土地や建物といった不動産を取得したとき発生するのが、不動産取得税です。金額が大きくなりがちな税金ですが、軽減措置を適用すれば支払う金額を抑えられます。不動産取得税とは何かとともに、2024年までの取得で使える軽減措置を見ていきましょう。
不動産取得税とは?
不動産取得税は都道府県に納める『地方税』の一つです。具体的にどのようなケースで納付義務が発生するのでしょうか?基本的な計算方法と併せて解説します。
土地や建物を取得したときに納める地方税
『不動産取得税』とは名前の通り、土地や住宅の購入・贈与によって不動産を取得したとき手に入れた人が支払う税金です。
家の新築はもちろん増築した場合も『不動産の取得』と見なされて課税の対象になります。
有償・無償や登記の有無にかかわらず納付義務が発生するため、不動産を購入したり譲り受けたりしたときは基本的に納付が必要と考えましょう。
不動産取得税は各都道府県が課税する地方税の一種で、支払う必要があるのは一度だけです。ただ、取得した土地と建物に対して個別に課税されるため、合計すると高額になる場合もあります。
軽減措置を利用すれば支払う金額を減らせる可能性もあるため、使える制度をよく確認しておきましょう。納付する期限は納税通知書に記されており、都道府県によって異なります。
不動産取得税の計算方法
不動産取得税は土地・建物のどちらであっても『課税標準額×税率』で計算されます。
金額を算出するためにはまず、取得した不動産の価格となる『課税標準額』を正しく把握しなければなりません。
新築・増築された建物を除いて、固定資産課税台帳に登録されている価格が正式な不動産の価格とされています。
課税標準額は『固定資産税評価額』ともいわれ、実際の購入価格とは金額が異なるため注意が必要です。
土地や建物の課税標準額が『免税点』として決められている金額を下回っているときは、不動産取得税は課されません。
不動産の種類ごとに定められている免税点は以下の通りです。
- 土地:10万円
- 住宅としての家屋(新築・増築・改築):23万円
- 家屋(その他売買等):12万円
免税点以上の土地・住宅として使う家屋を2024年までに取得した場合、税率は3%です。本来は4%ですが、取得の期限を定めて軽減税率が適用されています。
参考:不動産取得税 | 税金の種類 | 東京都主税局
参考:都税:不動産取得税 | 都税Q&A | 東京都主税局
不動産取得税の軽減措置が2024年まで延長
2021年現在は新型コロナウイルスが経済に大きな影響を及ぼしている背景を受けて、住宅を取得しやすいよう税金が軽減されています。
不動産取得税の軽減税率について深掘りするとともに、節税に役立つ特例も見ていきましょう。
土地や住宅に適用される軽減税率
リーマンショック以降、国内での土地取引件数は長期的に低い水準が続いています。さらに、2020年に流行が始まった新型コロナウイルスによる不況で、不動産を取得する人が減少しました。
経済が停滞する中で土地取引を活発化させるために執られた措置が『軽減税率の適用』です。当初は2021年3月31日までに取得した不動産に対してのみ、本則税率の4%を3%とする軽減税率を適用する予定でした。
しかし、コロナ禍が経済に及ぼす影響が長期化している現状から、取得の期限が3年間延長されて2024年3月31日までとなったのです。
土地か住宅に使う家屋であれば、無条件で軽減税率が適用されます。不動産の購入を考えているなら、2024年までに買った方が節税につながるでしょう。
宅地における「課税標準額」を1/2にする特例
2021年現在は軽減税率だけでなく、『宅地』を取得した際にかかる課税標準額を半分にする特例も実施されています。宅地とは、建物が建っている土地や建物の敷地として使われる土地のことです。
宅地に関する特例も2024年までの取得に延長されています。
また、長期間にわたって住み続けられる『長期優良住宅』を普及させるための措置も執られています。長期優良住宅は構造や設備に長く利用できるような工夫が見られる住宅です。
行政庁に申請して長期優良住宅の基準を満たしていると認定されれば、優遇措置を受けられます。控除が増額されるため制度を活用してみましょう。
軽減措置の適用要件
住宅や土地にはそれぞれ、軽減税率や宅地に関する特例の他にも軽減措置が設けられています。
新築・中古の住宅や土地の取得で適用を受けるには、どのような要件を満たせばよいのでしょうか?
