社会人だけでなく、大学生や高校生のアルバイトでも収入が一定額を超えると、所得税や住民税などの支払い義務が発生する。学生本人の負担が大きくなると同時に、親の納税額にも影響するため注意が必要だ。
本記事では、学生のアルバイトで所得税が発生する仕組みと所得控除について解説する。納めすぎた税金が戻ってくる場合についても併せてチェックして、この機会に知識を深めてほしい。
「収入の壁」とは
よく耳にする「収入の壁」とは、学生本人と親の税負担が変わる一定の収入ラインのこと。では、税負担が増加する学生の収入は具体的にいくらなのだろうか。
年収103万円超
親の扶養に入っている学生が、アルバイトなどで年間103万円を超える給与を得た場合、扶養から外れることになる。その結果、親は扶養控除の適用対象外となり、学生本人に対しては原則として103万円を超える部分について所得税が課される。なお、アルバイトを掛け持ちしている場合は、すべての給与を合算して103万円を超えるか否かで判断される。
年収130万円超
学生の給与所得が130万円を超えた場合、上述した税負担に加え、本人について社会保険料の支払い義務が発生する。つまり、親(扶養者)の社会保険から外れるため、自ら国民健康保険や国民年金の保険料を支払わなければならない。
「勤労学生控除」とは?
学生の給与所得が103万円を超える場合でも、一定の要件を満たすことで非課税枠を広げる制度「勤労学生控除」が存在する。そもそも「控除」とは、納税者の個人的事情を税金計算に反映させ、税負担の軽減を図る仕組みのこと。では、「勤労学生控除」とはどのような制度なのだろうか。
働きながら学校に通っている学生のための制度
「勤労学生控除」は、15種類ある所得控除のうちの一つで、働きながら学ぶ学生の税負担を軽減させる制度。勤労学生控除の控除額は27万円であり、所得税が発生する「年収103万円の壁」を年収130万円まで広げることができる点に大きなメリットがある。
勤労学生控除を受けるための要件
学生であれば誰でも控除が適用されるわけではない。そのため、申請にあたっては事前に要件を確認しておく必要がある。要件の概要は以下のとおり。
1.所定の学校で学んでいること
勤労学生控除における「所定の学校」には、1)学校教育法が定める小学校・中学校・高等学校・大学・高等専門学校など、2)国・地方公共団体・私立学校法の定める学校法人などが設置した専修学校または各種学校のうち一定の課程を履修させるもの、3)職業能力開発推進法に基づく認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるものが該当する。
2.学生本人の合計所得金額が一定以下であること
アルバイトの給与など勤労による所得の合計金額が75万円以下であり、給与所得以外の所得(不動産所得など)が10万円以下であることが必要。つまり、学生の所得が給与のみであり、かつ合計額が130万円以下の場合、「給与所得控除(給与所得者の給与から差し引かれる控除額)」の55万円を差し引くと75万円以下となるため、当該要件を満たすことになる。
勤労学生控除の申請方法
勤労学生控除を受けるためには、年末調整または確定申告を行う必要がある。アルバイト先で年末調整が行われる場合、「扶養控除等(異動)申告書」に必要事項を記載して勤務先に提出することで申告が可能。確定申告を行う場合は、確定申告書に勤労学生控除に関する事項を記載して提出する。なお、専修学校や職業訓練学校などは、学校が発行する証明書を添付または提示する必要がある。
確定申告でお金が戻ってくることもある
学生のアルバイトで給与から「源泉徴収」がされている場合、年末調整や確定申告で納めすぎた税金が還付されることがある。
還付されるのはどのような場合?
「源泉徴収」は、勤務先が従業員の給与からあらかじめ本人の所得税分を差し引いて納税する仕組み。源泉徴収額は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」をもとに決定される予定額であるため、納税者個人の事情が考慮されていない。そのため、源泉徴収がされており、年収103万円以下または年収103万円超130万円以下で勤労学生控除の対象となる場合は、税金が還付される可能性が高い。
申告方法は?
勤務先で「年末調整」が行われる場合、扶養控除等(異動)申告書を提出することで勤務先が税額を再計算し、過分があるときは還付される。還付の時期は企業によって異なるが、一般的には12月から1月の間であることが多い。
「年末調整されていない」「2か所以上から給与を受け取っている」「12月以前にアルバイトを辞めた場合」などは、源泉徴収票などの必要書類を用意して、自ら確定申告を行う必要がある。
文/oki