人はそれぞれ自分の〝ポリシー〟を持って生きている。その考え方の一つが、「刹那主義」という思想。刹那主義とは、「今この瞬間が最も大切だ」という人生観のことで、比較的若い世代に多い考え方と言われる。
そこで本記事では、「刹那主義」の正しい意味や使い方を解説する。類語と対義語表現も併せて参考にしてほしい。
「刹那主義」とは?
刹那主義の読み方は「せつなしゅぎ」。まずは、この言葉の正しい意味を見ていこう。
一時的な快楽を求める生き方
刹那主義とは、「今さえよければそれで良い」という楽観的な思想のこと。また、「今この瞬間を生きることに全力を注ぐこと」を指す。
そもそも「刹那」とは、時間の最小単位を表す仏教用語。「私の前世は何でありますか」と問いた弟子に対して、「そんなことは考えずに、この刹那を大切にして生きよ」と諭したお釈迦様の助言からきた言葉だ。このお釈迦様のアドバイスに基づいて、「刹那主義」という言葉が生まれたと言われている。
刹那主義者の特徴
では、刹那主義者にはどのような特徴があるのだろうか。先述した通り「刹那主義」とは、今を一番に考えて生きること。つまり刹那主義者は、過去や将来のことは考えず、今の生活や感情を充実させることに重きを置いている。そのため、「普通の人と比べて悩むことが少ない」という特徴が挙げられるだろう。刹那主義者は、「今、満足している」という気持ちがもっとも重要なため、「〇〇をしないと将来困るかもしれない」「過去に〇〇をしてしまったから、今悪い状況なのかもしれない」などと思い悩むことが少ない傾向にあるようだ。
英語ではどう表現する?
「刹那主義」を英語で表現する際は、「live for the moment/今を生きる」を使う。「live for the moment」は日本語で「今を生きる」という意味があるため、「刹那主義」と似た表現と言える。具体的には「I’m a person who lives for the moment./私は刹那主義的な生き方をしている人間だ」「If you want to be happy, live for the moment./幸せになりたいなら、刹那主義になれば良い」などのように用いる。
「刹那主義」の使い方
刹那主義は、善悪を含めて使える表現。良い意味で使われる場合は、「今を大切にしている」というポジティブな捉え方になり、反対に悪い意味で用いられる場合は「今のことしか考えていない」という、無責任さが強調される。
「刹那主義」を使った例文
では、「刹那主義」は、具体的にどのように用いれば良いのだろうか。良い意味、悪い意味、それぞれの例文を見てみよう。
【良い意味】
「刹那主義でいるからこそ、本当に自分が大切にしたいものが分かる」
「刹那主義の中に、重要なニーズが隠されているものだ」
「今を犠牲にするくらいなら、刹那主義の方がよほど幸せだと思う」
【悪い意味】
「先の見えない世の中で、刹那主義の若者が増えている」
「そんな刹那主義的な考え方だと、後々苦労すると思うよ」
「私は刹那主義なので、嫌いな勉強はやらないで、遊ぶことに専念している」
「刹那主義的な恋愛で、本当に幸せになれるのだろうか」
「刹那主義」の対義語、類語は?
ここからは「刹那主義」の対義語をチェックしていこう。対義語や類語が理解できれば、言葉に対する理解がより深まるはずだ。
禁欲主義
「禁欲主義」とは、感性的な欲望を可能な限り抑圧し魂の平安を得ようとする、道徳、宗教上の立場のこと。禁欲主義者は、肉体的な欲求や世俗的欲望は悪の源泉、またそれ自体が悪だと考える。その欲望を抑えることで徳を修め、救いを得ようとする。そのため、一時的な快楽だけを追求する「刹那主義」とは、真逆の思想を表現する言葉と言えるだろう。
享楽主義
「享楽主義」とは、快楽を追求することを人生の目的とする人生観のこと。そもそも「享」には、「ありがたく受ける」という意味があるため、「楽しさ」を「受ける」ことを「享楽」と表現する。享楽主義は、「心行くまで楽しみにふけって満足すること」に重点を置く考え方ため、刹那主義に似た言葉だと言える。
虚無主義
「虚無主義」とは、この世のすべてが無意味だと主張する哲学的な立場のこと。「ニヒリズム」とも表現される。欧米では近年、「陽気なニヒリズム」という発想が生み出されている。陽気なニヒリズムとは、「人生に特別な意味なんてないから、思い切り楽しもう」という考え方だ。そのため、刹那主義に近い意味とも捉えることができる。
文/oki