■連載/石野純也のガチレビュー
2019年に日本市場に参入して以降、徐々に存在感を高めているシャオミ。21年2月にはソフトバンクとタッグを組み、約2万円の超格安5Gスマホ「Redmi Note 9T」を発売し、その価格の安さから注目を集めた。同機は、シャオミ製の端末として初めて、日本市場の独自機能であるおサイフケータイに対応しているのも特徴だ。新規参入からわずか1年強でおサイフケータイを搭載できたことも、コストパフォーマンスのよさと並んで話題になった。
一方で、シャオミが主戦場にしているSIMフリースマホ市場には、おサイフケータイを搭載した端末が登場していなかった。おサイフケータイは一度使うと手放せない機能なだけに、非搭載であることはマイナス点になりかねない。そんな状況を変えるべく、シャオミが投入したのがミドルレンジモデルの「Mi 11 Lite 5G」だ。同モデルは、4万円前後とミドルレンジモデルのど真ん中の価格帯ながら、「Snapdragon 780G」や有機ELのディスプレイを搭載。日本向けの機能として、おサイフケータイにも対応する。
コストパフォーマンスの高さが際立つMi 11 Lite 5Gだが、こうした点がユーザーから評価された結果、割引つきで販売するMVNOでは完売していることが多い。日本市場に特化したOPPOの「Reno5 A」と同価格をつけたことも、Mi 11 Lite 5Gが話題を呼んだ理由の1つ。おサイフケータイ対応のSIMフリースマホとして、あえて価格をそろえ、日本市場で先行するOPPOに勝負を挑んだ格好だ。では、本当にMi 11 Lite 5Gは評判どおりの性能なのか。実機で実力を検証した。
高いコスパで、かつおサイフケータイにも対応したシャオミのMi 11 Lite 5G
6.81mmの薄型ボディがスタイリッシュ、側面指紋センサーも便利
Mi 11 Lite 5Gは、5Gのスマホとして「世界最薄」をうたう6.81mmのボディが特徴の1つだ。実際、手に取ってみるとその薄さに驚かされる。カメラ部分の出っ張りはあるものの、スリムさは他のハイエンドモデルはもちろん、ミドルレジモデルをも上回っている。ポケットに入れた際に収まりがいいのはもちろんのこと、159gと比較的軽く仕上げられているため、ズボンが引っ張られているような感覚がほかの端末より軽減される。薄くて軽いのは、本モデルを評価できるポイントと言えるだろう。
軽いからといって、安っぽいデザインになっているわけでもない。側面のフレームは、金属の上にメタリックな塗装が施されており、光沢感がありながらも上品な仕上がりだ。背面にもガラスが使われていて、硬質感が高い。ミドルレンジながら、一見するとハイエンドのような高級感があり、とても4万円前後の端末とは思えないほどだ。リーズナブルな価格帯の端末を安っぽく見せないのは、シャオミの得意技。Mi 11 Lite 5Gにも、そのノウハウがいかんなく発揮されている印象を受ける。
ディスプレイは有機ELを採用しており、この価格帯のデバイスとしては十分なクオリティ。コントラスト比が高く、写真や動画などの映像が鮮やかに見えるのは有機ELならではだ。同価格帯の端末の中には液晶を採用しているものも少なくないため、Mi 11 Lite 5Gの優位性と言えそうだ。また、ディスプレイは90Hzのリフレッシュレートに対応しており、動画やゲームなどのアプリが滑らかに動く。ブラウジングやスクロールが多いSNSも効果を発揮するため、オンにしておいた方がいいだろう。
有機ELを採用したディスプレイは、コントラスト比が高く発色も鮮やか
指紋センサーは、側面の電源キーに統合されている。背面などに搭載するより、デザインがスタイリッシュになる上に、画面を点灯させる際に自然と指が当たるため、ロック解除がスムーズだ。側面にあるため、机の上などに置いたままでも使用できる。個人的な印象かもしれないが、ハイエンドモデルに多い画面内指紋センサーよりも使い勝手がいい。ロック解除のスピードも速く、かなり実用的だ。
指紋センサーは側面の電源キーと一体になっていて、使い勝手がいい
メインカメラは画質もいい、超広角カメラやマクロカメラも搭載
カメラはトリプルカメラで、メインカメラの画素数は6400万画素。4つのピクセルを1つに束ねるピクセルビニングの技術を使っているため、暗所でのノイズが少なくなるのがメリットだ。AIでの補正もあり、彩度の高めな写真が撮れる。いわゆる〝スマホカメラ〟寄りのチューニングだが、ミドルレンジモデルでこれだけ撮れれば十分と言えるだろう。以下に掲載したのは、街の風景写真と夜景、料理の写真。いずれも、ディテールの描写に破たんがなく、色もキレイに写っている。
背面のカメラユニットには、メインカメラのほか、超広角とマクロカメラを搭載する
彩度がやや強く出る印象だが、全体的に画質は高い。夜景にも強い印象だ
