ノスタルジーに浸る岡山の池田動物園。地域に愛された園に再びキリンがやってきた!
はじめまして、動物園写真家の阪田真一です。動物園・水族館・植物園を専門に撮影している写真家です。
今回は、皆さんも子供のころ遠足や家族で訪れた記憶を蘇らせてくれるような、歴史ある岡山市にある小さな動物園をご紹介します。
池田動物園は地域の人々のために形を変え開園した
池田動物園は、「日本三名園」に名を連ねる「後楽園」や、それを臨む「岡山城」にも関係深い元岡山藩主・池田家の第16代藩主である「池田隆政」氏により昭和28年に現在の場所に開園した。
前身となったのは、岡山市内山下(現在の林原美術館の地)において、山羊や豚、鶏などの家畜を飼い、牛乳づくりなどをしていた池田牧場である。戦後の物資不足の中でも、未来を担う子供たちに良質な動物性たんぱく質を摂って貰いたいという初代園長の想いがあり続けられた牧場であったが、池田氏と昭和天皇の第4皇女である順宮厚子内親王(よりのみや あつこないしんのう)様との結婚を機に、現在の場所に移転し、トラやライオン、ゾウといった戦後はまだ目新しかった動物たちが少しずつ展示されるようになり、岡山県民の憩いの場として、また子供たちの課外授業の場としても愛され続け現在の『池田動物園』となった。
昭和63年には瀬戸大橋開通を記念して「中国三大珍獣展」が池田動物園で3ヶ月間開催された。
そこには、すでに中国西安から昭和61年に動物交換で来園していた「レッサーパンダ」に加え、「キンシコウ」と「ジャイアントパンダ」が加わることとなり、それぞれつがいで展示された。この時の3ヶ月間の来園者はおよそ90万人だったと聞く。現在のチンパンジー舎には「ジャイアントパンダ」が展示され、「レッサーパンダ」は現在と変わらない場所。「キンシコウ」は現在のジェフロイクモザル舎での展示であったそうだ。来園者は山の斜面に作られた園内、3大珍獣を何度も見るために斜面の上り下りを繰り返し、行列に並んでいたそうだ。今では信じられないよう光景であっただろう。
動物園写真家が紹介する池田動物園の仲間たち
池田動物園は、市民ZOOネットワークという団体が選ぶ「エンリッチメント大賞」で、2018年に奨励賞を受賞している。飼育員らによる「安価な材料」を用いて、「創意工夫」を凝らして動物たちの欲求行動や認知機能を引き出し、福祉向上に寄与していることが評価された。現在飼育員9名という少数での動物たちの飼育にあたっている。あれだけの動物たちをこの人数で世話をしていることに驚いてしまう。その忙しさの中でも動物たちがストレスなく暮らせるようにと予算の限られる中、知恵を絞って取り組む姿勢には脱帽するばかりである。
そんな池田動物園で暮らす仲間たちを少し紹介しよう。
・コツメカワウソのショコラちゃん
・ボリビアリスザルの猿之助(えんのすけ)くん
・モモイロペリカンさん
・グラントシマウマのソラくん
・レッサーパンダのしずくちゃん
・ブチハイエナのレンくん
・ライオンのチャーリーくん
・ホワイトタイガーのサンちゃん
・ロバのマロンくん
沢山の群れで展示されている動物園とは違って、1種が少数である小規模の園だからこそ、よりその個体を友人や親戚のように気に掛ける存在として、彼らに会いに再び訪れるお客さんも多いのではないだろうか。
地域に愛された池田動物園に「キリンを贈りたい」が実現した。
令和2年2月。池田動物園で24年間多くの市民に愛された、キリンの「桃花」が亡くなった。
彼女に会えることを楽しみに、来園してくれる子供たちに寂しい思いをさせてしまうこととなってしまい、コロナ禍ということもあり新たな導入に苦慮していた園に対し、公益社団法人岡山青年会議所の岡山の魅力発信と地域の人々の郷土愛を醸成したいという想いにより、同団体の創立70周年事業として「いけだどうぶつえん活性化プロジェクト・キリン贈呈」が計画された。
この事業によってクラウドファンディングによる多くの方からのご支援と、多くの企業様からの協賛によりキリン舎の改修を行い、2021年3月15日に高知県立のいち動物公園から、アミメキリンの「サンタロウ」が無事来園することとなった。
同年4月17日に一般公開された「サンタロウ」のもとには、心待ちにしていた子供たちやその親御さんをはじめ、沢山の人が彼に会うために園を訪れている。
とても人懐っこい性格の「サンタロウ」は、家族連れを見つけると時折近寄ってきてくれ一緒にカメラに写ってくれることもあるようだ。
「サンタロウ」はまだ2歳。これからの彼の成長がとても楽しみだ。
[FAAVO:みなさんと一緒にキリンを贈呈したい!] https://camp-fire.jp/projects/view/344846
[公益社団法人岡山青年会議所] https://www.okjc.org/public/
[高知県立のいち動物公園] https://noichizoo.or.jp/
現在、池田動物園では独自に「池田動物園未来募金」を受け付けている。詳しくは下記サイトへ
http://www.urban.ne.jp/home/ikedazoo/pg203.html#%E5%8B%9F%E9%87%91%E7%AE%B1
また、一般社団法人 池田動物園をおうえんする会では「トイレ改装」「フタコブラクダの来園」など園内の活性化や老朽化対策に関する募金が呼びかけられている。一度その内容に目を通してみてはどうだろうか。離れていても僅かでも、力になれることはあるのではないだろうか。
[池田動物園をおうえんする会] https://ikedazoo.com/
動物園写真家がお勧めする動物園グルメ
池田動物園では大衆食堂のような味のある食堂が売店の横に併設されている。
そのメニューには、動物園らしい「にほんざるそば」「りすざるうどん」「きつねうどん」など動物の名前の付いたメニューをはじめ、揚げたて手作りカツを使用した「かつ丼」。 (8/31までの岡山県産畜産物フェアで使用しています(ピーチポークも)) なかでも、初来園した時から必ず食べているのが「カレーラーメン」である。実は、この食堂で人生初の対面であった。醤油や味噌、豚骨でもないラーメンの驚きと新鮮さが印象的で池田動物園に行くと必ず頼んでしまう動物園グルメなのである。
来園した時には是非食堂にも足を運んでもらいたいと思う。
動物園での思い出は誰にでも。そして新たな思い出の場所へ。
誰にも動物園の様々な思い出があるのではないだろうか。今回紹介した岡山の小さな動物園は今も姿を変えず開園している。生まれ育った土地を離れて働き生活をする皆さんには思い出の動物園や移り住んだ土地の動物園に、家族や友人と訪れて、新たな動物園の思い出を作ってほしいと思う。
また、子供のころ訪れた動物園がコロナ禍で多くの人からの支援を求めていることもある。
いちど思い出の動物園のホームページを見てみてはどうだろうか。
[取材協力]
池田動物園 http://www.urban.ne.jp/home/ikedazoo
〒700-0015 岡山県岡山市北区京山2丁目5−1
TEL: 086-252-2131
[写真/記事]
動物園写真家 阪田 真一
https://twitter.com/ZooPhotoShin1
編集/inox.