走行が主で、モーター駆動(EV)のレンスポンスのよい加速感を低中速域での扱いやすさと一緒に体感することができた。また少し強いトルクが欲しい場合でも、ホンダのe:HEVエンジンは発電所となって電力を作り出し、モーター駆動を積極的に行なう仕組みだ。

 一方、峠超えのワインディングではアップダウンもあり、大きなトルク(加速)を必要とするような登坂路でアクセルを踏み込むと、エンジン力が駆動の主役になっていたようだ。というのも、新型「ヴェゼル」のe:HEVの制御は、EV、ハイブリッド、エンジン走行をより一層フレキシブルに行なうよう進化を遂げている。それらを耳やペダルに伝わる多少の振動(エンジン走行の加速時)などで察することはできるものの、そこに注目するよりそれによって得られる動力性能や走行性能が快適であればいいのではないかと思う。

 一般道では、ガソリンエンジンの出番は少なく、その分、静粛性も向上していることがよくわかる。下り勾配が続くようなシーンでは「スーーーーっ」とタイヤが路面を捉える音をステアリングを握る手元の手応えとともに感じつつ、時に加減速も行ないながら、ゆるゆるとEVモードで走ることができた。パドルやセレクターレバーで4段階で減速度を調整することもできる。

 どちらかと言えば、やや重ためなステアリングフィールを感じながらコーナーを走ると「ヴェゼル」の姿勢は安定しており、ドライビングフィールからも、基本性能を上げた結果、ハンドリング性能も上がって、走りの質を高まったことを体感することができた。ステアリングの切り始めからリニアな応答が手元では感じられるが、これは刺激的というより理性的な印象。

 ボディーやサスペンションの剛性だけでなく、タイヤと路面とのコミュニケーションを正しくドライバーに伝える性能が丁寧に高められていることも確かめることができた。ちなみに、財布に余裕があるならe:HEVの4WDもおすすめだ。コーナーリングでも前後駆動配分を行なう4WDが採用されており、さらに重箱の隅的レベルかもしれないが、直進走行の安定感も良く、快適だった。

このクオリティーでこの価格は安い?それとも高い?

 一方、1.5L、直4ガソリンエンジン+CVTのモデルは、ホットハッチ全盛期の「シビック」を好むようなクルマ好きには、ピュアな軽快感とスッキリしたハンドリングを持つこちらの乗り味が響くかもしれない。ドライビングフィールの質感向上については、e:HEVと同様だが、軽快感についてはハイブリッドのスタンダードモデルとガソリンモデルを比べても100kgの車重差があるから、当然とも言える。

 それでも燃費性能は、実燃費でもハイブリッドにはかなわないだろうし、ホンダがガソリンモデルのラインアップに消極的なのもわからなくもないが、一方でガソリン車の走行フィーリングもホンダらしさが継承されており魅力的だということをきちんとお伝えしておきたい。

 安全運転支援システム「Honda SENSING」では、より高速な画像処理チップ、広角カメラなどを採用しており、周囲の対象物の認識能力やそれを活かした支援技術の高精度化も進化した。路車間の通信網を活かして(VICS光ビーコン選択車かつシステムを採用しているエリア)、道路を走行中は青信号で通過できる速度を推奨してくれたり、赤信号の残り時間なども教えてくれたりする。ホンダの安全運転支援システムは、同クラスの輸入車と比較しても「ヴェゼル」のほうが上というケースも少なくない。

 とはいえ、ライバルがひしめくコンパクトSUV市場。新型「ヴェゼル」が向かう先は、日本の道路という主戦場だ。現在、最も人気の高い「e:HEV Z」グレード(FF)の価格が289万8500円。この価格を妥当と捉えられるか、高いと思うか。

 やや高めという印象のあった先代も、年間販売台数1位を何度も獲得した実績がある。だが、今やT社には強敵もいるし、N社にも魅力的なモデルが存在する。「ヴェゼル」の持ち前のパッケージングと新たに得ることができた走行・環境・安全性能、快適性、デザイン、内外装の高いクオリティー、少し進んだコネクテッド技術など、ちょっと誰かに自慢したくなるような品質の高さ、そして総合力も不足はない。

■関連情報
https://www.honda.co.jp/VEZEL/

文/飯田裕子(モータージャーナリスト) 撮影/雪岡直樹

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