メインカメラの画素数が高い一方で、残り2つはスペックが落ちる。1つが、800万画素の超広角カメラ。119度の広角写真が撮れるカメラで、風景を大胆に切り取れるのがメリットだ。開けた場所の写真を撮るような場面で重宝する。魚眼レンズに近い画角になるため、周辺には歪みも目立つが、ソフトウエアでの補正がしっかり効いているため、あまり不自然にはならない。
もう1つが、3cmから7cmまで寄れる500万画素のテレマクロカメラだ。植物などを接写してディテールを記録しておきたい時などに使うカメラで、カメラアプリの設定から「スーパーマクロ」を呼び出すとこのカメラに切り替わる。画面下のモードを切り替えるメニューにないため、少々呼び出しづらいのは難点だが、小さなものを撮る際に近寄って撮れるのは便利。ただし、画素数が500万画素とほかのカメラより一段低く、レンズもF2.4とやや暗いため、クオリティが下がる点には注意が必要になる。
ハイエンドモデルのような望遠カメラは搭載されていないが、メインカメラの画素数が高いこともあって、ズームしてもそれなりに使える絵になる。拡大するとさすがに粗は目立つが、5倍程度であれば、スマホのディスプレイに表示させるには十分なクオリティ。10倍ズームをかけても、文字などはクッキリ写っているため、表示サイズによってはこれでもデジタルズームだと気づかれないかもしれない。望遠カメラなしでも、ある程度ズームが使いものになるのは評価できるポイントだ。
それぞれ5倍ズーム、10倍ズーム。元々の画素数が高いこともあり、劣化が少なめで実用的だ
処理能力は高いが、おサイフケータイの仕様は要改善か
では、パフォーマンスはどうか。Mi 11 Lite 5Gが採用したSnapdrgaon 780Gは、クアルコムがミドルレンジモデル向けに開発した最新のチップセットで、性能はどちらかと言うとハイエンド寄り。実際、ブラウジングやSNSアプリの利用は、非常にスムーズで特に引っかかりのようなものは感じられない。ベンチマークアプリでのスコアも上々で、「Geekbench 5」ではCPUのマルチコアスコアが2508、シングルコアスコアが795と高い結果を出している。
Snapdragon 780Gを搭載しており、処理能力は高い
ただし、一部のゲームアプリが、こうしたスコアほどスムーズに動かないという声がネット上に散見される。実際、筆者も「デレステ(アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ)」や「ポケモンGO」「ディズニーツムツム」といった各種ゲームをプレイしてみたが、特に画面がカクカクすることなく、遊ぶことができた。MIUIのバージョンを最新の12.5.2にアップデートし、ゲームアプリの性能を引き出す「ゲームターボ」にそれぞれ登録したうえで起動した。
3Dグラフィックスをふんだんに使ったゲームもプレイできた。ただし、一部のゲームの動きが悪いという声もあることは明記しておきたい
一方で、デレステはタッチに対する反応がややよくないようにも感じた(筆者の腕の問題もありそうだが……)。また、アプリの中でもゲームの数は非常に多く、相性の問題はあるだろう。今回プレイしたゲーム以外で問題が起こる可能性は、念頭に置いておきたい。全体的に、本体がやや熱を持ちやすい点は気になった。本体が薄いゆえに、熱を逃がしにくいのかもしれない。特に気温の高い夏場は、屋外で利用する際にあまり負荷をかけないようにするなど、注意しながら使った方がいいだろう。
SIMフリースマホながらおサイフケータイに対応しているのも、評価したいポイントだ。特にこの価格帯の海外モデルの場合、グローバル版の対応周波数帯だけをカスタマイズして日本に持ってくるケースも多いなか、ニーズの高いFeliCaをきちんと載せてきたことはMi 11 Lite 5Gの優位性と言えるだろう。ただし、NFC決済とおサイフケータイを両使いしている人は、注意が必要。Mi 11 Lite 5Gはセキュアエレメントをどちらか一方に切り替える特殊な仕様のため、都度、操作が必要になってしまう。ほかの端末では見られない仕様なだけに、少々残念だ。
おサイフケータイ対応だが、NFC決済との切り替えが必要になるのが難点
とは言え、この価格帯のスマホとしては完成度が高く、普段使いには十分すぎるスペック。カメラの性能もまずまずでデザインもよく、コストパフォーマンスのよさはシャオミならではだと評価できる。5Gにも対応しており、エリア内なら通信速度も非常に速い。MVNOやサブブランドのユーザーで、ミドルレンジモデルを求めている人にとってはいい選択肢になりそうだ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
持ちやすさ ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
UI ★★★★
撮影性能 ★★★★
音楽性能 ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
生体認証 ★★★★
決済機能 ★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。