「インスタ映え」という流行語に象徴されるように、SNS上では画像を掲載した投稿が人気を集めています。
しかし、他人の著作物などを勝手に転載した場合、著作権法違反により処罰される可能性があるので注意が必要です。
今回は、SNSなどへの画像掲載について、罪に問われるケース・問題ないケースの境界線を考えたいと思います。
1. 他人の著作物の無断転載は犯罪に当たるので要注意
「著作権法」では、他人が創作した著作物を、許可なくSNS上に掲載することが禁止されています。
1-1. 転載が違法となる著作物の例
著作物のパターンはさまざまですが、代表的なものは以下のとおりです。
・写真
・イラスト
・漫画
・文章(詩、小説など)
・動画
・音楽
など
他人が創作したこれらの著作物を、SNS上に無断転載した場合、著作権法違反に該当します。
1-2. 著作物の無断転載に対するペナルティ
他人の著作物を無断転載した場合、刑事・民事上のペナルティを受けることになります。
①著作権法違反に基づく刑事罰
無断転載は、著作権侵害(「複製権」(著作権法21条)および「公衆送信権」(同法23条)の侵害)に該当します。
著作権侵害に対しては、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」が科され、またはこれらが併科されます(同法119条1項)。
②不法行為に基づく損害賠償
また、著作権侵害に当たる無断転載行為によって、著作権者が実際に損害を受けた場合、無断転載者は不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。
刑事・民事の観点から、思いがけず重いペナルティを課されるおそれがあるので、無断転載に当たる行為については、正しい知識を持って避けるようにしてください。
2. 「引用」の要件を満たす場合は、転載の許可は不要
著作権者の許可を得ない転載であっても、例外的に著作権侵害に当たらないのが「引用」に当たる場合です(著作権法32条1項)。
以下の「引用」の要件をすべて満たす場合には、著作権者の許可を得ることなく、著作物をSNSなどに掲載することが認められます。
①公表された著作物であること
②引用の必要性があること
③引用箇所とそれ以外が明瞭に区別されていること
④本文が「主」、引用部分が「従」の関係にあること
⑤引用著作物に改変が加えられていないこと
⑥出典を明記すること
たとえば、SNS上で漫画のレビューを行う際に、漫画の一コマだけを引用して、そのコマについての詳しい考察を記述するといった場合を考えてみましょう。
この場合には、
・引用することで、考察が読者にとってよりわかりやすくなる(=引用の必要性)
・あくまで考察部分がメインで、漫画の引用はその補足に過ぎない(本文が「主」、引用部分が「従」)
といった事情があるので、上記の「引用」要件を満たす可能性があります。
もちろん、改変を加えずにそのまま引用することや、出典をしっかり明記することなど、その他の要件を遵守することも忘れてはいけません。
適法な「引用」を行うことで、SNS投稿がより魅力的になる可能性がありますので、ルールを正しく理解して活用してください。
3. 他人の著作物以外の画像掲載はOK?NG?ケース別解説
他人の著作物でない画像をSNSに掲載する場合、著作権法違反の問題は生じません。
しかし、代わりに別の問題が発生するケースがありますので、不安な場合は弁護士などに質問してみるとよいでしょう。
以下では3つのケースについて、画像掲載に法律上の問題がないかどうかを解説します。
3-1. 自分で撮った飲食店の内部や食べ物の写真は?
インスタグラムなどで流行している、飲食店の内部や食べ物の写真を掲載した投稿は、基本的に問題ありません。
ただし、飲食店側から撮影を拒否されている場合には、今後出入り禁止を通告されるなどのトラブルに発展する可能性があるので、撮影を控えるべきでしょう。
(飲食店にはお客さんを選ぶ権利があるので、出入り禁止措置などは適法です。)
3-2. 自分で撮った有名人の写真は?
有名人を見かけて写真を撮り、嬉しくなってSNSに投稿してしまったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この点、プライベートなSNSに有名人の写真をアップする分には、(モラル的な問題は別として)法的には問題ないケースが多いです。
イベント会場などのほか、公道など他人の目に触れる場所での姿を撮影した場合、肖像権侵害には該当しないと考えられます(反対に、クローズドな場での盗撮行為は肖像権侵害に当たります)。
ただし、アフィリエイトサイトに掲載するなど、有名人の写真を営利の集客目的で利用しているとみなされる場合には、「パブリシティ権」の侵害により損害賠償請求を受ける可能性があるので注意が必要です。
3-3. 将棋や囲碁の盤面画像は?
将棋や囲碁の盤面画像や手順(棋譜)については、著作権が成立しないというのが一般的な考え方です。
そのため、SNS上に盤面画像等を掲載したとしても、著作権侵害には該当しないと考えられます。
ただし、日本将棋連盟・日本棋院やスポンサーは異なる考え方をとっている部分があり、盤面画像等の無断転載は、これらの団体とのトラブルを発生させるおそれがあります。
そのため現時点では、念のため掲載許可を申請する方が無難でしょう。
参考:
棋譜利用に関する公開質問状への回答|日本将棋連盟
棋譜使用・リンクについて|日本棋院
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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