
頑張りや努力を表現する慣用句、「身を粉にする」。「本当に身を粉にして働いたよ」と、昔の苦労話をするときによく使われるフレーズだ。本記事では、この「身を粉にする」という言葉の正しい意味と使い方について解説する。類語や対義語、英語表現も併せてチェックしてほしい。
「身を粉にする」とはどんな意味の慣用句?
はじめに、「身を粉にする」の正しい意味とその由来について解説したい。併せて紹介する特徴から、自分自身や周囲の人に当てはまることはないか、チェックしながら読み進めてほしい。
苦労を惜しまず一生懸命努力することを表現している
「身を粉にする」の読み方は「みをこにする」。粉は「こな」とは読まない点に注意しよう。身を粉にするとは、「わき目も振らずひたすらに働くこと」や「一生懸命取り組むこと」を表す言葉だ。自身の苦労体験を伝える場面でよく使われるが、他者の頑張りを説明するときにも効果的な表現。
身体が粉々に砕かれるまで働くという意味が由来
「身を粉にする」の由来は、読んで字のごとく「身体が粉々になるまで努力する」という意味からきている。ただ単に一生懸命働くというよりも、自身の身体が犠牲になるのもいとわないという、より強い決意があるという気持ちの表れを含んだ言葉だ。そのため、実際に努力している状態だけでなく、そのような決意を表す時にも使うことができる。
「身を粉にして働く人」とはどんな人?
では、実際に身を粉にする人にはどんな特徴はあるのだろうか。状況はさまざまだが、ビジネスシーンでは会社や仲間のためにと休みもろくに取らずに「身を粉にして働く人」、自身の目的を達成するために己と向き合い寝る間も惜しんで「身を粉にして働く人」、誰かのために自分を犠牲にして苦労を買って出てでも「身を粉にして働く人」。どれも、「努力できる人」でなければ難しい。また、実際の働きや取り組みといった行動だけでなく、その努力を実践できる「強い気持ちを持てる人」というのも特徴の一つだ。
「身を粉にする」の関連表現
ここからは、「身を粉にする」の類語や対義語、英語表現を紹介する。ニュアンスの違いを理解しておけば、きっと表現の幅が広がるはず。
類語
・体を粉にする
身を粉にするの「身」を「体」に言い換え「体を粉にする(からだをこにする)」という表現もある。意味も同様に「力の限り一生懸命に働くこと」を表す。ちなみに、同じ「からだ」という漢字で「身体を粉にする」という表現はしないので注意しよう。
・粉骨砕身
「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」とは「骨が粉々になり、身を砕かれるまで力を尽くして努力すること」を表現する言葉。意味を持つ漢字をそのまま変換した四字熟語だが、漢字の順番を入れ替え、「砕身粉骨(さいしんふんこつ)」「砕骨粉身(さいこつふんしん)」などと表現することもある。
・身を削る(骨身を削る)
「身を削る(みをけずる)、骨身を削る(ほねみをけずる)」とは、「身や骨を削ぐ(そぐ)ほどに、大変な苦労をしたり、心をひどく痛める」ことを表す。「身を粉にする」と似た意味を持つ言葉だが、心情を表現する意味を持ち合わせている点がポイントだ。
対義語
・左団扇
「安楽に過ごす」ことを表す「左団扇(ひだりうちわ)」という言葉。一般的に利き手の多い右手ではなく、左手で団扇を仰ぐ様から、のんびりと余裕のある生活をしていることを示している。「左団扇な暮らし」や「左団扇の生活」などと表現する。
・無為徒食
「無為徒食(むいとしょく)」とは「何の仕事もせずに、毎日を無駄に過ごすこと」。「無為」とは、「何もしないこと」、「徒食」は「仕事もせずに暮らすこと」を指す。ただ何もしないというよりは、「やるべきこともせずに」という表現を含んでいる。
「身を粉にする」の例文
「長年、家族のために身を粉にして働いてきた」
「夢のためにと、身を粉にした経験は無駄ではないだろう」
「身を粉にして努力をしたが、彼には追いつけなかった」
「この日のために身を粉にして取り組んできたので、結果が出せて嬉しい」
英語ではどのように表現する?
「身を粉にする」の英語表現でよく使われるのが、「work oneself to the bone」。「to the bone」は「骨(の髄)まで」や「とことん」を表し、直訳で「骨の髄まで自分で働く」という意味になる。その他にも、「oneself(自分)」を「one’s fingers(指)」に言い換えた「work one’s fingers to the bone(指が骨になるまで働く)」という表現もある。
文/oki