知ってる？慣用句「固唾を呑む」の意味と正しい使い方

オリンピック・パラリンピックなどのスポーツ、競技を”固唾を呑んで”見守った人も少なくないだろう。「固唾を呑む」とは、緊張しながら物事の動向を見ることを表した慣用句。ハラハラするようなシーンを見守る際に使われる。

本記事では、意外と知らない「固唾を呑む」の正しい意味や言葉の由来を紹介する。意味を混同しやすい「息をのむ」との違いも併せてチェックしてほしい。

「固唾を呑む」の読み方と正しい意味

固唾を呑むの読み方は「かたずをのむ」。まずは、この言葉の正しい意味と使い方を見ていこう。

「物事の動向や成り行きが気がかりで緊張していること」を意味する慣用句

固唾を呑むは、「物事の経過が気になって緊張して見守るさま」を示す慣用句。事の成り行きを案じてじっと見つめる様子を表現している。主に、スポーツ観戦や重要な話をする場面などに対して用いられることが多い。

「固唾」とは、緊張状態の際に口内に溜まる唾（つば）のこと。人は緊張すると、意識が視覚や聴覚に集中するため、呼吸の感覚が長くなる。その結果、自然と口の中に唾が溜まりやすくなってしまう。一般的に、口内に溜まった唾は粘り気が強く、飲み込みにくいイメージがあるため、「固い唾」という比喩表現が使われ「固唾」と表現されるようになった。

なお、「呑む」は本来飲食しないものに対して使われる言葉。「飲む」が液体などの飲食物を対象とする一方で、「呑む」は「要求を呑む」「雰囲気に呑まれる」などと用いるのが一般的だ。比喩表現である「固唾」に対しては、「呑む」を使うのが正しい。「固唾を飲む」という漢字表記は誤りのため、誤用しないように注意しよう。

「固唾を呑む」を使った例文

では、どのようなシーンで「固唾を呑む」を使えばいいのだろうか。以下の例文をチェックして、正しい使い方を理解しておこう。

【例文】

「目の前の2人の口論を、固唾を呑んで見ていた」
「大学受験をした息子の合否結果の連絡を、固唾を呑んで待つ」
「固唾を呑む状況は苦手なので、私は試合の結果だけニュースで見ることにするよ」
「同点でむかえたPK戦を、固唾を呑んで見守った」
「愛犬の手術が終わるのを固唾を呑んで待つ」
「驚きの展開に、思わず固唾を呑む」

英語ではどう表現する？

「固唾を呑む」を英語で表現する際は、「hold one’s breath／息を殺す」「breathlessly／緊迫して」がよく使われる。具体的には、「He was awaiting the results, holding her breath.／彼は固唾を呑んで結果を待っていた」「The game was so exciting that we watched it breathlessly.／私たちは、白熱した試合を固唾を呑んで見守った」などのように用いると良い。

「固唾を呑む」の類語は？

併せて「固唾を呑む」の類語も確認しておこう。「固唾を呑む」と似た意味を持つ言葉は数多く存在するが、ここでは代表的な2つの表現とその意味を紹介する。

注視する

注視するとは、注意深くじっと見ること、注目することを意味する言葉。物事の動向が気になり、細かく気を配って観察する様子を表している。見る対象がたまたま目に入るのではなく、意識的に視界に捉えるようなイメージだ。動詞として「注視する」「注視を浴びる」と用いたり、名詞として「注視を～」「注視によって～」などと使ったりする。

手に汗を握る

手に汗を握るは、手を固く握ることによって手の平にじっとりと汗がにじむことを表現した慣用句。「手に汗を握る試合」「手に汗を握るアクション超大作」など、緊張感に満ちた状況を表現していることから「固唾を呑む」に似た意味のことわざと言える。

「息をのむ」との違いは？

「固唾を呑む」と似た慣用句に「息をのむ」という表現がある。どちらも、緊張感を持って見守ることを表す言葉なのに変わりはないが、微妙にそのニュアンスが異なる。正しく使い分けられるように、違いを確認しておこう。

息をのむは「恐怖や驚きによって一瞬息を止めること」

驚きや恐れによって一瞬息が止まってしまうことを「息をのむ」と言う。主に、ハッとした様子を表す際に用いられる表現で、「息をのむ美しさ」「息を呑むほど熱中する」「息をのむ恐怖感」「恐ろしさに息をのんだ」など、使い方の幅が広いのがポイントだ。「息をのむ」に似た表現としては、「絶句する」や「言葉を失う」などが挙げられる。

まるで一瞬時間が止まったかのような状況を表す「息をのむ」という表現に対して、「固唾を呑む」には心配しながらじっと見守るという意味がある。この2つの言葉の違いは「心理的な時間の長さ」と言って良いだろう。

文／oki