申請する方法も確認しておきましょう。
新築住宅の場合
新築の建物を手に入れた場合、要件を満たせば固定資産税評価額から最大で1200万円が控除される制度があります。
課税対象となる額が1200万円減れば、1200万円×3%(2024年までの取得)で最大36万円も節約が可能です。
適用の要件は以下の通りです。
- 建物が住宅として使われる(居住用である)こと
- 住宅の延べ床面積が50~240平方メートル(貸屋で一戸建て以外なら40~240平方メートル)であること
延べ床面積にはマンションの共有部分や、車庫などのスペースも含まれています。増築や改築を行った際にも軽減措置が適用されるため、要件に該当しているかどうか確認しましょう。
長期優良住宅と認められた場合には控除額が1300万円まで増えます。ただし、住宅の価格が控除額より低い場合は住宅の価格が控除の上限です。
中古住宅の場合
前提として、中古の住宅を取得したときも新築住宅と同様の要件が必要です。
さらに、中古住宅の場合は建てられたのが1982年より前か後かで、適用の要件が変わってきます。
1982年1月1日以降に建てられた住宅は現在も使われている『新耐震基準』を採用しているため、耐震性を証明しなくても時期ごとに決められている控除額が適用されます。
しかし、1982年以前に建てられた建物であれば、改修によって現在の耐震基準を満たしている証明が必要です。新築住宅の要件に加えて新耐震基準に適合していると証明できた場合のみ、控除を受けられます。
控除額は新築に近いほど額が大きくなるのが特徴です。1997年4月1日以降に建てられたなら、新築と同じく1200万円の控除が受けられます。
1989年4月1日から1997年3月31日であれば1000万円で、それ以前は建てた日付が古くなっただけ段階的に控除額が減る仕組みです。住宅の価格が控除額を下回っている場合、控除額の上限は住宅の価格とされます。
参考:道税の軽減(不動産取得税の軽減措置)耐震基準適合既存住宅・中古マンション – 総務部財政局税務課
土地の場合
新築で土地に対する控除を受ける場合、不動産取得税の計算方法は住宅と異なります。
土地を取得した際の税額は『{(固定資産税評価額×1/2)×税率3%}-控除額』となり、控除の金額が最後にマイナスされるのです。
土地に適用される控除の額は、以下のどちらか多い方となります。
- 4万5000円
- (1平方メートル当たりの固定資産税評価額×1/2)×(課税床面積×2)×3%
課税床面積の上限は200平方メートルです。固定資産税評価額(課税標準額)が半分になる特例と3%の軽減税率は、2024年3月1日までに取得した土地にのみ適用されます。
適用の要件は以下の通りです。
- 土地を取得して3年以内に建物を新築する
- 新築から1年以内にその土地を取得する
建物自体も新築の要件を満たす必要がある点にも注意して、自分のケースで適用されるか判断しましょう。新たに土地を取得して家を建てる場合は、建物・土地それぞれの控除額を計算します。
軽減措置の申請方法
不動産取得税の軽減措置を受けるには、取得から原則60日以内に申請を行う必要があります。
『不動産取得税課税基準の特例適用申告書』という書類を土地と建物に対してそれぞれ用意しましょう。
申請の際、他に必要となる書類は以下の通りです。
- 納税通知書
- 土地と住宅の売買契約書
- 住宅の登記事項証明書または登記謄本
申請の際は印鑑も用意します。軽減措置を利用しなければ多額の不動産取得税を支払うことになるため、要件に当てはまる場合は期限内に申請を済ませましょう。