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ディーゼルエンジン搭載の「電車」!?JR東海のハイテク車両「HC85系」試乗レポート

2021.09.10

環境意識が高まっている現代、動力をエンジンだけの力に頼らない「ハイブリッド」タイプの自動車が多くなってきたが、この流れは鉄道の世界でも同様。

もともと電気で走る「電車」は、自動車や航空機などに比べてエコな乗り物として知られているが、国内には電線が引かれていない「非電化」と呼ばれる路線も少なくない。

そうした「非電化路線」にはこれまでディーゼルエンジンを動力とした「気動車」が運行されていたが、現在JR東海が開発を進めている「ある車両」がちょっとすごいのだ……。

JR東海が開発を進める「スゴイ車両」HC85系

JR東海の在来線特急

東海道新幹線をはじめ、リニア中央新幹線プロジェクトでも有名なJR東海。東京や大阪に住んでいる方はもしかしたらJR東海といえば東海道新幹線の会社……というイメージが強いかもしれないが、在来線も広域なネットワークを持っている。

特に本社がある名古屋エリアはJR東海を代表する一大鉄道ネットワークが構築されており、通勤通学の日常生活から、観光などが楽しめるものまで、様々な路線が運行されている。

そんなJR東海エリア内でも人気が高いのが、岐阜から飛騨路を走り、高山を目指す高山本線と名古屋から紀伊半島を南下する紀勢本線だ。高山本線は「山風景」、紀勢本線は「海風景」とそれぞれ見応えのある車窓風景が続いていく2大路線だ。

さらに名古屋から木曽路を走る中央本線も点在する宿場町を往く路線で、こちらも人気の高い路線。それぞれ、高山本線には特急「ひだ」、紀勢本線には特急「南紀」、中央本線には特急「しなの」が運行され、全て名古屋駅から発着して各地を結んでいる。

HC85系の先輩「キハ85系」はJR東海の絶景路線を走る。上写真は紀勢本線特急「南紀」。

「南紀」「ひだ」同様に名古屋発着の「しなの」。10月下旬を過ぎると沿線は紅葉の盛りとなる。

最新システム搭載のハイブリッド車両HC85系!

先述の3つの特急のうち、「ひだ」と「南紀」は途中非電化の区間を走るため、ディーゼル車両(気動車)「キハ85系」という特急車両で運行されており、ハイパワーのディーゼルエンジンを搭載して1989年のデビュー以来、快適さだけでなく、速達性も確保して運行されてきた。

この「キハ85系」を置き換え、より安全かつ安定運行を実現し、快適性・利便性を向上させる目的で現在開発が続けられているのがHC85系だ。

ディーゼルエンジンのみを動力として走行していたキハ85系と異なり、HC85系ではハイブリッド方式を採用し、ディーゼルと電気の力を併用して動力を生み出す方式が取り入れられた、JR東海自慢の最新鋭の車両となっている。

JR東海にとって在来線特急車両の新造は約27年ぶり! テクノロジー満載で注目度も高い

HC85系は2019年12月に落成し、以降、試験運転が繰り返されている。実際にお客さんを乗せて走る営業運行開始は、2022年度予定だ。

ここで、HC85系がどのように動くのかを簡単に説明したい。既存のディーゼル車両は、エンジンの出力を変速機などを介して車輪に伝える方法が主流だが、それに対し、HC85系は電気で回る「モーター」が主たる動力源となる。

始発駅などである程度停車時間がある駅などでは「アイドリングストップもできる」

では、搭載されているエンジンは何をしているのかというと、そのモーターを回すための「電力」を生み出す主発電機を回すために使用される。

併せて大容量の蓄電池が搭載されており、そこに貯められた電力もモーターを回す電力として利用される。この蓄電池にはブレーキ時に発生した電力も貯めておくことができ、さらに、駅停車中は「アイドリングストップ」を行い、エンジン停止中の空調や車内灯などのサービス電源としても活用される。

この蓄電池は国内最大容量を搭載。HC85系はハイブリッド方式の車両では国内で最速の、最高時速120kmを誇る、俊足の特急車両として設計されている。

実際に乗車!ここがすごいぞHC85系!

そんなハイテクHC85系に今回は実際に乗車することができたので、その走行中のシーンを中心にレポートしていきたい。

まずは、既存車の「キハ85系」に乗車する。名古屋〜鵜沼間を1往復し、往路がキハ85系、復路にHC85系と乗り比べをするコースだ。

キハ85系はハイパワーディーゼル特急らしい、力強いエンジン音が特徴。鉄道ファンとしては心地よい音でもあるが、利用者目線で考えるとやはりノイズにも感じる。高速走行時にはどこか「頑張っている!」感じがする。また、高山本線に入ると少々強めの揺れも気になる。車内を立ち歩くと思わずよろける瞬間もあった。

展望性に優れたデザインも大きな特徴のキハ85系(別日撮影)

ハイデッカー構造と大きめの窓で開放感があるキハ85系の車内

そしてお待ちかね、HC85系に乗り込むが、違いはすでに乗り込む前から感じる。まず、エンジン音が非常に小さい。キハ85系は1車両に2機のエンジンを搭載しているが、HC85系は1機に。その時点でホームに響くエンジンアイドリング音が半減している。

さらに大容量蓄電池を生かしたアイドリングストップが行われると、最新の電車同等の静寂がホームに漂った。

ハイテクを感じるHC85系のロゴマーク

普通車の鮮やかなシートは沿線の紅葉や祭り、花火をイメージ。ほかにグリーン車も設定される予定だ

車内は新型車両ということでピカピカ! 現代の車両に相応しい全席コンセントに車内Wi-Fiも完備する。

鵜沼駅を出発する際には、大きな電力が必要になることからエンジンの出力も上がっているはずだが、往路のキハ85系のような「唸り」は正直感じない。名古屋までの高速走行時も「あれ、電車じゃん!?」と思うほど静かな車内だ。最新車両ということでもちろん揺れも少ない。

客室内、デッキ部ともに車内防犯カメラを備える

キハ85系にはなかった座席コンセントも全席完備!


アイドリング音やパワーが必要なシーンでもエンジンの唸音が非常に小さい

ここもワンポイント

最新鋭のHC85系だが、ちょっとおもしろポイントをご紹介したい。以前こちらの記事(https://dime.jp/genre/951533/)で車両に書かれた「文字」のヒミツを紹介したが、ディーゼル車両である、「キハ85系」は気動車の「キ」がつけられているが、HC85系は「モハ」となっている。

これはエンジンこそ搭載しているものの、運行に関わる実質的な構造は電車と同様なため、JR東海では電車の一種としてとして扱うためだ。

電車で用いられる「モ」(モーターがついている車両)が付けられているHC85系。エンジンを搭載するが扱い上は「電車」。

燃費性能にして約35%、排気中のCO2NOxはそれぞれ約30%、約40%も低減した(キハ85系比)HC85系。本格デビューが待ち遠しい!

取材・文/村上悠太

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