不動産を所有していると毎年支払うことになる、固定資産税。課税の仕組みが複雑であることから、マイホームなどの購入にあたり「税額がいくらになるか心配」という方も少なくないだろう。そこで本記事では、固定資産税の基本的な仕組みや計算方法を解説する。税負担が軽減される制度も併せてチェックして、この機会に理解を深めてほしい。
そもそも「固定資産税」とは?
一言で言えば、「固定資産税」とは所有している固定資産にかかる税金のこと。固定資産の所在する市町村(東京23区内においては都)が課税する地方税に分類される。では、課税の対象となる固定資産にはどのようなものが含まれるのか。まずは固定資産の定義について見ていこう。
対象となる固定資産
「固定資産」は、固定資産税の課税対象となる土地・家屋・償却資産の総称で、具体的には以下のものが該当する。
【固定資産税の対象】
・土地:田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)
・家屋:住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物
・償却資産:構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く。
参考:東京都主税局
近年、住宅に設置するケースが増えている太陽光発電設備は、設置状況などから償却資産として申告が必要となる場合もある。
固定資産税の計算方法は?
土地や家屋の場合、固定資産税額は毎年送付される納税通知書などで確認することができるが、算定はどのような方法で行われるのだろうか。ここでは、固定資産税の計算方法を解説する。
固定資産税評価額をもとに計算
固定資産税は、各市町村が決定する「固定資産税評価額(評価額)」をもとに算出される「課税標準額」を基礎として、以下の計算式で求めることができる。なお、標準税率は1.4%だが市町村により異なる場合がある。
【固定資産税の計算方法】
固定資産税額=課税標準額(評価額)×標準税率(1.4%)
通常、課税標準額と評価額は同一額となるが、特例措置や税負担の調整措置の適用により、課税標準額が評価額よりも低くなることがある。
固定資産税評価額の算定基準
土地・家屋・償却資産の各評価額は、地方税法の規定により総務大臣が定める「固定資産評価基準」に基づき、各市町村(東京23区については各区)が個別に算定する(地方税法388条1項、403条1項)。
・土地の評価額
土地の評価額は、宅地・農地などの地目や売買実例価格などを考慮要素として算定される。宅地の場合、地価公示価格の70%を目安に評価を行う。
・家屋の評価額
家屋の評価額算定では、評価時点において対象家屋と同様の家屋を新築する場合に必要となる建築費(再建築価格)や、築年数に応じて生じる減価を基礎に定める「経年減価補正率」などが考慮要素となる。新築住宅の場合、どのような建物を建築するかにより評価額が変わる点に留意したい。
・償却資産の評価額
償却資産については、資産の取得価額や経過年数などの諸要素から評価額を算出する。なお、算出された金額が取得価額の5%を下回るときは、取得価額の5%を評価額とする最低限度が定められている。
固定資産税には減額制度がある
所有する不動産などが一定の要件を満たす場合、固定資産税の軽減措置が適用される。以下で紹介するものの他には、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修などに関する軽減措置がある。制度によっては申告手続きを行う必要があるため、あらかじめ詳細を確認しておこう。
住宅用地に関する特例
住宅の敷地に利用されている土地(住宅用地)は、特例により固定資産税が減額される。200平方メートル以下の部分の課税標準額を6分の1、200平方メートル超で床面積の10倍部分までの課税標準額を3分の1として固定資産税額の算定が行われる。
新築住宅に関する特例
新築住宅の減額制度は、2022年3月31日までに新たに建築された住宅で、居住部分の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下(併用住宅の場合は加えて居住部分の割合が2分の1以上)である場合に適用される。一戸建ては新築から3年間2分の1、マンション(3階以上の準耐火構造及び耐火構造住宅)は新築から5年間2分の1に減額となる。なお、「認定長期優良住宅」の場合は減額期間が一戸建てで5年間、マンションで7年間にそれぞれ伸長される。
文/oki