GWや秋の行楽シーズンの定番の行き先の一つ、温泉。現在は新型コロナウイルスの感染拡大により自由に遠出するのは難しい状況だが、落ち着いたら温泉地への旅行を計画している人もいるのではないだろうか。
実は温泉地では、宿泊料等とは別に発生する「入湯税」があり、知らないうちに利用料金に含まれていることが多い。本記事では、この「入湯税」について、目的や仕組み、会計時の取り扱いなどを詳しく紹介する。
温泉地を利用した際に発生する「入湯税」とは?
はじめに、入湯税とはどのような税なのか、何に対して課せられるのかを理解しておこう。ただし、市町村に対して納める税のため、自治体の条例によっては細かい部分に違いがあるケースもある。
温泉の入浴行為に対して課せられる税
入湯税とは、簡単に言うと「温泉に入った時」に課される税金。全国に温泉の多い日本ならではの課税制度で、旅館やホテルだけではなく、温泉施設のあるゴルフ場なども課税対象となる。利用者は温泉施設や宿泊施設に対して入湯税を支払い、施設の事業者が市町村に納付する、消費税などと同じ「間接税」の一つだ。
ちなみに、全国でもっとも入湯税の税収が多いのは神奈川県箱根町で、長年に渡って不動の1位。なお、東京都や京都府など一部の地域では、ホテルや旅館に宿泊した際に徴収される「宿泊税」があり、こうした地域の温泉施設を利用すると、入湯税と宿泊税がどちらも課されることになる。
入湯税の使い道は?
入湯税は使途の決められた「目的税」で、税収は鉱泉源の保護施設や環境衛生施設の整備、観光事業の振興などに充てられる。
例えば先述の神奈川県箱根町では、ごみ処理施設や下水道など環境衛生施設の整備、公衆トイレの設置や広告といった観光事業の振興に税収が使われており、詳細も公開されている。
ただし、詳しい使い道が明らかになっていない市町村も多く、地区の合併などの理由によって直接温泉と関係ない施設に財源が利用された例もあることから、収入と支出の詳細を公開すべきとする意見も出ている。
w払わないで済む場合もある?
入湯税の標準税率は、大人1人1泊あたり150円で、日帰り利用の場合は50円~100円ほどの所が多い。あくまでもこれは標準であり各市町村が独自に変更も可能だが、全体の9割以上の市町村が150円に設定している。
子供料金はなく、基本的に12歳未満は非課税となるが、「小学生以下」「13歳未満」など市町村によって条件に多少のばらつきが見られる。
また、市町村ごとにさまざまな減免措置を設けており、銭湯のような一般公衆浴場の利用者や修学旅行で訪れた学生、長期療養で利用する場合は入湯税が非課税となるケースもあるようだ。
入湯税について知っておきたい知識
では、入湯税を実際に支払った場合、消費税はかかるのか、会計上の取り扱いはどうなるのかなどについても詳しく見ていこう。また、入湯税を英語で説明する際の表現方法も紹介する。
勘定科目は何になる?消費税はかかる?
課税対象者から入湯税を受け取った施設側では、売上高とは別に、預り金などの勘定科目で処理を行うか、売上高に含めて処理する2通りの方法がある。預かった入湯税を市町村に納める時に預り金から相殺するか、売上高のマイナス項目として処理するかの違いだ。
入湯税を支払った利用者側での会計処理は、請求書や領収書に入湯税の記載があるかどうかによって異なる。入湯税額が明記されている場合、入湯税は消費税のかからない不課税取引となるため、宿泊費とは分けて不課税仕入れとして取り扱う。例えば、入湯税の支払額を「租税公課」の勘定科目で処理し、消費税区分は対象外(不課税仕入れ)とするのが一般的な方法だ。
請求書上で入湯税の記載がなく宿泊料金と併せて請求されている場合は、支払った金額の全額を課税取引として、消費税の計算対象(仕入れ税額控除の対象)に区分する。例えば、取引先の接待などで温泉施設を利用した際は「接待交際費」、社員旅行など福利厚生の一環で施設を利用した場合は「福利厚生費」の勘定科目で処理を行い、支払額の全額を課税仕入れとして計上できる。
英語ではどのように説明する?
入湯税を英語で説明する場合、「hot spring tax」や「bath tax」がシンプル。「tax for bathhouses using a mineral spring(鉱泉浴場を使用する際の税)」でもよい。
ただし、海外では入湯税の概念自体がないため、施設側は「We have the bath tax policy. It is required by the law in Japan(日本には入湯税という制度があり、法律によって義務付けられている)」のように、一言説明を添えるのが良いだろう。
文/oki